アンモニア: 構造、毒性、代謝、機能など

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このページの最終更新日: 2024/04/13

  1. 概要: アンモニアとは
  2. アンモニアの毒性
  3. アンモニアの代謝
  4. 自然界でのアンモニアの分布

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概要: アンモニアとは

アンモニア ammonia (NH3) は図 (Public domain) のような構造をもつアミン amine の一種である。以下のような特徴がある (5)。

  • 常温で無色、特有の刺激臭がある気体で、吸い込むと有毒である。
  • 水やエタノールによく溶け、アルカリ性を示す (参考: 酸と塩基)。
アンモニアの構造

アンモニアの毒性

アンモニア NH3 は、水中では一部が水素イオンと結合しアンモニウムイオン NH4+となる。生物にとっては、極性が低く細胞膜を通過できる NH3 の方が有害である。毒性は NH3 の方が 2 桁高い (8)。

NH3 と NH4+の量比は、pH、水温、塩分、水圧などに影響される (7)。したがって、水中にどれくらいアンモニアが存在すると有害なのか、一概に言うことは難しい。NH3 相当量などに換算して議論する必要がある。

参考データを示しておく。塩分が 28 - 33 g/L のときのアンモニアの割合である (2)。高温かつアルカリ性の条件下で、アンモニアの割合が増えることがわかる。

pH 水温
20℃ 25℃ 30℃
5.5 0.01 0.01 0.02
6.0 0.03 0.05 0.07
6.5 0.1 0.15 0.21
7.0 0.32 0.47 0.67
7.5 1.01 1.46 2.10
7.7 1.59 2.29 3.29
8.0 3.12 4.47 6.36
8.2 4.86 6.9 9.72

アンモニアが毒性を示すメカニズムは複雑であり、少なくとも下記のものがある。

  • NH4+ から水素イオンが生じ、これが細胞内 pH を低下させる (1D)。
  • 活性酸素 を発生させる (1D)。

水槽のアンモニア対策

魚の糞、食べられなかった餌、死骸などに含まれるタンパク質がバクテリアによってアンモニアになる。

また、魚類では窒素代謝の最終産物がアンモニアであり、これを尿素などに変換せずに鰓から直接排出している。

アンモニアは、ろ過バクテリアによって亜硝酸塩 nitrite または 硝酸塩 nitrate に変換される。この反応がうまくいっていないと、水質が悪化する。


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アンモニアの代謝

アンモニアは窒素の代謝産物として生体内に存在し、哺乳類では肝臓のミトコンドリアに存在する尿素回路 urea cycle で尿素に変換され、尿として排出される。ラットでは、血中アンモニア濃度は 0.05 mM 程度である (2R)。

グルタミンの合成

アンモニアを解毒する機構の一つが、グルタミン酸 から グルタミン を合成する反応である。

グルタミンの生合成

ただし、NH4+ から作られるグルタミンが増えすぎると浸透圧で脳に悪影響を及ぼす (3)。グルタミン酸が神経伝達物質であることも、アンモニアが神経毒性を示す原因の一つである。

> 血中濃度を 0.35 mM にして、脳でのグルタミン合成量などを調べた論文 (2R)。

  • 酢酸アンモニウム投与により血中のアンモニア濃度を調整している。
  • グルタミン酸 + NH3 → グルタミン という反応の速度が約 2 倍に増大した。解毒反応と思われる。
  • 麻酔されたラットの脳の血流が 1.3 mL/min/g とすると、脳への NH3 流入は0.02 mol/min/g と計算される。

自然界でのアンモニアの分布

> 水深 30 m までは約 0.01 µM、60 mで最大値 1.2 µM、100 m で0.01 µM (1)。

  • NH4+を NHに転換し、疎水性膜を透過させた後に比色法で測定。全アンモニアの濃度である。
  • 海水でのアンモニアの測定法に関する論文。Gulf Stream/slope water front (37˚58.41' N; 72˚04.84' W) off the east coast of the USA.
  • Cast was taken on 5 May 1985 at 20.00 hrs.

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References

  1. Nimptsch 2007a Ammonia triggers the promotion of oxidative stress in the aquatic macrophyte Myriophyllum mattogrossense. Chemosphere 66, 708-714.
  2. Sibson et al. 1997a. In vivo 13C NMR measurements of cerebral glutamine synthesis as evidence for glutamate-glutamine cycling. PNAS 94, 2699-2704.
  3. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  4. ページ編集のため削除
  5. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  6. Willason and Johnson 1986a. A rapid, highly sensitive technique for the determination of ammonia in seawater. Mar Biol 91, 285-290.
  7. Whitfield 1974a. The hydrolysis of ammonium ions in sea water - a theoritical study. J Mar Biol Assoc UK 54, 565-580.
  8. Nimptsch 2007a. Ammonia triggers the promotion of oxidative stress in the aquatic macrophyte Myriophyllum mattogrossense. Chemosphere 66, 708-714.
  9. 【水質管理】「アンモニア」と「亜硝酸」の毒性について. Link: Last access 2023/08/05.

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