アラニンの構造、機能、代謝: アミノ基の輸送・甘味など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: アラニンとは
    • アラニンを多く含む食品
    • アラニンの異性体
  2. アラニンの生合成
  3. 血中アラニンとグルコース - Ala サイクル
  4. アラニンの分解

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概要: アラニンとは

アラニン (alanine, Ala, A) は側鎖にメチル基 CH3 をもつアミノ酸で、以下のような構造と生化学的特徴をもっている。構造の赤い数字は炭素番号である。

アラニンの構造 炭素番号つき
  • 糖原性アミノ酸で、乳酸 lactate とともに肝臓での糖新生 gluconeogenesis の主な原料である (3)。
  • 解糖系 glycolysis の最終産物であるピルビン酸 pyruvate から合成される。アミノ基を付加するだけの簡単かつ可逆的な反応である。
  • 解糖の最終酵素ピルビン酸キナーゼ PK に結合し、活性を阻害する。
  • 筋肉などでタンパク質が分解される際に、肝臓へ窒素を輸送する働きをする (参考: アミノ酸分解尿素回路)。

アラニンを多く含む食品

アラニンは、ホタテやシジミなどの貝類に多く含まれている。アルコールは肝臓で分解され、アラニンは肝機能を活性化させる作用があるために、「シジミの味噌汁は二日酔いに良い」と言われる。

アラニンは甘味を呈する。


アラニンの異性体

タンパク質を構成するのは L-α-アラニンである。D-α-アラニンはバクテリアの細胞壁に含まれる (7)。

また、β-アラニンはタンパク質の成分としてまだ見出されたことはないが、ジペプチドとしてカルノシン、アンセリン、パントテン酸などに含まれ、また リンゴ の果汁には遊離状態で存在する。

アラニンの生合成

13C で標識したピルビン酸 pyruvate をマウスに注射する実験から、Ala はピルビン酸から直接合成されることが明らかになっている (4)。

反応は alanine-pyruvate aminotransferase に触媒される。この酵素の 酵素番号 は EC 2.6.1.2 である (8)。

血中アラニンとグルコース - Ala サイクル

血液中にはアミノ酸が遊離状態で存在するが、ヒトでは Ala と Val のみが血液中に mM オーダーで存在する (1)。

血液の Ala 濃度が高いのは、次の理由による。

筋肉は、アミノ酸を分解してエネルギー源にすることがある (1)。このとき、アミノ酸分解で生じるアミノ基は、一般に有害なアンモニアを形成してしまう。通常は尿素 urea に変換されるのだが、筋肉には尿素回路が存在しない。したがって、筋肉で生じたアミノ基を尿素回路のある肝臓まで輸送しなければならない。

このとき、ピルビン酸と NH4+ から Ala を合成し、血液を介して肝臓に輸送、肝臓で再びピルビン酸と NH4+ に戻して尿素にするという方法がとられる。このサイクルを glucose - alanine cycle という。

  • ヒトは肉食で尿中 Ala 量が増大する (5R) が、おそらく同じ理由によるだろう。
  • Atlantic salmon で、1 - 2 週間のハンドリングストレスにより血中 Ala 量が増加する (2R)。

アラニンの分解

Alanine は、アミノ基 NH2 を α-ケトグルタル酸に移す transamination によってピルビン酸になり、そこから各種の代謝経路に乗って代謝される (3)。下の図で、R = CH3 と考える。

アラニンの分解経路

グルタミン酸に移されたアミノ基は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼなどの作用によって NH4+ として遊離し、尿素回路で尿素 urea になって排出される。

Ala は、ピルビン酸 - オキサロ酢酸 - PEP と変換されて、糖新生 gluconeogenesis によってグルコースになることができる。つまり 糖原性アミノ酸 である。


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References

  1. Nicholson et al. 1984a. Proton-nuclear-magnetic-resonance studies of serum, plasma and urine from fasting normal and diabetic subjects. Biochem J 217, 365-375.
  2. Karakach et al. 2009a.1H-NMR and mass spectrometric characterization of the metabolic response of juveline Atlantic salmon (Salmo salar) to long-term stress. Metabolomics 5, 123-137.
  3. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  4. Merritt et al. 2011a. Flux through hepatic pyruvate carboxylase and phosphophenolpyruvate carboxykinase detected by hyperpolarized 13C magnetic resonance. PNAS 108, 19084-19089.
  5. Holmes et al. 2008a. Human metabolic phenotype diversity and its association with diet and blood pressure. Nature 453, 396-400.
  6. Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.
  7. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  8. Amazon link: ハーパー生化学 30版.

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