ミトコンドリアの電子伝達系

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7-27-2017 updated

  1. 概要: 電子伝達系とは
  2. 各段階の反応

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概要: 電子伝達系とは

電子の伝達によって行われる生体の酸化還元反応を電子伝達 electron transfer or electron transport と呼び、この反応を引き起こす一連の酵素 enzyme や補酵素 coenzyme を電子伝達系という。

具体的には、以下のような電子伝達系がある。

  • ミトコンドリア に存在する 呼吸鎖 respiratory chain
  • 光合成における電子伝達
  • 細菌も独自の電子伝達系をもっている。

一般には、ミトコンドリアの呼吸鎖を指すことが多い。このページでも、この反応系について解説する。

ミトコンドリアの電子伝達系で生じるプロトンの濃度勾配によって、ATP が合成される。ここまでを含めて 酸化的リン酸化 oxidative phosphorylation という (1)。


呼吸鎖の概要

下の図 (3) は、呼吸鎖の概要を示したものである (2)。非常に大雑把に言うと、この経路は以下のような重要な特徴をもつ (1)。

  1. 解糖系TCA 回路NADHFADH2 が作られる。呼吸鎖は、これらの高エネルギー電子運搬体および TCA 回路の中間体コハク酸 succinate を利用して、酸素に電子およびプロトンを引き渡すことでエネルギーを引き出す。
  2. 得られたエネルギーは mitochondria marix と intermembrane space の間にプロトン H+ の濃度勾配を作り出す。ATP synthase が、このプロトン濃度勾配を利用して ADP から ATP を合成する。
  3. ただし、解糖系で作られた NADH や ADP を mitochondria matrix に輸送するには、グリセロール-3-リン酸シャトル、malate-aspartate shuttle、ATP-ADP translocase などの工夫が必要である。


  1. 呼吸鎖は、I, II, III, IV の 4 つのタンパク質複合体から成る (1)。それぞれの複合体はミトコンドリアの内膜に埋め込まれており、電子をある物質から次の物質に移す際に、プロトンを膜間領域へ輸送する。
  2. それぞれの複合体は勝手に反応を行っているわけではなく、I, II, III は respirasome と呼ばれる超巨大複合体を作っている。また、ユビキノン ubiquinone (図中の Q) や cytochrome c などが複合体の間の電子伝達を補助している。これらの仕組みによって電子伝達が効率よく行われ、老化の原因となる活性酸素の漏出を最小限に抑えている。


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各段階の反応

1. NADH → complex I → QH2

Complex I は NADH dehydrogenase または NADH-Q oxidoreductase とも呼ばれる (1)。900 kDa 以上の巨大な複合体で、約 46 のポリペプチド鎖から成る。核およびミトコンドリアゲノムの両方にコードされている。

以下のように電子が NADH から complex I を介して Coenzyme Q に引き渡され、プロトンが matrix から膜間領域に移動する。

NADH + Q + 5H+matrix  →  NAD+ + QH2 + 4H+cytoplasm

2 個の電子およびプロトンを得た coenzyme Q (QH2) は complex I と解離し、内膜の中にある Q pool に組み込まれる (1)。


  • ここでいう H+cytoplasm は、この反応が起こる内膜の matrix 側に対して cytoplasm 側、すなわち intermembrane space を表しており、細胞質に電子が運ばれるわけではない。
  • Complex I は内膜から matrix に突き出した L 字型の構造をもつ (1)。TCA 回路で生み出された NADH は matrix にあるため、complex I とこのように反応できる。解糖系などにより生み出された 細胞質の NADH はミトコンドリア膜を通過できない ので、グリセロールリン酸シャトルなどによって電子だけを受け渡す。
  • NADH がミトコンドリアにどんどん運ばれてくるようなイメージがあるが、TCA 回路はミトコンドリア内にあるので、実際にはミトコンドリア内で NAD+ と H+ がくっついたり離れたりしているということになる。この場合には電荷やプロトン量の収支は考えなくてよい。

2. FADH2 → complex II → QH2

NADH の電子が complex I を介して coenzyme Q に受け渡されるが、FADH2 の電子は complex II を介する (1)。Complex II は succinate-Q reductase complex とも呼ばれる。

この反応では プロトンの輸送は起こらない


3. QH2 → complex III

Complex III は cytochrome reductase および Q-cytochrome c oxidoreductase とも呼ばれる (1)。

QH2 + 2 Cyt coxidative+ 2H+matrix  →  Q + 2 Cyt creduced + 4H+cytoplasm

Cytochrome はヘム heme を含むタンパク質で、自身も還元される。


4. Complex III の酸化

前のステップで還元された complex III から 電子が酸素へ引き渡される (1)。この反応は、酵素 cytochrome oxidase (complex IV) に触媒される。

4 Cyt creduced+ 8H+matrix + O2  →  4 Cyt coxidized + 4H+cytoplasm + 2H2O

最終的に酸素分子は 4 つの電子を受け取るわけであるが、これが不完全だと、他からさらに電子を奪おうとする反応性の高い 活性酸素 が生じる。


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References

  1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.
  1. "Mitochondrial electron transport chain—Etc4" by Fvasconcellos 22:35, 9 September 2007 (UTC) - Vector version of w:Image:Etc4.png by TimVickers, content unchanged.. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.