糖新生:
ピルビン酸などからグルコースまたはグリコーゲンを合成する経路

UBC/aa_carbo_lipid/carbohydrate/gluconeogenesis

このページの最終更新日: 2020/02/14

  1. 概要: 糖新生とは
    • 糖新生が起こる場所 (組織)
    • 糖新生の調節
  2. 2 つの迂回経路
    • ピルビン酸キナーゼの反応
    • PFK の反応
  3. 各段階の反応

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概要: 糖新生とは

糖新生 gluconeogenesis とは、ピルビン酸 などから グルコース を合成する代謝経路のことをいう (1)。

グルコースまたは グリコーゲン を作る経路と定義されている場合もある (3)。

図 (2) に見るように、解糖系 glycolysis とかなりの反応を共有する。しかし、解糖を完全に逆流するわけではなく、下で詳しく述べるように、3 つの迂回経路を通る。グリコーゲンを最終産物とする場合は、迂回経路は 2 つになる。

糖新生の主な原料となるのは、

である (1)。ピルビン酸ももちろん原料になるし、反芻動物ではプロピオン酸が糖新生の重要な原料である。


糖新生が起こる場所 (組織)

糖新生が起こる主要な組織は 肝臓 liver であり、腎臓 kidney でも少し起こる。これらの組織での糖新生が、グルコースを必要とする脳や筋肉の代謝を支えている。


糖新生の調節

解糖系の調節 のページにまとめた。


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2 つの迂回経路

酵素は原則として逆方向の反応も触媒する。したがって、解糖系を順に逆流していけば糖新生が起こる。しかし、実際に糖新生は解糖の逆反応でなく、2 つの迂回経路を通っている。この理由は、以下の反応がエネルギー的に起こりにくいためである (1)。


  1. ピルビン酸キナーゼによるピルビン酸のリン酸化
  2. ホスホフルクトキナーゼによる F1,6-BP のリン酸化

上の図に書かれた 2 つの反応である。さまざまな説明があるが、以下はすべて同じことを表現している。

  • 自由エネルギーが F6P >> F1,6-BP かつ PEP >> ピルビン酸 である (差が大きいということ)。
  • これらの反応はエネルギー上不可逆であり、ゆえに解糖系の律速段階にもなっている。
  • PFK, PK は解糖系の律速酵素である。
  • グルコースとピルビン酸の自由エネルギーの差 ΔG は約 −84 kJ mol-1 であるが、その大部分はこれらの反応で放出される (1)。

なお、ヘキソキナーゼによるグルコースのリン酸化もエネルギー的に不可逆であるため、hexokinase でなく glucose 6-phosphatase という酵素が糖新生で登場する (1)。しかし、次の項の最後で述べるように、糖新生は多くの場合 G6P の産生までで、遊離のグルコースが生み出されることは少ない。そのため、上の図にはあまり強調されていない。


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各段階の反応

1. Pyruvate → oxaloacetate → phosphoenolpyruvate

迂回経路その 1。解糖でピルビン酸キナーゼのみによって触媒されるこの反応は、オキサロ酢酸を経由して を経由して行われるため、ピルビン酸カルボキシラーゼおよび PEPCK の二つの酵素を必要とする (1)。

図 (4) では、TCA 回路の左上あたりにこの反応が書かれている。



まず、ピルビン酸カルボキシラーゼがピルビン酸に二酸化炭素 CO2 を付加する。


ちなみに、この反応は TCA 回路 にオキサロ酢酸を補給する 補充反応 alaplerosis と同じ であり、ピルビン酸カルボキシラーゼは ミトコンドリア に局在するタンパク質である。解糖系は細胞質にあるので、ピルビン酸は MCT1 などによってミトコンドリアに輸送されている。

次に、脱炭酸しつつリン酸基が付加される。この反応は、ホルホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ phosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK) に触媒される。カルボキシキナーゼは珍しい名前だが、図をみると脱炭酸 (カルボキシラーゼの反応) とリン酸化 (キナーゼの反応) を両方行なっていることがわかるだろう。

この酵素は細胞質にあるため (1)、オキサロ酢酸はミトコンドリアから細胞質に輸送されなければならない。オキサロ酢酸は malate に変換されて状態で細胞質に輸送され、細胞質で再びオキサロ酢酸に戻される。

教科書レベルでは触れられていないことが多いが、PEPCK にはミトコンドリアに局在するアイソフォームもある。詳細は PEPCK のページ へ。



この反応では、いったん付加した炭酸基 -COO- をのちに除去するというステップを踏んでいる。無駄のように思えるが、これによってエネルギー的に反応を起こりやすくしているのである (1)。この方式は、TCA 回路、ペントースリン酸回路 および 脂肪酸の生合成 でも使われている。


2. PEP → 2-Phosphoglycerate

ここからしばらくは、解糖系の逆反応である。解糖系のページの図をそのまま貼っておくので、右から左に反応が進むと理解してほしい。これは解糖系の 9 番目の反応。



3. 2-Phosphoglycerate → 3-Phosphoglycerate

解糖系の 8 番目の反応、リン酸基の分子内転移。

4. 3-Phosphoglycerate → 1,3-Biphosphoglycerate

解糖系の 7 番目の反応。1 の反応に加え、ここでも ATP が使われる。糖新生はエネルギーを消費する反応である。

5. 1,3-BPG → Glyceraldehyde-3-phosphase

解糖系の 6 番目の反応。GAPDH に触媒されるこの反応は 2 段階 なので注意する。中間体として、ステップ 4 と同じ 3-phosphoglycerate が出てくるが、おそらくこれは GAPDH に結合した状態で一瞬だけ生じるものなので、ステップ 4 のものとは混じり合わないのだろう。

6. GAP → Fructose-1,6-biphosphate

解糖系の 4 番目の反応。ここでは書いていないが、DHAP は GAP の異性化によって作られる。解糖系のページの反応 5 を参照のこと。ここで、2 分子の C3 が会合し、C6 の糖を生み出す。

7. F1,6-BP → Fructose-6-phosphate

迂回経路その 2。加水分解反応。Pi は PO43- である。

これは解糖系の 3 番目の反応で、PFK に触媒される律速反応である。糖新生では、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼがこの反応を触媒する。


8. F6P → Glucose-6-phosphate

これも解糖系の逆反応。解糖系ではステップ 2 である。


9. G6P → Glucose

上でも述べたように、G6P は多くの場合グルコースにならない (1)。大きな理由の一つは、グルコースは (GLUT により?) 細胞外に流出してしまう ことである。G6P は多くの場合グリコーゲンになる。

糖新生は、原則として細胞がグルコースを必要とするときに起こる。それなのに、グルコースが細胞外に出てしまっては本末転倒である。そのため、G6P からグルコースを作る glucose-6-phosphatase は、肝臓および腎臓のみで発現している (1)。これらの器官は、他の臓器に血液を介してグルコースを供給するという役割があるためである。

しかも、glucose-6-phosphatase は小胞体タンパク質であり、ここに G6P を供給するにはトランスポーターが必要である (1)。これも、グルコース合成を防ぐ一つの手段と考えられる。


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References

  1. Berg et al. 2006a. (Book). Biochemistry, 6th edition.

Berg, Tymoczko, Stryer の編集による生化学の教科書。 巻末の index 以外で約 1000 ページ。

正統派の教科書という感じで、基礎的な知識がややトップダウン的に網羅されている。その反面、個々の現象や分子に対して生理的な意義があまり述べられておらず、構造に偏っていて化学的要素が強い。この点、イラストレイテッド ハーパー・生化学 30版 の方が生物学寄りな印象がある。

英語圏ならば学部教育向けにはややレベルが高い印象。しかし、基本を外さずに専門分野以外のことを 研究レベルで 英語で読みたいという日本人には非常に適しているだろう。輪読とかにも向いているかもしれない。翻訳版はストライヤー生化学として売られている。


  1. Regulation of Glycolysis & Gluconeogenesis Link. Labeled for "reuse" in Google image search.
  2. Gluconeogenesis. Link: Last access 2018/11/17.
  3. "Amino acid catabolism revised" by Mikael Häggström - http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Amino_acid_catabolism.svg. Licensed under CC0 via Wikimedia Commons.

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