A260/280 比の意味: DNA 純度の指標
UBC/experiments/dna/A260_A280
このページの最終更新日: 2024/12/15広告
概要: A260/280 比とは
A260/280 比とは、260 nm 吸光度および 280 nm 吸光度の比であり、一般に
波長 260 nm の光は核酸に、280 nm の光は タンパク質 によく吸収される (2)。したがって、その比である A260/280 の値が大きいほど、溶液中にタンパク質が含まれていないこと、つまり核酸溶液の純度が高いことになる。
一般に、
- DNA なら 1.8 以上
- RNA なら 2.0 以上
で "pure" な核酸溶液であるとされている (2)。PCR のテンプレートとして用いる場合には、A260/A280 比は 1.5 から 2.0 の間であることが推奨されている (7)。
260 nm の吸収と DNA 濃度については、260 nm 法のページ にまとめた。
かつては核酸溶液を希釈して、500 µL とかを使って測定していたが、現在では 1 - 2 µL で測れるナノドロップ Nanodrop が便利である (3, 写真は Public domain)。類似の微量測定装置は、複数のメーカーから販売されている。
吸収スペクトルの測定
吸光度を測定する機械によるが、単に 260 nm と 280 nm の 2 点で吸光度を測定するよりも、下の図 (Ref 4) のように波長を変えながら連続的に吸光度を測定する方が望ましい。このような複数の波長に対する吸光度のプロットを
その理由は、吸収スペクトルを見れば、単に A260/A280 比を見るよりも溶液の状態がよくわかるためである。
DNA が含まれている溶液では、図のように 260 nm にピークが現れる。それよりも低波長側では、通常 230 nm 吸光度が 260 nm 吸光度よりも低くなる (5)。A260/A280 比が低かった場合に、核酸がそもそも溶液中に少ないのか、核酸はあるがタンパク質のコンタミが多いのかを全体のピークの形から判断することができる。
核酸の抽出にはフェノールが使われることがある (→ DNA 抽出)。フェノールは 230 nm 付近に吸収があり、A260/A230 比 はフェノールなどのコンタミネーションの指標になる。
DNA の変性と 260 nm 吸光度
核酸は リボース、塩基およびリン酸基から成っているが、260 nm の吸光は、このうち塩基によるものである。
非変性状態では、塩基は DNA 二重らせんの内部に格納されている。DNA が編成すると、二本の鎖が解離し、塩基が外部に露出する。おそらくこのためと考えられるが、
280 nm の吸光について
280 nm の吸光があるのは、主にトリプトファン、チロシン、フェニルアラニンの 3 つの芳香族アミノ酸である。
- トリプトファンの吸光度のピークは 260 nm であり、DNA と同じである。つまり 260/280 は純度の指標であるが、絶対的なことは何も言えないということ。
A260/280 が高いとき
上述のように、A260/280 比は DNA なら 1.8 以上、RNA なら 2.0 以上が高純度とされる。つまり、DNA 濃度を測っているときに高い値が出れば、RNA がコンタミしている可能性もあるということである。
広告
References
田村 (2014). 改訂版 バイオ試薬調製ポケットマニュアル.
一般的なバイオ実験に使われる試薬の作り方がまとまっているハンドブック。一冊手元にあると便利。サイズも実験の邪魔にならずお手頃。
2003 年にオリジナル版、2014 年に改訂版が出た。I 部は溶液・試薬データ編、II 部は基本操作編になっており、ピペット操作など実験の基本がイラスト付きで説明されている。研究室に入って 1-2 年目はとくに重宝するが、末永く使うことができるだろう。このページ に見開きサンプルあり 。
- GE Healthcare website. 生化夜話 第52回:核酸の純度を示すA260/A280、はじめて使ったのは誰? Link.
- By real name: Nadina Wiórkiewiczpl.wiki: Nadine90commons: Nadine90 [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons.
- By Vossman - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38479001.
- 分光倶楽部 マスターへの道. 第 2 回. GE Healthcare website. Link.
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
Gryson 2010a. Effect of food processing on plant DNA degradation and PCR-based GMO analysis: a review. Anal Bioanal Chem 396, 2003–2022
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。