細胞のエネルギー産生機関 ミトコンドリア: 概要と目次
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概要: ミトコンドリアとは
ミトコンドリア mitochondria は細胞内小器官オルガネラ organelle の一つである。生物学的に重要な特徴は以下の通り。
- 細胞の活動に必要な ATP を作る。細胞のエネルギー産生機関とよばれる。
- 原核生物 の細胞内共生によって獲得されたオルガネラであり、mtDNA という独自のゲノムをもつ。
- 生体における 活性酸素 の主要な発生源である。
- アポトーシス を誘導する。
外膜には mitochondrial porin が存在する。これは VDAC voltage-dependent anion channel とも呼ばれ、陰イオンに対する透過性が高い (1)。
一方、内膜は原則として極性分子を透過させない。ATP, ピルビン酸、citrate などには専用のトランスポーターがある (1)。
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- Membrane potential と密接に関係しているようだが、詳細はよくわからない。
ミトコンドリアに深く関係する代謝経路
- TCA 回路 (クエン酸回路、Krebs 回路)
- ミトコンドリアの電子伝達系 (呼吸鎖)
- 脂肪酸の β 酸化
- 尿素回路:肝臓のミトコンドリアにあるが、一部は細胞質。
- リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル: ミトコンドリアへの物質輸送
- グリセロール-3-リン酸シャトル: ミトコンドリアへの物質輸送
ミトコンドリア病
ミトコンドリア DNA の変異などによる病気は、ミトコンドリア病と総称される。多くは ATP 産生の不全によるもので、アメリカでは 4000 人に 1 人が 10 歳までにミトコンドリア病を発症するとされる (2)。
現在では、40 以上のミトコンドリア病が知られている (2)。多くは臓器によって分類されており、ATP を多く必要とする脳 brain、心臓 heart、肝臓 liver、筋肉 skeletal muscle および目 eye に影響が出ることが多い。
喫煙 は卵子の mtDNA に変異を入れる (3)。また、タバコの煙に含まれる PAH (polycyclic aromatic hydrocarbons) が aromatic hydrocarbon receptor, Bax などを介してアポトーシスを引き起こし、卵子の数を減らす。
ミトコンドリアとアポトーシス
アポトーシスの誘導機構は、大きく extrinsic と intrinsic にわけられている (4, 図もこの文献から)。ミトコンドリアは intrinsic 経路に深く関わっている。
すなわち、さまざまな刺激が BAX, BAK などのアポトーシス蛋白を誘導、これがミトコンドリアに作用してシトクロム C の放出を促す。ミトコンドリアから放出されたシトクロム C が caspase を活性化し、アポトーシスを誘導する。
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ミトコンドリアへの物質輸送
ミトコンドリアは二重の膜で細胞質を隔てられているため、ミトコンドリアへの物質輸送は複雑なシステムを必要とする。
概要はのちほど追加。とりあえず最近読んだ論文のメモ。
> Mia40 が複数の電子を受容できることを示した論文 (4)。
- Mia40/Erv1 pathway は、細胞質で合成されたジスルフィド結合含有タンパクのミトコンドリアへの輸送を制御する経路。
- Mitochondria intermembrane space に局在する。ジスルフィド結合の還元が必要となるため、複数の電子受容体がこの経路に含まれる。
- CX3C or CX9C motif をもつ Tim proteins が含まれる。また、Ccs1, Dre2, Erv1 などが還元状態で輸送され、電子の受容体となる。
- Mia40 は膜間領域の受容体で、CX9C motif をもち、2 つの分子内ジスルフィド結合を作る。従来は電子を 2 個受け取ると考えられてきたが、この論文では複数の電子を受け取れることが示された。
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References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
- Amazon link: 水島 (訳) 2015a. リッピンコット イラストレイテッド細胞分子生物学
Grindler and Moley 2013a. Maternal obesity, infertility and mitochondrial dysfunction: potential mechanisms emerging from mouse model systems. Mol Hum Reprod, 19, 486-494.Cavalcante et al. 2019a. A cell’s fate: An overview of the molecular biology and genetics of apoptosis. Int J Mol Sci 20, 4133.
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