代謝の中核をなす電子運搬体 NADH: 構造、機能など
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このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: NADH とは
- NAD+ から NADH を作る反応
- 解糖系
- TCA 回路
- NAD+ を補酵素として用いる酵素
- NAD+ と NADH の吸光度
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概要: NADH とは
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide; NAD, NAD+, NADH) は、以下のような構造をもつ電子運搬体である。
下の図で、アデニン部分にリン酸基がついているのが NADPH, ついていないのが NADH である (図, Public domain)。両者の構造は非常によく似ており、機能も極めて近い。NADPH については NADPH のページ で NADH との機能の違いを中心に解説する。
FAD のページも参照のこと。
NADPH の構造 (1) |
NADH の構造 (1) |
NADH は、下の図 (3) のように、窒素環の部分で
生物学の格言集 にある通り 「水素原子を受け取ったら還元」なので、これは「ある分子の酸化反応」であり、この反応を通じて NAD+ は NADH に還元されることになる。NAD+ は酸化型、NADH は還元型と呼ばれる。NAD+ の + は窒素原子が正電荷をもっていることを意味している。NAD と表記されこともあるが、両者は同じものである。
NADH のもつ生理的意義を大雑把に書くと、次のようになる (図は Public domain)。
- 動物は、炭素原子 C を含む食事を酸化してエネルギーを得る。
- 言い換えれば「C によって O2 が還元される」→「食べ物のもつ e- が O2 に渡される」ということ。
- しかし、C の電子を O2 に直接渡すと、これは「燃焼」である。反応が激しすぎる。
- したがって、動物は多くの段階を経てゆっくりと e- を O2 に渡している。
- この e- の運搬を仲介するものの一つが NAD+ である。
NAD+ から NADH を作る反応
解糖系による NADH 合成
解糖系 glycolysis では、1 分子の グルコース から 2 分子の NADH が生じる。全体像を示す図は 細胞の分子生物学 (Amazon) から引用した。
- グルコースからは 2 分子のピルビン酸が生じるので、これはグルコース 1 分子あたり 2 分子に相当。
- つまり、グルコースが全て乳酸になるような理想的な嫌気条件下では、NADH は生じないことになる。
解糖系で NADH が生じる反応は、「6. GAPのリン酸化」である。
解糖の過程でグルコースはアルドラーゼの作用でグリセルアルデヒド-3-リン酸 (GAP) およびジヒドロキシアセトンリン酸 (DHAP) 2 つに開裂し、DHAP は GAP に異性化される。つまり、1 分子のグルコースから 2 分子の GAP が生じる。NADH は、GAP によって NAD+ が還元されることで生じるため、1 分子のグルコースから 2 分子作られることになる。
TCA 回路による NADH 合成
TCA 回路では、1 分子の アセチル CoA によって 3 分子の NAD+ が NADH に還元される。詳細は TCA 回路のページを参照のこと。
NADH は ミトコンドリア の呼吸鎖 respiratory chain に輸送され、水素原子は最終的に NADH から酸素に受け渡されて ATPと 水 を生じる。NAD+ は TCA 回路で再利用される。
> 1 分子の NADH からは 3 分子の ATP が作られるというのが古典的な理論。
- 1 分子の FADH2 からは、2 個の ATP が作られる。詳細は ATP の数の話 へ。
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NAD+ を補酵素として用いる酵素
アルコールデヒドロゲナーゼ。 |
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LDH |
乳酸デヒドロゲナーゼ。 |
解糖系の 6 番目の反応で、解糖系では NAD から NADH を生じる唯一の反応である。またこの反応では高エネルギー分子である 1,3-BPG が生じ、次の反応で ATP を生み出す。 |
NAD+ と NADH の吸光度
NADH は 340 nm に吸光がある。この性質は、酵素活性の測定によく使われる。
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References
- By NEUROtiker - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
- "NAD+ phys" by NEUROtiker - 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
- "NAD- to NADH". Licensed under GFDL via Wikipedia.
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