タンパク質構成アミノ酸の構造と特徴

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  1. タンパク質構成アミノ酸の構造と特徴
  2. グリシン
  3. アラニン
  4. ロイシン
  5. イソロイシン
  6. バリン

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タンパク質構成アミノ酸の構造と特徴

アミノ酸 amino acid は、広義には アミノ基 -NH2 とカルボキシル基 -COOH の両方をもつ有機化合物の総称 である (2)。

狭義には、タンパク質の構成成分である α-アミノ酸を指す。α-アミノ酸には、以下のような構造的な特徴がある。

  1. カルボキシル基 -COOH とアミノ基 -NH2 の両方が同じ炭素原子に結合している。この炭素を α 炭素という。
  2. α 炭素に様々な側鎖 (図の R、このページで青字で示す部分) が結合しており、側鎖によってアミノ酸の性質が決まる。
  3. アミノ酸には、光学異性体の D 型 と L 型がある。一般にタンパク質を構成するのは L 型のアミノ酸である。しかし、これを説明する合理的な理由は不明である。なお、D と L は 小さいフォントで表記する というルールがあるが、このサイトでは表記が難しくなるのでやっていない。
アミノ酸の基本構造

アミノ酸の炭素番号の付け方 のページには、炭素番号についての詳細な記述がある。このページで、構造に赤い数字で示してあるのが炭素番号である。

グリシン (Glycine, Gly, G)

グリシンの構造
  • pK1 (COOH) = 2.4
  • pK2 (NH3+) = 9.8

アラニン (Alanine, Ala, A)

アラニンの構造
  • pK1 (COOH) = 2.4
  • pK2 (NH3+) = 9.9

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ロイシン (Leucine, Leu, L)

ロイシンの構造
  • Gly および Ala と同様に、側鎖が炭化水素基のみでできている。
  • しかし Leu の側鎖には分岐があるため、Val, Ile とともに 分岐鎖アミノ酸 に分類される。BCAA は全て必須アミノ酸である。
  • インスリン 分泌を刺激する作用がある。
  • 筋肉のタンパク質合成を促進、分解を阻害。
  • 側鎖の 2 つのメチル基の炭素番号は、5 および 5' と表す。
  • Leu のページ
  • 英語の発音 [luːsiːn]
  • pK1 (COOH) = 2.3
  • pK2 (NH3+) = 9.7
  • 必須、分岐鎖

イソロイシン (Isoleucine, Ile, I)

  • Ile のページ
  • 英語の発音 [ʌisəluːsiːn]

  • pK1 (COOH) = 2.3
  • pK2 (NH3+) = 9.8
  • 必須、分岐鎖
  • Leu の構造異性体。側鎖のメチル基 -CH3 の位置が違うだけ。
  • 側鎖にも不斉炭素原子がある。
  • 炭素番号は、側鎖の長い方へ向かって 1 から 5 とつけ、3 番の炭素についているメチル基は 3' となる。

バリン (Valine, Val, V)

バリンの構造
  • Val のページ
  • 英語の発音 [veilːn]
  • pK1 (COOH) = 2.2
  • pK2 (NH3+) = 9.7
  • 必須、分岐鎖
  • 脳における取り込み量が、アミノ酸の中でもっとも高い。
  • 側鎖の 2 つのメチル基の炭素番号は、4 および 4' と表す。

システイン (Cysteine, Cys, C)



  • Cys と Met は、側鎖に硫黄 S を含む含硫アミノ酸。
  • チオール基 -SH がジスルフィド結合を作り、タンパク質の構造を安定化する。
  • -SH 基は酸化修飾を受けやすい。

メチオニン (Methionine, Met, M)



  • Cys とともに、側鎖に硫黄 S を含む含硫アミノ酸。
  • 開始コドン AUG でコードされる。
  • Lys とともに、脂質ミトコンドリア へ輸送する カルニチン の原料になる。

アスパラギン (Asparagine, Asn, N)



  • アスパラガスから発見されたためにこの名がついた。
  • 非必須アミノ酸。TCA 回路 の中間体から合成される。
  • 側鎖がポリペプチド骨格と水素結合を形成できるため、α-helix の始点および終点、β-シートのターンの部分などに位置する。
  • 糖鎖付加 N-linked glycosylation を受ける。

アスパラギン酸 (Aspartate, Asp, D)



  • Asn の側鎖で、-NH2 の部分が -COOH になっている。この関係は、Glu と Gln でも同じである。
  • Glu とともに、側鎖の -COOH から H+ を放出する 酸性アミノ酸
  • 興奮性神経伝達物質、うま味成分。
  • ピリミジン合成の出発点。

グルタミン (Glutamine, Gln, Q)



  • Asn よりも -CH2 が 1 個多い。
  • Glu からの Gln 合成は、アンモニア NH3 の解毒反応として重要。

グルタミン酸 (Glutamate, Glu, E)



  • Asp とともに、側鎖の -COOH から H+ を放出する 酸性アミノ酸
  • 興奮性神経伝達物質、うま味成分。抑制性神経伝達物質 GABA の材料。
  • TCA 回路 の中間体 α-ケトグルタル酸から合成される。

アルギニン (Arginine, Arg, R)


  • Arg のページ

  • pK1 (COOH) = 1.8
  • pK2 (NH3+) = 9.0
  • pK3 (側鎖) = 12.5
  • 塩基性

  • Lys とともに、側鎖の -NH2 が中性付近で電子を受け入れる 塩基性アミノ酸
  • 非必須アミノ酸ではあるが、成長期には摂取が必要とされる。
  • タンパク質構成アミノ酸のなかで、もっとも塩基性が高い。つまり側鎖の pKa が高い。

リシン (Lysine, Lys, K)


  • Lys のページ

  • pK1 (COOH) = 2.2
  • pK2 (NH3+) = 9.2
  • pK3 (側鎖) = 10.8
  • 必須、塩基性

  • Arg とともに、側鎖の -NH2 が中性付近で電子を受け入れる 塩基性アミノ酸
  • メチオニンとともに、脂質をミトコンドリアへ輸送するカルニチンの原料。
  • タンパク質分解の指標である ユビキチン が結合する。

2019/3/13 一文字表記が間違っていたので修正しました。ご指摘ありがとうございました。


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セリン (Serine, Ser, S)



  • Thr, Tyr と同様に、側鎖の -OH 基でリン酸化される。
  • プロテアーゼ などの 酵素 で活性中心になれる。-OH が -O- になって求核攻撃できるため。キモトリプシン のページに詳細あり。

スレオニン (Threonine, Thr, T)


  • Thr のページ

  • pK1 (COOH) = 2.1
  • pK2 (NH3+) = 9.1
  • pK3 (側鎖) = 約 13
  • 必須

  • Ser, Tyr と同様に、側鎖の -OH 基でリン酸化される。
  • 血液脳関門 を通過でき、脳では Gly, Ser に変換される。
  • 側鎖に不斉炭素原子がある。

チロシン (Tyrosine, Tyr, Y)


  • Tyr のページ

  • pK1 (COOH) = 2.1
  • pK2 (NH3+) = 9.1
  • pK3 (側鎖) = 10.1
  • 芳香族

  • Ser, Thr と同様に、側鎖の -OH 基でリン酸化される。
  • ドーパミン 合成の原料。
  • Phe, Trp とともに芳香族アミノ酸 → 280 nm 法 によるタンパク質の濃度測定。

フェニルアラニン (Phenylalanine, Phe, F)



  • Ala にフェニル基がついている。チロシンの前駆体。
  • Phe, Trp とともに芳香族アミノ酸。芳香族中ではもっとも疎水性が高い。
  • 芳香族ではあるが 280 nm の吸光度は低いので、280 nm 法ではタンパク質濃度に寄与しない。

トリプトファン (Tryptophan, Trp, W)



  • Phe, Tyr とともに芳香族アミノ酸。
  • セロトニンの前駆体。

ヒスチジン (Histidine, His, H)



  • 側鎖にイミダゾイル基をもつタンパク質構成アミノ酸はこれだけ。
  • 酸にも塩基にもなれるという特殊なアミノ酸。イミダゾール環の N の pKa が 6.0 なので、中性付近で H+ の授受が可能。
  • そのため、酵素の活性中心になることが多い。局所的な条件によってプロトンを自由に扱えるためである。
  • 金属イオンと配位結合を形成することができる。これは、イミダゾール環の水素と結合していない方の N が電子対をもっているためである。
  • ヒスタミン、カルノシン生合成の前駆体。
  • 大腸菌発現系で、6 x His がタグとしてよく用いられる。

プロリン (Prorine, Pro, P)



  • アミノ基 -NH2 の部分が -NH になっているので、厳密にはアミノ酸ではない。
  • 環状構造がタンパク質の構造に大きく影響する。Pro が含まれていると α-helix 構造が不安定になる。


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References

  1. IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature, 1984a. Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides. Eur. J. Biochem. 138. 9-37. Link: Last access 2018/07/25.
  2. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.

コメント欄のアップデート前、このページには以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。

2018/02/21 07:03 試験前にチェック! 素晴らしいです。。。


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