原核生物 Prokaryote
- 概要: 原核生物とは
- 似た言葉
- 原核生物の特徴
- 真核・原核の比較
- Bacteria, Archaea の比較
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概要: 原核生物とは
以下、辞典の定義では細菌 (バクテリア, bacteria) という言葉が関連して使われているが、bacteria という言葉の定義に変遷があり、混乱を生んでいるので注意する。
Prokaryotes (2)
Any organism in which the genetic material is not enclosed in a cell nucleus. Prokaryotes consist exclusively of bacteria, i.e. archaebacteria and eubacteria, which are now classified in separate domains, Archaea and Eubacteria. 原核細胞 prokaryotic cell の定義 (1)核膜がないために遺伝物質が細胞質と連続的に存在しており、ミトコンドリアや葉緑体などのオルガネラを含まない細胞をいう。細菌や藍藻類がこれにあたり、原核生物 prokaryote とよばれて、真核生物と大別されている。 |
細菌 bacteria は核をもたず、かつては原核生物 prokaryote と同義であった。しかし、1977 年にバクテリアの一部が非常に異なった生化学的特徴をもつことが Woese らによって発見され、archaebacteria と名付けられた。これらは、やがてドメイン domain という最高位の分類で
整理するならば、
- 古い定義: Prokaryote = Bacteria
- 現在では: Prokaryote = Bacteria (eubacteria とも) + Archaea
という関係である。
Archaea は eubacteria と細胞の構造が似ているが、系統的には真核生物に近い (3)。
理化学辞典では藍藻類 cyanobacteria が言及されているが、これは光合成を行う細菌であり、わざわざ分けて言及する必要はないように思う。
似た言葉
ちなみに、
また、
これらの分類群は正式なものではないが、無脊椎動物 invertebrate などと同様に、現在でも動物のグループを表す緩やかな概念として、科学論文においても使われている。
いずれ他のページに移すかもしれないが、生物の進化関係を示したきれいな図を見つけたので、ここに載せておく (5)。
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原核生物の特徴
真核生物と原核生物の違い
真核生物と原核生物の違いを簡単に表でまとめる (3)。
原核生物 | 真核生物 | |
---|---|---|
核 Nucleus | ない | ある |
細胞の大きさ | 比較的小さく、1 - 10 µm。 | 比較的大きく、10 - 100 µm。 |
ゲノム |
通常、1 続きの環状 DNA である。プラスミド plasmid をもっている場合、染色体が複数ある場合など例外あり。 基本的に染色体 chromosome が 1 つしかないため、細胞分裂時の染色体の分配が比較的簡単。 |
複数の染色体 chromosome に分かれている。環状ではなくリニアである。 |
ヒストン |
Eubacteria にはない。 |
ある。DNA はヒストンに巻きつき、コンパクトな構造を保っている。 |
オルガネラ |
膜に囲まれたオルガネラがない。 |
ミトコンドリア mitochondria、葉緑体 chroloplast などの膜に囲まれたオルガネラがある。 |
Bacteria と Archaea の違い
Bacteria と Archaea は、見た目は似ているが、化学的性状は大きく異なっている。系統的には Archaea はむしろ真核生物に近いことも重要なポイントである (4)。
Archaea | Bacteria | |
---|---|---|
核 Nucleus | ない |
ない |
細胞壁のペプチドグリカン |
ない |
ある |
細胞膜 脂質 | 分岐している |
分岐していない |
ヒストン | ない |
ある |
イントロン | 遺伝子によっては存在する。 |
ない |
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References
- 岩波 理化学辞典 第 4 版.
このサイトでは、私が持っている 1987 年の第 4 版を引用していることが多い。1998 年に第 5 版が発行されている。 ネット情報の問題点の一つは、信頼できる定義になかなか出会えないことである。Wikipedia には定義らしいことが書いてあり、普段の調べ物には十分なことも多いが、正式な資料を作るときにはその引用は避けたいものである。 そんなときに役に立つのが理化学辞典や生化学辞典。中古でも古い版でもよいので、とにかく 1 冊持っておくと仕事がはかどる。 |
- Amazon link:
Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology. - Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
- Amazon link:
Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです - By <a href="https://es.wikipedia.org/wiki/Usuario:Maulucioni" class="extiw" title="es:Usuario:Maulucioni">Maulucioni</a> y <a href="https://es.wikipedia.org/wiki/Usuario:Dorid%C3%AD" class="extiw" title="es:Usuario:Doridí">Doridí</a> - <span class="int-own-work" lang="en">Own work</span>, CC BY-SA 3.0, Link
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