アラニンの構造、機能、代謝: アミノ基の輸送・甘味など
- 概要: アラニンとは
- アラニンを多く含む食品
- アラニンの異性体
- アラニンの生合成
- 血中アラニンとグルコース - Ala サイクル
- アラニンの分解
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概要: アラニンとは
アラニン (alanine, Ala, A) は側鎖にメチル基 CH3 をもつアミノ酸で、以下のような構造と生化学的特徴をもっている。構造の赤い数字は炭素番号である。
- 糖原性アミノ酸で、乳酸 lactate とともに肝臓での糖新生 gluconeogenesis の主な原料である (3)。
- 解糖系 glycolysis の最終産物であるピルビン酸 pyruvate から合成される。アミノ基を付加するだけの簡単かつ可逆的な反応である。
- 解糖の最終酵素ピルビン酸キナーゼ PK に結合し、活性を阻害する。
- 筋肉などでタンパク質が分解される際に、肝臓へ窒素を輸送する働きをする (参考: アミノ酸分解、尿素回路)。
アラニンを多く含む食品
アラニンは、ホタテやシジミなどの貝類に多く含まれている。アルコールは肝臓で分解され、アラニンは肝機能を活性化させる作用があるために、「シジミの味噌汁は二日酔いに良い」と言われる。
アラニンは甘味を呈する。
アラニンの異性体
タンパク質を構成するのは L-α-アラニンである。D-α-アラニンはバクテリアの細胞壁に含まれる (7)。
また、β-アラニンはタンパク質の成分としてまだ見出されたことはないが、ジペプチドとしてカルノシン、アンセリン、パントテン酸などに含まれ、また リンゴ の果汁には遊離状態で存在する。
アラニンの生合成
13C で標識したピルビン酸 pyruvate をマウスに注射する実験から、Ala はピルビン酸から直接合成されることが明らかになっている (4)。
反応は
血中アラニンとグルコース - Ala サイクル
血液中にはアミノ酸が遊離状態で存在するが、ヒトでは Ala と Val のみが血液中に mM オーダーで存在する (1)。
血液の Ala 濃度が高いのは、次の理由による。
筋肉は、アミノ酸を分解してエネルギー源にすることがある (1)。このとき、アミノ酸分解で生じるアミノ基は、一般に有害なアンモニアを形成してしまう。通常は尿素 urea に変換されるのだが、
このとき、ピルビン酸と NH4+ から Ala を合成し、血液を介して肝臓に輸送、肝臓で再びピルビン酸と NH4+ に戻して尿素にするという方法がとられる。このサイクルを
- ヒトは肉食で尿中 Ala 量が増大する (5R) が、おそらく同じ理由によるだろう。
- Atlantic salmon で、1 - 2 週間のハンドリングストレスにより血中 Ala 量が増加する (2R)。
アラニンの分解
Alanine は、アミノ基 NH2 を α-ケトグルタル酸に移す transamination によってピルビン酸になり、そこから各種の代謝経路に乗って代謝される (3)。下の図で、R = CH3 と考える。
グルタミン酸に移されたアミノ基は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼなどの作用によって NH4+ として遊離し、尿素回路で尿素 urea になって排出される。
Ala は、ピルビン酸 - オキサロ酢酸 - PEP と変換されて、糖新生 gluconeogenesis によってグルコースになることができる。つまり 糖原性アミノ酸 である。
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References
Nicholson et al. 1984a. Proton-nuclear-magnetic-resonance studies of serum, plasma and urine from fasting normal and diabetic subjects. Biochem J 217, 365-375.Karakach et al. 2009a. 1H-NMR and mass spectrometric characterization of the metabolic response of juveline Atlantic salmon (Salmo salar) to long-term stress. Metabolomics 5, 123-137.- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
Merritt et al. 2011a. Flux through hepatic pyruvate carboxylase and phosphophenolpyruvate carboxykinase detected by hyperpolarized 13C magnetic resonance. PNAS 108, 19084-19089.Holmes et al. 2008a. Human metabolic phenotype diversity and its association with diet and blood pressure. Nature 453, 396-400.Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.- Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
- Amazon link: ハーパー生化学 30版.
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