ゲノム論文コレクション
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このページの最終更新日: 2024/07/13DNA に関係する数字集 のページから分離しました。ゲノム情報を分類群ごとにメモしていきます。さらに分割する可能性もあるので、文献はなるべく PubMed への直リンクで記録するようにしています。
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概要: Genome paper について
歴史的に重要なゲノム
主に 文献 2 Bioinformatics and Functional Genomics (Amazon link) で紹介されているゲノム。
生物 | 備考 |
---|---|
MS2 |
1976 年。最初に決定されたウイルスゲノム。NC_001417、3,569 bp。 |
ヒトのミトコンドリアゲノム |
1981 年、最初の真核生物オルガネラゲノム。16,500 bp。 |
酵母の 3 番染色体 |
1992 年、最初の真核生物 染色体 ゲノム (3). |
最初の生物全ゲノム |
1995 年、Free-living organism で最初のゲノム (3)。H. influenzae という名前が紛らわしいが、インフルエンザウイルスではない。1890 年代のインフルエンザ流行時に、誤って病原菌として同定された バクテリア の一種。 ゲノムサイズは文献によって異なるが、約 1.8 Mb。NC_000907。 |
C. elegans |
1998 年、最初の多細胞動物ゲノム。97 Mb, 19,000 genes。 |
ゲノム論文の扱いの変遷
次世代シークエンサーの登場によって、早くかつ安価にゲノム配列を決定できるようになった。かつて有名誌に掲載されていた genome paper は、短報の genome report のような形で発表されることが多くなった (2)。
> Genome report に関する総説 (2)。簡単に主要な論文の歴史を振り返っている。
- Sanger らの φ174 DNA virus ゲノムが 1977 年。
- 酵母ゲノムの論文が 1996 年で、かなりの時間が経っている。
- ヒトゲノム論文は、2001 年 Thomson Reuter の hot paper に選ばれた。
- 2016 年現在、GenBank には 6 万以上の 原核生物 ゲノムと、2700 以上の真核生物ゲノムが登録されている。
文献 2 には genome report を受け付けている雑誌の一覧が載っている。Mitochondrial DNA, Molecular Ecology Resources, Genome Biology and Evolution などが馴染み深い。
Genome Announcement という雑誌では、原稿は editor のみの査読ですみやかに受理されるというメリットがある (2)。
ゲノム論文の書き方
一般には、ゲノムを読んで assembly statistics などの基本情報をまとめたあとに、その生物を特徴づけている形質に着目し、関係する遺伝子について細かい解析を行うのがパターンである。
Results で遺伝子について考察的な内容を含めるので、Discussion は短い傾向にある。このパターンにマッチする論文をいくつか挙げておく。
- エビの一種: Sex differentiation に注目。
上記の理由から、Results and Discussion になっている論文も多い。
バクテリア・ウイルスのゲノム
生物 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
φ174 DNA virus |
5,386 bp | Sanger らが最初に全ゲノムを読んだウイルス (1)。1977 年。NC_001422、11 の遺伝子がコードされていた。 |
4.6 M (1) | Single circular chromosome, 4288 genes according to this paper. Each gene within the E. coli contained, on average, 118 bases. Function has been determined for only 62% of E. coli genes. |
|
H. influenzae |
1.8 M |
|
植物のゲノム
生物 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
Tuber brop potato |
12 chromosomes, 39,031 genes. |
菌類のゲノム
生物 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
Filamental fungus |
38 Mb |
アカパンカビ。7 chromosomes, 10082 protein-coding genes. 多種と 80% 以上の同一率を示す遺伝子が |
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無脊椎動物のゲノム
生物 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
酵母 |
12 M |
1996 年に最初に全ゲノムが読まれた真核生物。16 chromosomes, 6,000 以上の遺伝子 (1)、文献によっては 5404 個。 |
カイメン Amphimedon queenslandica |
約 3 万の predicted loci と、遺伝子数はけっこう多い (Ref)。 |
|
Plasmodium falciparum |
22.9 M | マラリア原虫。資金難のためにショットガン方式をとれなかったようである (Ref)。 酵素やトランスポーターが少なく、宿主の免疫系による攻撃を逃れるための遺伝子が多い。 |
97 M | 1998 年に最初に全ゲノムが読まれた多細胞動物。19,000 以上の遺伝子 (1)。 |
|
ショウジョウバエ D. melanogaster |
165 M | 4 chromosomes, 13,600 genes. ヒトの病気に関する遺伝子の 75% はショウジョウバエにも存在する。 |
エビ類 |
3 - 4 G | リピート配列が多く、他の甲殻類に比べて難しかったらしい。現在では、PacBio のロングリードなども生かして、いくつか論文が出ている。
|
Pacific oyser |
Ref。 |
|
クマムシ Tardigrade |
約 6000 の遺伝子が 水平伝播 であるという内容で話題になったが、その正確性には議論がある模様 (2)。論文へのリンク。 図を引用しておく。クリックで拡大する。 |
|
粘菌 |
脊椎動物のゲノム
生物 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
1500 M | 25 chromosomes, 26,000 genes. |
|
ソウギョ |
> 1.07 G | 名前の通り草食、学名は Ctenopharyngodon idellus、この論文 で 1.07 Gb の配列を報告している。染色体は 24 対。 27,263 genes, ゼブラフィッシュとの分岐は 49 - 54 million years ago と推定。メバロン酸経路とステロイド生合成経路に草食動物としての特徴があるらしい。 |
トラフグ |
< 400 M | ゲノムサイズはヒトの 1/8 以下だが、ほぼ同数の遺伝子を含んでいる (1)。 |
ウーパールーパー |
32 G | 28 chromosomes, 19802 genes. ヒトの約 10 倍ものゲノムサイズをもつ。リピート配列 が多く、約 19 Gb にも達すると考えられている。 イントロンサイズの中央値は 23251 nt で、これはヒトの約 13 倍にあたる (Ref)。 |
ニワトリ |
0.3 G | 39 pairs of chromosomes, 20000 - 30000 genes. ヒトの約 1/3 倍のゲノムサイズ。 |
カモノハシ |
ゲノム論文 には "an analgam of ancestral reptilian and derived mammalian characteristics" と書かれている。 |
|
38 chromosomes, 34860 genes. Pontius et al. Initial sequence and comparative analysis of the cat genome. Genome Res 17, 1675-1689, 2007. Wurster-Hill DH and Gray CW. Giemsa banding patterns in the chromosomes of twelve species of cats (Felidae). Cytogenet Cell Genet 12, 388-397 1973. |
||
2800 M |
39 chromosomes, 19000 genes. イヌゲノムの解読により、イヌ類は grey wolves から約 15,000 年前に生まれたことがわかった。 |
|
シベリアトラ |
2391 M |
38 chromosomes, 25028 genes. 大型ネコ類としては最初のゲノム。絶滅危惧種。1376 個の遺伝子セットがネコ科動物に特徴的で、力強い筋繊維とタンパク質の消化能力をもたらしているようだ (Link)。 |
3000 M = 3 G |
20,000 - 25,000 の遺伝子。 ヒトゲノム計画は1984 年に提案され、実際に 1991 年に着手された (1)。ドラフトゲノム解読終了が 2000 年、論文発表は 2004 年。 |
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References
- Amazon link: Berg et al. Biochemistry, Seventh Edition : 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
Smith, 2016a. Goodbye genome paper, hello genome report: the increasing popularity of 'genome announcements' and their impact on science. Brief Funct Genome, 16, 156-162.- Amazon link:
Pevsner 2016. Bioinformatics and Functional Genomics.
Boothby et al. (2015a) is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.
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