牛乳の主要な糖 ラクトース (ガラクトース + グルコース):
構造、代謝、ラクトースオペロンなど
UBC/aa_carbo_lipid/carbohydrate/lactose
このページの最終更新日: 2024/02/14広告
概要: ラクトースとは
ラクトース lactose は図のような構造 (1) の二糖 disaccharide で、β-ガラクトース β-gatalctose および β-グルコース β-glucose が 1,4-β-glycoside bond で結合したものである (2)。
関連するページには次のようなものがある。
ラクトースオペロン
大腸菌では、ラクトースの分解に関係する一連の遺伝子の転写 transcription がまとまって制御されている。これを
ラクトースオペロンは、遺伝子の発現制御機構に関する研究で重要な役割を果たしたオペロンであり、また IPTG によるタンパク質の発現 などの実験でも応用されている。
ラクトースオペロンの概要は、以下の図の通り (6)。
- ラクトースが存在しないとき、リプレッサー (赤) が発現しており、
operator に結合して lacZ、lacY および lacA 遺伝子の転写を阻害している。 - ラクトース (緑の丸) はリプレッサーを阻害する。したがって、ラクトースの存在下では lacZ、lacY および lacA 遺伝子が転写される。
- lacZ、lacY および lacA 遺伝子はいずれもラクトースの代謝に関わる タンパク質 をコードしている。
つまり、ラクトース自身がそれを代謝する遺伝子のスイッチを入れるようになっているわけである。
図には含まれていないが、以下のような点もラクトースオペロンの理解に重要である (5)。
- リプレッサーは遺伝子 lacI にコードされ、プロモーター PI の制御を受ける。
- リプレッサーが結合するのは lacO operator で、これはプロモーター lacP による lacZ などの 3 遺伝子の転写を抑制する。
- 実際にはリプレッサーに結合するのはラクトースではなく
allolactose であり、β-galactosidase がラクトースから allolactose への変換を触媒する。 - Allolactose とは図 (7) のような構造のラクトース関連化合物で、D-ガラクトースとD-グルコースが β1-6 グリコシド結合した物質である。
ラクトースオペロンに含まれる遺伝子の特徴は次の通り。
lacZ |
少なくとも以下の 3 つの活性をもつ酵素である。
|
lacY |
|
lacA |
アセチル CoA から β-ガラクトシドの 6 位の炭素にアセチル基を転移させる酵素。ラクトース代謝における役割ははっきりしていないが、permease によって取り込まれる物質のうち、ラクトース以外の有害物質を無毒化すると考えられている。 なお、ガラクトシド galactoside はガラクトースを含む配糖体である。 |
乳製品のラクトース含量
酵素
そのような人がラクトースを摂取すると、ラクトースは分解されないまま結腸 colon まで届き、微生物によって乳酸およびメタン CH4 に分解される。メタンは「お腹にガスがたまる状態 flatulence」を引き起こす。また、乳酸は浸透圧のために結腸に水を呼び込み、下痢 diarrhea の原因になる (2)。
対処法としては lactose free のミルクを飲むほか、酵素 lactase をミルクと一緒に飲む方法もある。詳細は 牛乳 のページにまとめた。
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References
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- By Wobble (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
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- Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
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