シトクロムP450: 解毒やステロイドホルモン合成を行う酵素

UBC/protein_gene/c/cytochrome_p450

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: シトクロム P450 とは
  2. シトクロム P450 とステロイドホルモン合成

広告

概要: シトクロム P450 とは

シトクロム P450 (Cytochrome P450; CYP) は、小胞体およびミトコンドリア に存在する酸化還元酵素のファミリーである。見慣れない分子を見つけ出して、酸素を付加する 機能をもつ (3)。なお 450 は p21 や p53 のような分子量ではなく、450 nm に吸収極大があることを意味する。

酸素 を付加することには、以下のような生理的意義がある (3)。

  • 酸素付加によって分子は水に溶けやすくなり、身体から排出しやすくなる。
  • 他の解毒酵素による変換を受けやすくなる。

物質に酸素を付加するのは、化学的に難しい反応である (3)。シトクロム P450 は、ヘム基 heme group の 鉄原子 を使って酸素付加を行っている。

この反応は、生体を化学的に防御する重要な機構であり、ヒトは約 60 個、植物は数百のシトクロム P450 遺伝子をもっている。

反応機序

シトクロム P450 は、原則的に以下のようにして分子に酸素を付加する (4、図もこの論文から)。

シトクロムP450の反応メカニズム
  1. 一番上が resting state である。Fe3+ は、システインの S 水分子 と弱く結合している。ここから右回りに反応が進む。
  2. 基質 RH が水分子を置換する形で結合する。
  3. 鉄原子が Fe2+ に還元される。これに必要な電子は、シトクロム P450 リダクターゼ によって NADPH から供給される。
  4. Fe2+ は、酸素原子と結合して再び Fe3+ となる。基質とも結合している状態の錯体である。
  5. さらに電子および水素原子が供給され、脱水反応が起こる。
  6. RH から水素が引き抜かれ、基質ラジカルを生成。
  7. 基質ラジカルにヒドロキシル基 -OH を結合させ、ROH を形成する。
  8. シトクロム P450 は、これで resting 状態に戻る。

縁の中央を横切る矢印は、バイパスルートを示しているようである (4)。

多様な基質を酸化するため、その機能も多岐にわたるが、有名な機能としては以下のものが知られている。

異物代謝 (解毒作用)

肝臓 で脂溶性の異物を酸化し、水溶性にすることで排出しやすくする。

ステロイド代謝

コレステロール から性ホルモンを作るなど。


広告

シトクロム P450 とステロイドホルモン合成

副腎のステロイドホルモンは コレステロール から生合成される。P450 は、その最初の反応である炭化水素基の除去を触媒する (図、ref 1)。

この反応を触媒するのは遺伝子 CYP11A1 にコードされる P450 であり、とくに cholesterol side chain cleavage enzyme (P450scc) と呼ばれる (2)。

その結果生じる プレグネノロン pregnenolone は、コルチゾル、アルドステロンなど多くのホルモンの前駆体である。

コレステロール側鎖の除去とプレグネノロン合成

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。

References

  1. By Calvero - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
  2. Amazon link: ハーパー生化学 30版.
  3. PDBj 入門 シトクロム p450. Link: Last access 2023/12/26.
  4. Belcher at al., 2014a. Structure and biochemical properties of the alkene producing cytochrome P450 OleTJE (CYP152L1) from the Jeotgalicoccus sp. 8456 bacterium. J Biol Chem 289, 6535-6550.

Figures are cited from open-access articles distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.

関連書籍