DNA の電気泳動:
原理、プロトコール、検出限界、エチブロの安全性など
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このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: アガロースゲル電気泳動
- DNA 検出試薬と検出可能な DNA 量
- プロトコール: DNA のアガロースゲル電気泳動
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概要: DNA の電気泳動
このページは電気泳動全般に関する概要のページであるが、とりあえずはアガロースゲルによる DNA の電気泳動についてまとめる。内容が増えてきたら、さらに細分化したページを作る予定。
アガロースゲル電気泳動 (agarose gel electrophoresis) は、DNA や RNA などの生体高分子を分離・解析するために使用される技術の一つである。アガロースゲルと呼ばれるゲルマトリックス上で、電気場をかけて分子を移動させることで、分子の大きさや形状による分離を行う。
この技術は、DNA の分離やクローニング、PCR 産物の解析、RNA の分離・定量など、分子生物学の多岐に渡る分野で使用されている。アガロースゲルは毒性が低いことから、初心者でも扱いやすいという利点もある。
DNA 検出試薬と検出可能な DNA 量
アガロースゲル電気泳動で検出できる DNA 量は、染色試薬の種類による。もっとも有名なエチジウムブロマイド ethidium bromide で安定的に検出される DNA 量は
ただし、これらは
試薬 | 添加量 | 特徴 |
---|---|---|
エチジウムブロマイド |
0.5 µg/ml程度 |
エチジウムブロマイド (臭化エチジウム; EtBr) は UV トランスイルミネーターによって励起・検出ができる (2)。ストック溶液は水で 10 mg/mL に溶解して室温で遮光保存する。 検出限界は上に述べたように約 10 ng である。一般にエチブロは「危険」な試薬として扱われているが、実のところその毒性は通常の実験試薬と同程度である (6)。 |
GelStar | 約 20 pg の dsDNA を検出することができる。 |
|
SYBR Green |
プロトコール: アガロースゲル電気泳動
アガロースは海藻などから抽出される多糖類であり、熱水で膨潤した状態でゲルを形成する。このゲルを電気泳動用の容器に流し込み、DNA などの試料を溶液にしてゲルにアプライする。次に、泳動槽に電圧をかけて、DNA などの分子をゲルの中で移動させる。移動速度は、分子の大きさや形状によって異なるため、移動速度の違いを利用して、分子を分離することができる。
英語だが、プロトコールの概要は以下の動画によくまとまっている。
アガロースゲルの作成
- 1 - 2% 程度 (w/v) のアガロースを TAE または TBE buffer に加える。
- 電子レンジで溶かす。突沸しないように、ときどき電子レンジを止めてかき混ぜる。
- 適切な温度まで冷やす。
- エチジウムブロマイド ethidium bromide などの DNA 検出試薬を加え、型に流し込む。
DNA そのリン酸基で負に荷電しており、これが正電極に引きつけられるのが電気泳動の原理である。溶液が酸性に傾くということは、溶液中に H+ が大量に存在するということであり、H+ によってリン酸基の負電荷が中和されるということ。したがって、DNA 電気泳動の溶液はアルカリ性に偏っている必要があり、さらに pH が変わりにくいように緩衝能をもつ必要がある。これが TAE, TBE などの緩衝液を使う理由である。
TAE は Tris-acetate EDTA, TBE は Tris-borate EDTA である。一般にアガロースゲル電気泳動では 1 x TAE または 0.5 x TAE が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動では 1 x TBE が使われる (3)。
かつては TAE の方がゲルからの DNA 回収効率が高かったため、アガロースゲル電気泳動では主に TAE が使われてきた (1)。最近のキットは TBE からの回収率が上がっているようなので、基本はどちらでも良いと思われる。
TAE の方がわずかに実際的なメリットがある。すなわち TBE よりも安く、ストック溶液を高濃度 (50x) で保存できる。TBE のストック溶液は 10x である。
EDTA は Mg2+ のキレート剤である。Mg2+ は DNAse を活性化するので、DNA の分解を防ぐために EDTA を入れる。
サンプルのアプライ
ローディングダイ loading dye を使う。1% ゲルを使った場合、BPB は約 500 bp の位置に、XC は約 4,000 bp の位置に現れる (7)。
電気泳動
一般的なパワーサプライには、電圧一定 (CV, constant voltage) モードと電流一定 (CC constant current) モードがある。
通常は、CV モードで 100 V の電圧をかける。泳動時間はゲルの大きさ、バッファーの濃度、見たい DNA の大きさなどによるが、一般には 15 - 30 分ほどである。
結果の確認
一般的には、UV イルミネーターを使ってゲルに UV を照射すると、DNA のバンドが見える。UV を直接見ると目に悪いので、カバーを忘れないこと。
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References
- Lonza 技術情報 電気泳動・分析. Pdf file.
- じっけんプロトコール, Sigma. Pdf file.
- TAEバッファーとTBEバッファーの比較. BioWiki. Link.
Green and Sambrook, 2012a. Molecular cloning: A laboratory manual, 4th edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press.
分子生物学関係のプロトコール集では、この本よりも有名なものはないだろう。 日本語版がない、電子書籍版もない、値段が高い、重い (3 冊組でとどく) など問題点は多々あるが、それでも実験室に必ずあるべき書。ラボプロトコールをまとめたりする時間を大いに節約することができる。 ラボの教科書としてではなく、自分用の実験マニュアルで確かなものが欲しい場合には、主要部分をまとめた The Condensed Protocols from Molecular Cloning という本もある。 |
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- TAEバッファーとTBEバッファーの比較. Link: Last access 9/1/2017.
- The Myth of Ethidium Bromide. Link: Last access 11/06/2017.
- Gel Loading bufferの組成. Link: Last access 2020/07/21.
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