IPTG によるタンパク質の発現誘導:
原理、プロトコールなど
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このページの最終更新日: 2019/01/21- 概要: IPTG によるタンパク質の発現誘導
- プロトコール
- IPTG ストック溶液の調製
- 条件検討
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概要: IPTG による発現誘導の原理
IPTG による発現誘導は、大腸菌を使ったタンパク質発現系でおそらく最も頻繁に使われる方法である。ラクトースオペロン利用した発現システムである。ラクトース のページに、ラクトースオペロンに関する記述がある。
ここでは、汎用される pET ベクターを使った方法の原理について述べる (1)。
- この方法では、L8-UV5 lac プロモーターの支配下に T7 RNA ポリメラーゼがある大腸菌を使わなければならない。
- IPTG を添加すると lac リプレッサーが解離し、T7 RNA ポリメラーゼが転写されるようになる。図はここまでしか表していないので注意。
![]() ラクトースオペロンの概略図 (2)。上は転写が抑制されている状態、下はラクトースや IPTG によって転写が活性化された状態。1. RNA polymerase、2. lac リプレッサー、3. プロモーター、4. オペレーター、5. ラクトース (IPTG)、6. lacZ、7. lacY、8. lacA. |
- 大腸菌の T7 RNA ポリメラーゼが、pET ベクター上の T7 promoter に作用し、ベクターに組み込まれた遺伝子を転写する。
pET システムでは、IPTG が直接ベクター上のプロモーターに作用するのではなく、大腸菌の T7 RNA polymerase を介して発現を誘導する。
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プロトコール
IPTG ストック溶液の調製
一般に 0.1 M IPTG をストック溶液として用いる。調製方法は以下の通り。
- IPTG の 分子量 は 238.3 なので、
0.238 g を 10 mL の滅菌水に溶解 する (5)。 - 溶液はろ過滅菌し、1 mL ずつ分注して -20 °C に保存。
なお、LB 培地に IPTG を加えるときは、LB 培地のページ にあるように終濃度 0.2 mM 以上で加える。1 M をストック溶液にしているラボもあるようだ。
条件検討
大腸菌発現系では、最大量の発現タンパク質を可溶性画分として得ることを目指し、発現誘導プロトコールを最適化する必要がある。主に検討する誘導条件は以下の 4 つである。
個人的には、文献 4 の初期設定と検討範囲が極めて妥当であると思う。
発現誘導時の密度 |
大腸菌の密度は 600 nm の吸光度 (OD600) の値で表す。 0.4 を試してから、0.2 - 0.6 の間で最適化 (4)。 |
培養温度 |
37°C を試してから、18 - 30°C の間で最適化 (4)。 培養温度が高いと、発現タンパク質が封入体に行ってしまう可能性が上がる。これを防ぐために pCold などの低温誘導性ベクターも販売されている。 |
IPTG の濃度 |
0.4 mM を試してから、0.1 - 0.6 mM で最適化 (4)。 |
発現誘導後の培養時間 |
2 時間を試してから、1.5 - 4 時間で最適化 (4)。 |
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References
東端 2013a (Review). 大腸菌を宿主とした異種タンパク質高発現のイロハ. 生物工学 91, 96-100.- By T A RAJU - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
- 25℃でIPTGによるタンパク発現誘導をする方法. Link: Last access 11-9-2017.
- Lablogue 大腸菌を用いたタンパク質の発現 4 Link: Last access 2017/11/09.
- IPTGの調製、使用法. タカラバイオ. Link: Last access 2019/01/18.