エタノール沈殿 (エタ沈): 原理、プロトコール、塩の種類など
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このページの最終更新日: 2024/12/15- 原理
- DNA のエタ沈に影響する要因
- 沈殿させる時間と温度
- DNA 濃度
- 遠心分離の時間
- 溶液量
- DNA のエタ沈に使われる塩の種類と特徴
- エタノール沈殿によるタンパク質の精製
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原理
エタノール沈殿の原理は
DNA のエタ沈を例にして説明する。DNA は負に荷電しており、水溶液中では 水分子 と水和した状態で「親水性コロイドとして水にとけている」。ここに エタノール を加えると、DNA と水の結合が阻害され、DNA が析出してくる (1)。
なお、塩を加えて DNA の負電荷が作り出す反発を和らげることで、DNA がより凝集しやすくなる。このため、エタ沈実験では溶液に塩を加えることが多い (1)。
PEG のページ に PEG 沈の特徴とプロトコールに関する記載があります。
DNA のエタ沈に影響する要因
温度
収量を上げるため -70°C で 30 分冷却するというプロトコールがあるが、これは逆効果で、かえって回収率が落ちる (1)。
ただし、DNA が低濃度の場合、エタノールと塩を加えた後に時間をおくこと自体は有効である (1)。短い DNA なら、4°C とかで一晩置くのが良いのだろうか。
DNA 濃度
基本的に
- 2.4 ng/ml - 0.4 µg/ml の範囲では、回収率にほとんど差がない (1)。
- 4 µg/ml では回収率が上昇し、40 µg/ml でほぼ 100% になる (1)。
遠心分離の時間
基本的に
DNA 濃度が高い場合には、短い時間の遠心で十分な回収率が得られる。20 - 30 分で回収率は飽和に近くなる。
溶液量
基本的に
DNA のエタ沈に使われる塩の種類と特徴
酢酸ナトリウム |
3M 酢酸ナトリウム (pH 5.2) を溶液の 1/10 量加えるというのが、最も一般的なエタ沈のプロトコールである。つまり終濃度は 0.3 M ということになる。 |
酢酸アンモニウム |
dNTP, 糖類, タンパク質 の共沈が少なくなるという特徴がある (1)。 ただし |
塩化リチウム |
DNA は「デオキシ」リボヌクレアーゼであり、RNA よりも一つ分子内の水酸基 -OH が少ない。よって水溶性が高く、DNA より多くのエタノールを必要とする。 塩化リチウムは ただし、塩化物イオンは逆転写を阻害するため、この場合にはリンスで十分に塩を除去する必要がある。 |
塩化ナトリウム |
これは、SDS のナトリウム塩は溶解度が高いが、その他の塩の溶解度が低いということである。とくにカリウム塩は難溶性である (1)。アルカリ法によるプラスミド精製 では、あえて酢酸カリウムを使うことで SDS を析出させ、取り除くステップがある。 |
塩化マグネシウム |
エタノール沈殿によるタンパク質の精製
タンパク質 は、種類によって溶解度が異なっている。つまり、エタノールを一定量加えたときに、一部のタンパク質は沈殿し、その他は沈殿しないという現象がおこる。これを利用して、エタノール沈殿でタンパク質を精製する方法がある。詳細は タンパク質の沈殿法 のページを参照のこと。
ただし、これはラフな分画 (粗精製) であり、カラムクロマトグラフィーなどを利用した方がもちろん得られるタンパク質の純度は高くなる。
組織から抽出したタンパク質溶液から、まず不要なタンパク質をエタノール沈殿や硫安沈殿などで取り除き、クロマトグラフィーなどでさらに精製するというのが一般的な手法である。
広告References
春木 2011a. エタノール沈殿あれこれ. 生物工学 89, 254-256.- ページ編集に伴い削除
このページの大部分は Reference 1 の日本語総説を参考に書かれていますが、Reference 1 を見てみると、非常に多くの部分が Molecular Cloning からの内容です。このバイブルをぜひ 1 冊。生物お勧め参考書・実験の本 のページも参照して下さい。
分子生物学関係のプロトコール集では、この本よりも有名なものはないだろう。 日本語版がない、電子書籍版もない、値段が高い、重い (3 冊組でとどく) など問題点は多々あるが、それでも実験室に必ずあるべき書。ラボプロトコールをまとめたりする時間を大いに節約することができる。 ラボの教科書としてではなく、自分用の実験マニュアルで確かなものが欲しい場合には、主要部分をまとめた The Condensed Protocols from Molecular Cloning という本もある。 |
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