ベクター、タンパク質発現系に関する用語集

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このページの最終更新日: 2024/08/17

  1. 基礎的な用語
  2. 発現タンパク質につけるタグ
  3. 配列

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基礎的な用語

とくに ベクターとプラスミドの違い など、定義をしっかり押さえておこう。

単語 意味

ベクター
Vector

ホスト細胞内に、DNA 断片を運ぶものを vector という (In molecular biology, a vector refers to a vehicle that carries DNA fragments into a host cell. WANI Dictionary)。

以下は Oxford Dictionary of Biology の記述だが、プラスミドの状態で発現させる場合も多く、必ずしもホストのゲノム DNA に外来遺伝子を挿入するとは限らないので、良くない定義。この本は、知識が大学学部レベルぐらいに留まっていて、いろいろな例外を想定できない限定された説明が載っているように思う。

  • A vehicle used in gene cloning to insert a foreign DNA fragment into the genome of a host cell. For bacterial hosts several different types of vector are used: bacteriophages, artificial chromosomes, plasmids, and their hybrid derivatives, cosmids.

プラスミド
Plasmid

自然界に存在する環状 DNA で、バクテリアの accessory chromosome として働くもの (1)。分子生物学分野で、しばしば vector として使われる。

数 kb から数百 kb まで大きさは多様。抗生物質耐性、毒産生など様々な能力をバクテリアに付与する。

λ phage

λ ファージは、大腸菌に感染するバクテリオファージである。線状二本鎖の 48 Kb の染色体をもち、大腸菌に感染すると、相同組み替えを利用して自らの染色体を大腸菌ゲノム中に組み込む (この状態をプロファージ、このサイクルを溶原化サイクルという)。

このファージ染色体には、溶菌および増殖に無関係の領域が存在する。その部分を外来 DNA と置き換えることで、λファージをベクターとして利用することができる。

コスミド
Cosmid

BAC

YAC

発現タンパク質につけるタグ

通常、ベクターを使ってタンパク質を発現するときは、人工的な配列を付加した形で発現させる。この人工配列を タグ tag という。目的は、発現タンパク質の検出や精製を容易にすることである。

発現タンパク質に、抗体で認識できる epitope を追加することを、とくにエピトープタギング Epitope tagging という。この用語は教科書に出ているが、実際には単にタグということが多いように思う。

一般的に使われるタグには、以下のようなものがある。


単語 意味

6 x His

6 残基の ヒスチジン をタンパク質に付加する。小さいためにタンパク質の機能に影響を与えにくい。

ヒスチジンは、金属イオンと配位結合する性質がある (ヒスチジンのページを参照)。これを利用して、Ni などのカラムを使って精製することができる。

GST

グルタチオン-S-トランスフェラーゼも、発現タンパク質のタグとしてよく用いられる。主な特徴は以下 (2)。

  • GST 自身の水溶性が高いので、発現タンパク質を可溶性画分に持ってこれる可能性が高い。
  • 基質であるグルタチオンをリガンドとしたグルタチオン・セファロースによるアフィニティークロマトで、簡単に精製できる。
  • 28 kDa と大きいので、タンパク質の機能に影響を与える可能性がある。また、大腸菌では 100 kDa 以上のタンパクは発現しにくいので、大きめのタンパク質には向かない。
  • 発現させた後、プロテアーゼで GST タグを切除し、さらにそのプロテアーゼを除くのが一般的であり、これが少々手間である。

GFP

GFP 自体が蛍光を発するので、染色などをしなくてもタンパク質の発現を確認できるという利点がある。

Halo

配列

下の図は pUC19 という BioLabs の一般的なクローニングベクターのマップである。これを参考に、一般にベクターに含まれる配列について説明する。

pUC19のベクターマップ
単語 意味
ori プラスミドの複製起点。
抗生物質耐性遺伝子

AmpR

アンピシリンの耐性遺伝子。ラクタム環 lactum ring を分解する酵素 β-ラクタマーゼである。詳細は ampicilin のページ へ。

マルチクローニングサイト

MCS, multi cloning site. 様々な制限酵素 restriction enzyme による認識部位が集中した領域で、ここに遺伝子を挿入する。

lacz

ラクトースのページ にあるラクトースオペロンの説明を参照のこと。

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References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. 複数タグのススメ【2】~GST融合タンパク質編~ Link: Last access 2020/08/13.

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1. 基礎的な用語
2. タグ
3. 配列