インドール環をもつ必須アミノ酸 トリプトファン:
構造、機能、代謝、オペロンなど

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2018/10/18 更新

  1. 概要: Trp とは
  2. トリプトファンオペロン

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概要: Trp とは

トリプトファン Trp は図のようなインドール環 indole group をもつアミノ酸である (1)。


  • pK1 (COOH) = 2.4
  • pK2 (NH3+) = 9.4
  • 芳香族、必須

トリプトファンには、以下のような重要な性質がある。

  • ヒトが合成できない 必須アミノ酸 essential amino acid である。
  • セロトニン serotonin 合成の前駆体。
  • ナイアシン合成の前駆体である。

トリプトファンは、1901 年に Hopkins および Cole によって カゼイン から発見された。Hopkins は、この他にも多くのビタミン等を発見し、ノーベル賞を受賞している。Ellinger および Flamand がのちに構造を決定した。

1980 年ごろから、合成トリプトファンがサプリメントとして使われ始めたが、低品質のサプリメントは 1989 年に Eosinophilia Myalgia Syndrome (EMS) という病気を引き起こし、FDA はこのサプリメントの販売を禁止した。この禁止令はのちに解除され、現在ではサプリメントが販売されている。

トリプトファンの摂取は急激な気分の変動 mood swing や女性の月経前不機嫌性障害 (premenstrual dysphoric disorder; PDD) を防ぐのに効果的と言われる。

トリプトファンはセロトニン合成の前駆体である。これには酵素 tryptophan hydroxylase が関与する。セロトニンはメラトニン melatonin の前駆体であり、睡眠を促進する。トリプトファンは光感受性のアミノ酸で、光刺激でセロトニンに変換される。

トリプトファン欠乏症として Pellagra, Hartnup Disease, Crohn’s Disease などが知られている。


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トリプトファンオペロン

トリプトファンオペロンは、大腸菌で有名な遺伝子発現の制御システムである。

  1. Trp オペロンのリプレッサーが TrpR 遺伝子から発現しているが、これは Trp と結合していない状態では活性をもたない。つまり図の O の位置に結合できない。したがって trpA などの構造遺伝子が発現している。
  2. 高濃度の Trp が存在すると、リプレッサーが活性化し、構造遺伝子の発現を抑制する。

これは repressible nagative regulation と呼ばれる遺伝子発現の制御形式であり。他には ラクトースオペロン (ラクトースのページ) が有名であるが、ラクトースオペロンでは、ラクトースの存在下で構造遺伝子の発現が誘導されるので、トリプトファンオペロンとは逆の制御になる。

TrpA から TrpE 遺伝子は、トリプトファンを生合成する 酵素 をコードしている。したがって、トリプトファンオペロンは、トリプトファンが過剰になったときに産生を止める役割を果たしている。この点が、栄養素として取り込まれるラクトースを代謝するためのラクトースオペロンと逆であり、遺伝子の制御様式が逆であることとよく整合性がとれている。


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References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. By Histidine - Own work, CC BY-SA 3.0, Link