カルニチン: 脂質の燃焼を助けるアミノ酸誘導体

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: カルニチンとは
  2. ミトコンドリアへの脂質輸送
  3. 生合成
  4. 分布
  5. 老化とカルニチン

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概要: カルニチンとは

カルニチンは下のような構造をもつアミノ酸誘導体で、脂質β 酸化 の場所である ミトコンドリア へ輸送する 働きをもつ物質である。

L 型および D 型が存在し、L 型のみが脂質代謝に関与すると考えられている。このページでは、とくに断らない限り L 型について記載する。

IUPAC 名は L-β-hydroxy-γ-N,N,N-trimethylaminobutyric acid である。分子量 161.2, 水溶性が高く吸湿性をもつ (hygroscopic)。


分子内に隣り合わない N+ および COO- をもち、N+ には水素原子でなくメチル基が結合しているため、分子全体としては電荷をもたない。これは ベタイン betaine の定義にあてはまり、構造からはベタインに分類される。

メチオニン Met およびリジン Lys から生合成されるが、その反応は複雑である。詳細は以下の生合成の項目で記載する。

Met

Lys

歴史

肉 carnus から約 100 年前に発見され、カルニチンと名付けられた。ビタミン BT と呼ばれたこともあるが、ヒトはカルニチンを生合成することができるため、この名前は不適切と考えられる。ただし、特定の条件下ではカルニチンの生合成量が必要量に届かず、必須栄養素としての性格ももつ。

ミトコンドリアへの脂質輸送

カルニチンは、長鎖脂肪酸の運搬に関わる。中鎖脂肪酸は、カルニチンと結合しなくてもミトコンドリア膜を透過できるが、カルニチン依存的に運ばれる場合もある。

反応の概要は、図 (1) の通りである。


カルニチンは、短鎖有機酸をミトコンドリアから除去する働きもあり、これによって CoA が β 酸化 や TCA 回路の反応に関与できるようになる。

生合成

生合成経路

ヒトでは、主に肝臓でリジン Lys とメチオニン Met から生合成される。実際に反応に関わるのは、活性型のメチオニンである SAM である。腎臓および脳でも生合成されることが知られている。

Lys, Met のほかに鉄イオン Fe2+ビタミン C、ビタミン B6、ナイアシン、NAD を必要とする。ビタミン C 欠乏によって疲れやすくなるが、これはカルニチンの合成量が低下することが原因と考えられている (2)。

生合成量

ヒトでは、生合成量は 0.16 - 0.48 mg/kg である (3)。腎臓でのカルニチン再吸収も考慮すると、ベジタリアンでも必要量を賄うのに十分である。

分布

カルニチンは小児の体内には約 50 mmol、成人男性では約 100 mmol 存在する (5)。

組織 濃度, 文献 備考
哺乳類の組織全般 0.1 - 数 mM (3) 心臓および骨格筋で高い。

Rat skeletal muscle

1 mM (3)

Human skeletal muscle

3 mM (3)

Ruminant muscle

Up to 15 mM (3)

カルニチン量は反芻動物で多い。どこの筋肉かわからないが、反芻するために好気的にずっと動き続けている筋肉と思われる。

植物の組織全般 数 µM (3)

カルニチンと老化

カルニチンの量は、ショウジョウバエで加齢によって低下することが知られている (5D)。また、マウス の肝臓では カロリー制限 によって増加する (5)。

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References

  1. "Reactions through mitochondrial membrane" by Matsan5 - 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
  2. Carnitine - Its Role in Heart and Lung Disorders: Satellite Symposium on the Occasion of the Central European Congress for Anesthesiology, Graz, September 1985
  3. Bremer 1983a (Review). Carnitine - metabolism and functions. Physiol Rev 63, 5-58.
  4. Amazon link. Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  5. 佐田ら 2016a. カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2016. 日本小児学会. Pdf: Last access 6/25/2017.