尿素回路: 肝臓にある窒素排出のための回路

UBC/other_metabolites/amine/urea_cycle


  1. 概要: 尿素回路とは
  2. タンパク質が尿素回路に入るまで
  3. 尿素回路の各反応

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概要: 尿素回路とは

尿素回路 urea cycle とは 肝臓 に存在する代謝経路である (1,3; 図は ref 2)。一部は ミトコンドリア に、一部は細胞質に局在する。

尿素回路の生化学的に重要なポイントは以下の通り。

  • アミノ酸 が分解される際に生じるアミノ基 -NH2 は、最終的にアンモニア NH3 になる。これは有害なので、哺乳類では尿素 urea に変換されてから尿として排出される (3)。
  • 肝臓に存在する代謝径路なので、他の組織で生じた -NH2 は肝臓まで輸送されなければならない。
  • 窒素の排出機構は、種によって多様である。魚類は一般に NH3 をそのまま環境水中へ排出する。鳥類は尿酸 uric acid に変換し、固体の尿を排出する。爬虫類は過渡期であり、種によって様々な形態をとる。
  • 肝炎 hepatitis などで肝臓の機能が低下すると、血中のアンモニア濃度が上がる。

尿酸 Uric acid (Public domain)

尿酸の構造

尿素 Urea (Public domain)

尿素の構造

タンパク質が尿素回路に入るまで

タンパク質分解

タンパク質はまずアミノ酸に分解されるが、これにはいくつかの経路がある。詳細は タンパク質の概要 のページを参照のこと。

プロテアーゼ

細胞外では、分泌される各種の プロテアーゼ がタンパク質を分解する。消化系などで重要な役割を果たしているが、このページの趣旨とは少し異なる。

プロテアソーム系

ユビキチン: 分解されるタンパク質に結合し、分解の目印になる。細胞内にあるシステムである。

プロテアソーム内にはもちろんプロテアーゼが存在する。

オートファジー系

細胞の一部が膜に包まれて オートファゴソーム を形成し、これが リソソーム と融合することで包まれた部分を消化する。


肝臓へのアミノ基の輸送

タンパク質分解は様々な組織で起こるが、量的に筋肉での分解量が多い (3)。肝臓へのアミノ基の輸送は、主に 2 つのアミノ酸 Ala および Gln を用いて行われる。これは、

という関係があるためで、細胞内に豊富に存在する基質にアミノ基を移し変えることで簡単に合成できるアミノ酸であるためである。反応は alanine-pyruvate aminotransferase および glutamate aminotransferase という酵素にそれぞれ触媒される。酵素番号 はそれぞれ EC 2.6.1.2 および EC 2.6.1.1. である (3)。

アミノトランスフェラーゼは、ビタミン B6 から作られる pyridoxal phosphate を補酵素として用いる (3)。


アミノ基の遊離

アラニンのアミノ基は、一般にグルタミン酸に移されるようである (アミノ酸分解 のページを参照)。アラニンはピルビン酸に戻り、糖新生 に使うことができる。

尿素回路の各反応

概要を述べると、以下の 1 - 6 のようになる。

  1. ATP と bicarbonate HCO3- を使って carbamoyl phosphate (図中の 2) を合成する。Carbamoyl phosphate synthetase I (CPS-1; EC 6.3.5.5) という 酵素 が触媒する。
  2. Carbamoyl group NH2-CO- がオルニチン ornithine に付加され、シトルリン citrulline を生じる。Ornithine transcarbamoylase が触媒する。
  3. シトルリンが細胞質に輸送される。
  4. シトルリンとアスパラギン酸 Asp が ATP 依存的に会合し、argininosuccinate を生じる。Argininosuccinate synthesate (ASS) が触媒する。
  5. Argininosuccinase (ASL) によってフマル酸が遊離し、アルギニン Arg が残る。
  6. Arg が水和されて尿素が遊離する。Arg はオルニチンとなって再利用される。酵素 arginase が触媒する。

ステップ 1

ステップ 1 のカルバモイルリン酸シンセターゼは、日本語でも英語でもシンターゼ synthase と呼ばれることが多い。シンターゼとシンセターゼ のページにあるように、ATP を使うものがシンセターゼなので、シンセターゼが正しい名前であると思われる。

この反応は 3 つの段階に分かれており、2 分子の ATP が使われる。すなわち、

  1. まず ATP および bicarbonate が carboxy phosphate と ADP を作る。
  2. 次に、carboxy phosphate がアンモニアと結合し carbamic acid となる。
  3. さらに、carbamic acid が 2 個目の ATP と反応し、carbamoyl phosphate および ADP を生じる。

CPS-I は NH4+ でなく NH3 を基質にするらしいが、ハーパー生化学の図では NH4+ が書かれている。

尿素回路で使われる CPS-I はミトコンドリアに局在する酵素であるが、CPS-II は細胞質に局在し、ピリミジン代謝に関係している。CPS-III は魚類にのみ存在する。


ステップ 5

ステップ 5 で生じたフマル酸 fumarate は、malate, oxaloacetate を介して糖新生 gluconeogenesis に回される (1)。細胞質で作られるので、TCA 回路には入らないと思われる。


ステップ 6

ステップ 6 の図だけ作ってあるので、とりあえず載せておく。オルニチン ornithine は尿素回路の重要な代謝産物である。


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References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. By Yikrazuul - Own work by uploader; Mitochondrium angepasst aus Hoffis Bild, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7732060
  3. Amazon link: ハーパー生化学 30版.

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