タンパク質の抽出: 原理、種類、プロトコールなど
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このページの最終更新日: 2024/12/15広告
概要: タンパク質抽出で考えるべきこと
タンパク質 protein 抽出に考えるポイントは以下の通り。
まずは、抽出するタンパク質の種類および使用法である。細胞質、細胞膜 cellular membrane、核 nucleus など、どの画分のタンパク質を得たいかに応じて方法が決まってくる。また、抽出したタンパク質を SDS-PAGE にかけるだけだったら、変性はあまり気にしなくても大丈夫だが、精製して酵素活性を測る場合には十分な注意を払わなければならない。
上記の点を考慮して、
- どの緩衝液を使うか
- いかに細胞を破壊するか
を決定する。いかにプロテアーゼ protease の影響を防ぐかも重要なポイントである。
細胞破砕法
GE ヘルスケアのページに従って分類する (1)。以下の表にあるのは「原理」のようなものであり、実際には「界面活性剤の存在下で超音波処理する」など、目的に応じたプロトコールが使われる。
方法 | 原理、特徴など |
---|---|
浸透圧ショック | 試料を滅菌水などの低張溶液に懸濁することで、水が侵入して細胞が破壊される。 オルガネラの破壊が抑えられるため、プロテアーゼ活性が低く抑えられる。ただし、タンパク質の回収率はあまり良くない (1)。 |
凍結融解 | 液体窒素での凍結と融解を繰り返す。タンパク質が失活してしまうことが多い (1)。 |
界面活性剤を使う | 疎水性の高いタンパク質の溶解度を高める。 膜タンパク質を精製する場合には、はじめに膜画分を調製してから界面活性剤を添加するのが一般的である (1)。 |
溶解効果は高く、発現タンパク質が封入体 inclusion body の中にある場合にも抽出できる (1)。 タンパク質と同時に DNA が抽出され粘性を示す場合がある (1)。この場合、希釈、バッファーに酢酸マグネシウムやヌクレアーゼを添加するといった方法がとられる。 |
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フレンチプレス | 細胞懸濁液を、高圧下で小さい穴から押し出して細胞を破砕する。酵母など強度の高い細胞を破砕でき、タンパク質抽出の再現性が良いことが特徴 (1)。 シリンジと針を使う方法も、この一種と言えるだろう。 |
乳鉢で破砕 | 液体窒素を加えつつ、パウダー状になるまで破砕するのが普通。 |
ホモジナイザーで破砕 |
ホモジナイザーの種類に応じて様々である。
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酵素で消化する | サンプルによって様々である。
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プロテアーゼ阻害剤を入れずに、適当にやってみた実験の記録
タンパク質抽出のときは、冷却したりプロテアーゼ阻害剤を入れたりして分解を防ぐのが重要であるとされる。適当にやったときに、どれだけ分解が起こるのかを実験してみた。
手順は以下の通り。
- LB 培地 で大腸菌を終夜培養、1.5 mL から菌体を遠心で集める。上清を捨てる。
- 以後のステップは一切冷却なし。全て室温で行う。界面活性剤およびプロテアーゼ阻害剤を含まない TBS buffer で大腸菌ペレットを懸濁し、ビーズ型のホモジナイザーまたは lysozyme で破砕。
- 遠心して上清を -20 °C で保存。
- 翌週に融解し、10 µL を SDS-PAGE に。タンパク質濃度は 1 - 5 mg/mL ぐらいの範囲だった。マーカーなし。
- CBB 染色。写真には 7 サンプルが泳動されており、とくに処理に違いはない。ただし実験者は異なるので、差は実験操作の違いによると思われる。
左から 2 および 3 レーン目のサンプルでは分解が見られるが、それ以外は思ったほどでもないという印象。少なくとも、分解されていないタンパク質のバンドを見ることができる。高校生や学部生向けのデモンストレーションなら、プロテアーゼ阻害剤を節約することができそうである。
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References
- タンパク質の抽出・細胞破砕法. GE Healthcare, Link.
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