DNA のメチル化: 細胞分裂後も引き継がれる DNA の修飾

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: DNA のメチル化とは
  2. CpG アイランドのメチル化
  3. DNA メチル化と老化

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概要: DNA のメチル化とは

DNA に含まれる塩基のうち、シトシン cytosine およびアデニン adenine にはメチル基が付加されることがある。これを DNA のメチル化という。図はシトシンのメチル化である (4)。


シトシンのメチル化

DNA メチル化は 細胞分裂後も引き継がれ、生物の発生、がん、エピジェネティクスなどに重要な役割を果たしている。


参考図 (Public domain): エピジェネティクス全般のページを作成予定。

エピジェネティクス

CpG アイランドのメチル化

CpG アイランドとは、シトシン (C) の次にグアニン (G) が現れる配列で、遺伝子の プロモーター に高頻度で認められる。哺乳類では、約 40% の遺伝子がプロモーター中に CpG アイランドを含む。CpG アイランドの p は、C と G の間のホスホジエステル結合を示している (参考: DNA の構造)。

以下の定義がよく用いられる。

  • 少なくとも 200 bp 以上にわたって GC 含量が 50% 以上。
  • GC 含量から期待される量の 60% 以上が CpG となっていること。

下の図 (3) は CpG アイランドの一例である。CpG アイランドが黄色の文字で示されており、左側は CpG アイランドを多く含むプロモーターで、開始コドン ATG が赤で示されている。右側は CpG アイランドの少ない遺伝子領域である。

CpGアイランド

CpG アイランドのメチル化は、一般に 転写量を減少させる。以下の 2 つのメカニズムが知られているが、2 番目がより重要と考えられている。

  1. メチル化された DNA には、転写因子などが結合しにくくなる。
  2. メチル化 CpG に結合するタンパク質が存在する (MBD; methyl-CpG-domain protein)。MBD はヒストン脱アセチル化酵素 HDAC などをリクルートし、クロマチンの構造をコンパクトにする。

がん細胞では、多くの遺伝子で過剰なメチル化が進行していることが知られている。


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DNA メチル化と老化

反復領域のメチル化が失われるため、基本的には老化とともにメチル化の程度は低下する (1)。ただし、特定の遺伝子はメチル化される (1)。このページでは、英語の hypermethylation を「メチル化」と書いている。何か良い翻訳語はあるのだろうか?

一般に、転写因子や DNA 結合タンパク質の CpG island がメチル化される傾向にある (1)。少ないメチル化で多くの遺伝子の発現を調節できるためと思われる。


遺伝子 コメント
Myod1 脳で老化とともにメチル化が進行する (1)。
老化、アポトーシスに関わる遺伝子のメチル化が変化する傾向がある (1)。
Tumor-suppressor genes も老化に伴ってメチル化される (1)。

> Centenarian のゲノムのメチル化を大規模に調べた論文 (2)。

  • Whole-genome bisulfite sequencing という手法を用いている。
  • Newborn と centenarian の CD4+ T cell を使った。
  • Centenarian genome は全体にわたってメチル化が少なかった。


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References

  1. Berdasco & Esteller 2012a (Review). Hot topics in epigenetic mechanisms of aging: 2011. Ageing Cell 11, 181-186.
  2. Heyn et al. 2012a. Distinct DNA methylomes of newborns and centenarians. Proc Natl Acad Sci USA 109, 10522-10527.
  3. By CFCF - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
  4. By Mariuswalter - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

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