核酸 DNAとRNA:
定義、構造、ヌクレオシド/ヌクレオチドの違い

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このページの最終更新日: 2019/05/14

  1. 概要: 核酸とは
  2. DNA の構造
    • リボース、デオキシリボースの構造および核酸の方向性
    • 二重らせん構造
  3. RNA の構造
    • なぜ T でなく U なのか?
    • なぜ RNA は DNA より不安定なのか?

関連ページ


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概要: 核酸とは

核酸 nucleic acid とは、リン酸、ペントースおよび核酸塩基からなる ヌクレオチド nucleotide が重合したポリヌクレオチド のこと。構造的にも機能的にも、DNA と RNA に大別される (1)。核酸塩基は単に

用語がややこしいので、最初に整理しておく。核酸の構成要素はリン酸、ペントース (糖) および核酸塩基であるが、

  • ヌクレオシド nucleoside = ペントース + 核酸塩基
  • ヌクレオチド nucleotide = ペントース + 核酸塩基 + 1 個以上のリン酸
  • 核酸 = ポリヌクレオチド

という関係になる。

私はこれを 核酸は大きくなると STOP と覚えている。小さい方から順に nucleoside の S、nucleotide の T、poly-nucleotide の P を並べている (→ 生化学の語呂合わせ集)。

核酸塩基である A, T, G, C, U は、塩基だけの場合と、糖と結合してヌクレオシドになった場合で名前が変わる。RNA を構成する糖であるリボース ribose と結合した場合、塩基は次のような名前になる。ただし、チミジンは RNA には含まれないことに注意。

なお、核酸塩基は単に「塩基 base」と呼ばれることもあるが、塩基という言葉は 酸と塩基 でも使われるため、このページでは核酸塩基と書く。実際に塩基性を示すことから、核酸塩基と呼ばれているようである (1)。

核酸塩基
base

アデニン
Adenine

グアニン
Guanine

シトシン
Cytosine

チミン
Thymine

ウラシル
Uracil

Nucleoside

アデノシン
Adenosine

グアノシン
Guanosine

シチジン
Cytidine

チミジン
Thymidine

ウリジン
Uridine


DNA では、塩基はデオキシリボースと結合する。したがってヌクレオシドの名前も代わり、次の表のようになる。単に「デオキシ」がつくだけである。デオキシウリジン deoxyuridine は DNA には含まれないので、スペースの都合上省いてある。

デオキシアデノシン
Deoxyadenosine

デオキシグアノシン
Deoxyguanosine

デオキシシチジン
Deoxycytidine

デオキシチミジン
Deoxythymidine


これらにさらにリン酸基がつくと、ヌクレオチドになってさらに名前が変わる。リン酸基の数によって mono-、di- または tri-phosphate となる。オキシとデオキシについて、それぞれ 1 - 3 個のリン酸基が結合するのが一般的である。すなわち、次の表のようになる。

Deoxyadenosine 5' monophosphase

Deoxyadenosine 5' diphosphase

Deoxyadenosine 5' triphosphase

Deoxyguanosine 5' monophosphase

Deoxyguanosine 5' diphosphase

Deoxyguanosine 5' triphosphase

Deoxycytidine 5' monophosphase

Deoxycytidine 5' dinophosphase

Deoxycytidine 5' triphosphase

Deoxythymidine 5' monophosphase

Deoxythymidine 5' diphosphase

Deoxythymidine 5' triphosphase

Adenosine 5' monophosphase

Adenosine 5' diphosphase

Adenosine 5' triphosphase

Guanosine 5' monophosphase

Guanosine 5' diphosphase

Guanosine 5' triphosphase

Cytidine 5' monophosphase

Cytidine 5' dinophosphase

Cytidine 5' triphosphase

Thymidine 5' monophosphase

Thymidine 5' diphosphase

Thymidine 5' triphosphase


Adenosine 5' triphosphase は、以下の構造をもつエネルギー的に重要な物質で、ATP と略される。


ATP の構造 (Public domain)

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DNA の構造

DNA の構造を理解する上で重要なポイントは以下の通りである。

  • RNA との比較、デオキシリボース vs. リボース である。
  • 5' および 3' という方向性がある。
  • 二重らせん構造をとり、A と T、C と G がそれぞれ塩基対を形成する。

以下、それぞれについて詳しく見てみよう。


リボース・デオキシリボースの構造

リボース ribose およびデオキシリボース deoxyribose の構造は図 (7) の通りで、X の位置に OH が来るのが ribose、H が来るのが deoxyribose である。

RNA はリボースが、DNA にはデオキシリボースがペントースとして含まれる。



核酸の方向性

さらに DNA の構造 (8)。少し両者の関係がわかりにくいが、デオキシリボースの 5' と 3' の炭素がリン酸基を介して繋がっていることが見て取れるだろうか。

このことから、DNA 鎖には方向性があることがわかる。塩基配列を示す時は「5' 側から 3' 側へ」書くのがルールである。数字を含めずに CGAT のように書く場合も、5' - 3' 方向で数字が省略されていると考える。



リボ核酸 RNA では、2 位の炭素に水酸基 -OH が結合しているが、DNA は「デオキシ(酸素がないという意味)」なので、これが水素原子に置換されている。

しかし、2 位の炭素は鎖の形成には関与しないので、DNA と同様にヌクレオチドが長く連なることができるわけである。


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DNA の二本鎖構造

DNA の二重らせん構造 double helix structure は 1953 年に報告された。

これが生物学上の大発見とされているのは、この構造が半保存的複製 semiconservative replication という DNA の機能を見事に表現したものだったためである。

重要なポイントは

  • 糖とリン酸基の部分が外側、塩基が内側。リン酸基が荷電しているので、水の中で安定である。
  • A と T、G と C が水素結合 hydrogen bond を形成する
  • 水素結合は、糖同士を繋いでいる共有結合 covalent bond よりも弱く、必要なとき(転写、複製など)に簡単に分離することができる
  • 2 本の鎖は逆向き。5' to 3' と 3' to 5'。

細かい構造上の特徴は以下 (1)。

  • それぞれの塩基は 3.4 オングストローム離れている。
  • らせん構造は 34 オングストロームごとに繰り返している。つまり 10 塩基が 1 ユニットになっている。
  • らせんの直径は 20 オングストロームである。

> DNA の構造は、以下の理由から 化学的に非常に安定 である (6)。

  • 比較的反応性の高い塩基は、鎖の内側に水素結合した状態で格納されており、他の物質と反応しにくい。
  • さらに、塩基対はリン酸および糖で外側から保護された形になっている。

> DNA の構造は、以下の理由から 物理的に不安定 である (6)。

  • DNA 鎖は水中でランダムコイル構造をとっており、ピペッティングによる水流などで容易に切断される。とくに長い DNA は切断されやすい。
  • 一般的なゲノム DNA では、150 kb 以上の鎖は通常の DNA 抽出 の過程で切断される可能性が高い。

DNA の量は細胞内で比較的一定であるのに対して、RNA の量は転写が活発かどうかによって大きく変動する。一般に、生物がよい栄養状態にあるときは RNA 量が増大する傾向にある。そのため、RNA : DNA 比は栄養状態もしくは成長率の指標として使われることがある (5)。


RNA の構造

なぜ RNA は T でなく U なのか?

これは、逆に「なぜ DNA では U を用いないのか?」と考えた方が良いようである (9)。

シトシン C、チミン T およびウラシル U の構造は以下の通り。

チミン (11)

ウラシル (10)

シトシン (12)


シトシンのアミノ基が O に変わるとウラシルになる ことがわかるだろう。これはアミノ基転移といって、比較的起こりやすい反応である。

生命が最初に使っていた遺伝物質は、DNA でなく RNA であったと考えられている (RNA ワールド仮説; see 生命の起源)。ところが、RNA ではアミノ基転移によって C が U になってしまい、遺伝情報の保存に都合が悪かった。そのため、情報を長期保存する DNA では、U でなく T が使われるようになったと思われる。

ただし、T には TT が変異を生じやすいという問題がある (いずれ更新)。RNA editing によって TT を避ける機構が、日差しの強い地域の植物に備わっているという報告もある。


なぜ RNA は DNA より不安定なのか?

下の図に見る H と OH の違いが、DNA と RNA の安定性に大きな差をもたらす (9)。

すなわち、2' 位のヒドロキシ基 OH は 反応性の高い孤立電子対 を 2 つ持っており、これが 3' 位にあるホスホジエステル結合を求核攻撃 するのである。これが、RNA は DNA よりも分解しやすい理由の一つである。

RNA を保存する試薬として RNAlater とその代用品 がある。



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References

  1. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  2. By Sponk (talk) - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9831553
  3. By Boumphreyfr - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7190747
  4. By Madprime (トーク · 投稿記録) - 投稿者自身による作品iThe source code of this SVG is valid.このベクターイメージInkscapeで作成されました。., CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1848174
  5. Grimm et al. 2015a. RNA/DNA ratio is an early responding, accurate performance parameter in growth experiments of noble crayfish Astacus astacus (L.). Aquac Res 46, 1937-1945.
  6. Amazon link: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition.
  7. By Boumphreyfr - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
  8. By Madprime (talk · contribs) - Own workiThe source code of this SVG is valid.This vector image was created with Inkscape., CC BY-SA 3.0, Link
  9. Got it! Lab. RNA:DNAとは何が違うのか? Link: Last access 2019/05/13.
  10. CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=106134
  11. Uracil chemical structure". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
  12. CC BY-SA 3.0, Link