生物学の格言集
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2018/03/11 更新
- 生化学全般
- 系統分類
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生化学全般
TCA 回路 は ATP を作ると考えてしまいそうだが、実際に作られるのは高エネルギー分子の NADH である (図; ref 2)。
ATP 合成反応の駆動力となるのは、ミトコンドリア の intermembrane space で H+ 濃度が高いという
これらの複合体に H+ を供給しているのが TCA 回路であり、H+ の運び屋として働くのが NADH である。
「TCA 回路はエネルギー産生」と覚えていると、なんとなく ATP がこの回路で作り出されているように間違って覚えてしまうことがある。「TCA 回路は NADH 産生のための回路」と覚えることで、この重要な補酵素の生理機能まで含めて学習することができるだろう。
なお、プロトンを渡した NADH は、NAD+ (NAD とも表記されるが同じ物質) となって TCA 回路に帰っていく。このことから、NAD+ に対する NADH が多いほど、その細胞は高エネルギーの状態、つまり ATP をより多く生み出すポテンシャルをもっていることになる。NADH/NAD+ 比は、細胞の生理状態の指標として使われている。
急激な運動をすると、筋肉が低酸素 hypoxia の状態になり、乳酸が生成することは多くの人が知っているだろう。かつては、この乳酸が筋肉痛の原因とも考えられた。なぜ、わざわざ組織にダメージを与えるような「酸」を作るのか、不思議に思ったことはないだろうか?
酸素が十分にあるとき、TCA 回路と電子伝達系が主要な ATP の産生経路である。ところが、これらの経路による ATP 産生には、NADH と酸素が絶対的に必要である。上の電子伝達系の図で複合体 IV が酸素を使ってることからもわかるだろう。酸素がない状態で ATP を作れるのは解糖系 glycolysis という経路である (図, ref 3)。ATP 産生の効率は低いものの、解糖系がなんとか ATP を作れるために、生物は低酸素でも一応生きることができる。
解糖系が ATP を作る際、NAD+ から NADH ができているのがポイントである。NADH は上で述べたように電子伝達系にとっては重要な分子だが、
したがって、
「なぜ乳酸か?」という疑問の答えは、下の図にある。解糖系の最終産物であるピルビン酸を使って、もっとも簡単に作れる構造の分子が乳酸だからである。これは必ずしも乳酸である必要はなく、エタノール を作る生物もいる (アルコール発酵) し、タコなどの軟体類ではまた違った物質を作るようである。
英語では Fats burn in the flame of carbohydrate (1) と表現される。糖、アミノ酸、脂質などがエネルギーとして使われるときには、主にアセチル CoA になった後に TCA 回路に入るという経路を辿る。ところが、アセチル CoA が TCA 回路に入る際には、オキサロ酢酸 oxaloacetate と 1 : 1 で結合する必要がある。したがって、細胞内にいくらアセチル CoA があっても、オキサロ酢酸と同じ量しか酸化することができない。
オキサロ酢酸は、TCA 回路内でリンゴ酸から作られるほか、ピルビン酸 からの補充反応 anaplerosis でも合成される。このピルビン酸の原料は糖であり、結局のところ糖の供給がない状態では脂質から得られる多量のアセチル CoA を酸化することができない。
なお、もし糖の供給が不十分でアセチル CoA が過剰になった場合、肝臓でケトン体 (アセト酢酸、BHB、アセトン) に変換される。
語感的には酸素を受け取ると「酸化された」ことになってわかりやすいが、高校あたりで酸化・還元の定義が拡張され、酸化数という概念が登場する。高校化学でつまづきがちな点であるとともに、研究を始める頃にはよく覚えていなかったりするポイントでもある。「酸化」という便利な日本語を生かして、このように覚えておこう。
これとは逆に、ある物質が酸素を手放したら「還元された」ということであり、水素や電子を手放したら「酸化された」ということである。詳細は 酸化・還元の基礎 のページに。
たとえば抗酸化物質として知られる ビタミン C は、
全ては
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系統・進化 phylogenetics 関係
単系統群 monophyletic group とは、「ある祖先とその子孫のすべてを含むグループ」のことをいう。つまり、ある言葉でくくられる生物群は、基本的に単系統のものでなければならないと言っている (参考: 生物の分類)。
詳細は別のページにまとめることにして、ここではシンプルな例で理解しよう。たとえば「哺乳類」は、全てネズミのような形をした共通祖先 common ancestor の子孫であり、すなわち単系統群であると考えられている (図)。
これに対して、トンボなどの昆虫、コウモリ (哺乳類)、鳥からなる「翼のあるもの」という分類群を考えてみる。
昆虫、コウモリ、鳥の共通祖先は、かなり昔に遡るだろう。その子孫には翼のない ウシ や トカゲ なども含まれる。したがって「翼あるもの」という分類群は単系統ではなく、「哺乳類」よりも分類学的な価値の低い概念ということになる。
「無脊椎動物」「魚」など、日常的に浸透している分類群も、実は単系統群ではないので注意したい。
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References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
- "Mitochondrial electron transport chain—Etc4" by Fvasconcellos 22:35, 9 September 2007 (UTC) - Vector version of w:Image:Etc4.png by TimVickers, content unchanged.. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
- Molecular Biology of the Cell, 5th edition.