ヘキソキナーゼ: 解糖系第1の反応を触媒する律速酵素
UBC/protein_gene/h/hexokinase
このページの最終更新日: 2024/12/15- 概要: ヘキソキナーゼとは
- HK の活性調節
- 反応生成物 G6P による調節
- インスリンによる調節
- HK とグルコキナーゼ
- HK の反応は本当に不可逆か
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概要: ヘキソキナーゼとは
ヘキソキナーゼ (hexokinase, HK) は D-glucose, D-mannose などのヘキソースをリン酸化する酵素である。解糖系 glycolysis の最初の反応を触媒する。
基質 |
Km |
D-グルコース |
Km = 0.05 mM 程度 (5)。血液中のグルコース濃度 (血糖値) が 3 - 6 mM 程度であることを考えると、グルコースに対する親和性は高いと言える。つまり、血糖値が低くても常に働いているということ。 |
D-マンノース |
|
フルクトース |
酵素番号 は EC 2.7.1.1 である。このページでは HX という略号を使っていたが、HK の方がよく用いられるため、HK に変更した。
トランスポーター GLUT によって細胞内に取り込まれたグルコースは、HK によって 6 位でリン酸化され G6P となる。このリン酸基の付加によってグルコースのエネルギー準位が上がり (つまり安定性が下がり)、その後の代謝反応を受けやすくなる。
ATP のエネルギーをグルコースに付与している反応で、解糖系の以降の反応を進めるための初期投資であるとも考えることができる。
この反応は、
> ヘキソキナーゼ活性には Mg2+ が必要である。
- 上の図では単に ATP として書いていないが、細胞内では ATP はマイナスイオン ATP4- であり、これに Mg2+ が配位結合している。
- 他の多くのキナーゼでも同様であるが、HK は実際にはこの複合体を基質にする。
- OH 基も ATP も負電荷をもっており互いに反発するが、Mg2+ が ATP の負電荷を弱めることで ATP がグルコースに近づきやすくなる (求核攻撃が促進される)。
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ヘキソキナーゼの活性調節
反応生成物 G6P による HK 調節
ヘキソキナーゼは、反応生成物であるグルコース-6-リン酸 (G6P) によって阻害される。これは典型的なネガティブフィードバックであるが、肝臓で発現するグルコキナーゼの存在を考えた場合、グリコーゲン 合成との関連で深い意味をもってくる。
> G6P は HK が触媒する反応の生成物である (1)。筋肉で HK を阻害する。
- G6P の細胞内濃度が増える → 次の律速段階である PFK の活性が低下している。
- PFK は解糖系の main regulator である。ホルモン、ATP など様々な分子で活性が制御される。
- この阻害は
HK が PFK の制御を受けて、上流の流れをコントロールしている と解釈できる。
インスリンによる HK の調節
インスリン insulin はさまざまなレベルで代謝を調節する重要なホルモンである。原則として同化作用 anabolic action を示す。
HK II の転写が、インスリンによって正に制御される。
HK とグルコキナーゼ
肝臓には、hexokinase と同じ反応を触媒する
HK の反応は本当に不可逆か
HK の反応は、一般に生理的条件下では不可逆とされている (4)。しかし、実は可逆的ではないかという議論が昔からある。
古くは 1954 年に Gamble & Najjar が C14 標識を使いこの反応は可逆的かもしれないと述べた (2)。
2018 年、ミトコンドリアに結合したヘキソキナーゼが、グルコース欠乏条件下で逆方向の反応を触媒し、ATP をミトコンドリアに供給しているかもしれないという論文が発表された (3)。これは CC BY の Cell Rep なので、図も引用しておこう。
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References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
Gamble & Najjar, 1954a. Hexokinase reversibility measured by an exchange reaction using C14-labeled glucose. Science 120, 1023-2014.Depaoli et al. 2018a. Real-time imaging of mitochondrial ATP dynamics reveals the metabolic setting of single cells. Cell Rep 25, 501-512.- 糖質の異化によるエネルギー獲得. Link: Last access 2022/03/23.
Depaoli et al. is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.
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