グリセロールストックの作り方

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このページの最終更新日: 2024/12/15

  1. 概要: グリセロールストックとは
  2. プロトコール

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概要: グリセロールストックとは

グリセロール glycerol は図のような構造をもつ 3 価のアルコール alcohol で、グルコース から生合成される重要な代謝物質の一つである。このページでは、グリセロールを使って 大腸菌 を保存する方法 (グリセロールストックの作り方) を述べる。

代謝物質としてのグリセロールについては グリセロールのページ を参照のこと。

グリセロールの構造

大腸菌培養液にグリセロールを 終濃度 10 - 50% で加える と、グリセロールストックとして長期保存ができる。グリセロールが不凍液として働き、細胞内に氷結晶ができるのを防ぐためと考えられている。

研究室によってグリセロールの終濃度はさまざまであると思うが、極めて適当で良さそうである。

保存は -80°C だと思っていたが、以下の Molecular Cloning プロトコールによると-20°C である。これも状況に応じてで、-80°C ならば長期の保存が可能、短期なら -20°C で十分という感じ。

プロトコール

Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition (Amazon) から要点を抜粋する (1)。

作り方

  1. 0.15 mL の 100% グリセロールをオートクレーブする。
  2. 0.85 mL の logarithmic-phase の大腸菌培養液に加える。
  3. -20 °C で数年間は保存できる。凍結融解は避けること。
  4. ここから増やすときは、50 µL を 5 mL の LB 培地 で 37°C で振盪培養する。

プラスミドを長期保存したい場合には、グリセロールストックではなくて抽出したプラスミドを冷凍保存 (もちろん凍結融解は避ける) するのが最も良いようである (2)。


起こし方

グリセロールストックからの起こし方にも、さまざまなプロトコールがある。いずれも適当で良く、液体培地またはプレート培地に播種すれば生えてくる。

グリセロールストックを溶かしてから扱うプロトコールもあるが、私は何度も作るのが面倒なので、凍った状態から滅菌済みの白金耳で少量をかきとって液体培地に植えている。白金耳が熱すぎると生えてこないので、ここだけ注意する。直接プレートに塗っても普通に生えてくる。

グリセロールストックをそのまま液体培地に入れて殖やすと、プラスミドの収量が減るという経験則があるようだ (3)。保存中に大腸菌もわずかながら変化するので、一度プレートにまいてセレクションをかけた方が良い、ということか。

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References

  1. Green and Sambrook, 2012a. Molecular cloning: A laboratory manual, 4th edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press.

分子生物学関係のプロトコール集では、この本よりも有名なものはないだろう。

日本語版がない、電子書籍版もない、値段が高い、重いなど問題点は多々あるが、それでも実験室に必ずあるべき書。ラボプロトコールをまとめたりする時間を大いに節約することができる。

このサイトにあるプロトコールも、多くはこの本の記述を参考にしたものである。


  1. 大量のコンストラクトの長期保存. Link: Last access 8/28/2017.
  2. グリセロールストックからのプラスミド収量が悪い. Link: Last access 12/03/2021.

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