フラボノイド: 定義、構造など
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概要: フラボノイドとは
フラボノイド flavonoid とは、広義では以下の 3 つのサブグループの総称である (1)。狭義では、バイオフラボノイドを意味する。
バイオフラボノイド |
フラボン (2-phenylchromen-4-one, 図は public domain) から合成される物質を指す。 |
イソフラボノイド |
イソフラボン (3-phenylchromen-4-one, 図, public domain) から合成される物質を指す。 構造や名前からわかるように、イソフラボンはフラボンの異性体である。炭素番号入りの図も載せておこう。フラボンでは 2 位についているフェニル基が 3 位についている。4-one は 4 位の C=O すなわちケトン基を示す。フラボンのフェニル基を 2 位から 3 位に移動させる酵素 isoflavone synthase (IFS) は、イソフラボン合成経路の重要な酵素である。 エストロゲン に構造が似ているため女性ホルモン様作用を示す。様々な健康促進効果が知られている。 |
ネオフラボノイド |
4-phenylcoumarin (図, public domain) から合成される物質を指す。 |
フラボノイドの基本構造は、stilbene が C6-C2-C6 である以外は、C6-C3-C6 である (図、文献 3)。この論文では、フラボノイドには以下の 12 のサブグループがあるとしている: chalcones, stilbenes, aurones, flavanones, flavones, isoflavones, phlobaphenes, dihydroflavonols, flavonols, leucoanthocyanidins, proanthocyanidins, anthocyanins。
さまざまな化学修飾などを含めて考えると、これまでに 9,000 以上のフラボノイドが同定されている。
フラボノイドの生理活性
生理活性をもつフラボノイドは数多く知られている。以下、例を挙げておく。有名なフラボノイドのリストと考えてもよい。
フラボノイドの多くは、抗酸化作用などによって植物を守る作用がある。シグナル分子として、植物自身や昆虫に作用するものも多い。
アントシアニン |
赤色から紫色を呈する。ブルーベリーなど。 |
健康促進、寿命延長効果を示すイソフラボノイド。赤ワインなどに多く含まれる。スチルベンファミリー。 |
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ダイズ Glycine max から発見されたイソフラボノイド。このダイゼインのほか、genistein と glycitein がダイズに多く含まれるフラボノイドである。 |
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フラボノイドの生合成
植物では、フラボノイドはフェニルプロパノイド生合成経路 phenylpropanoid metabolic pathway によって合成されるのが一般的である。
この経路の最初の部分、フェニルアラニン phenylalanine からケイ皮酸 cinnamic acid を経て クマル酸 coumaric acid が合成され、さらにそれが coumaronyl-CoA に変換されるまでを、general phenylpropanoid pathway という。
その後、さまざまなフラボノイドの生合成経路に分岐する。フラバノンからフラボンおよびイソフラボンへの分岐も、この代謝経路の重要な分岐点である。
文献 3 にはフェニルプロパノイド経路の全体像が載っているが、general な部分を抜き出してみる。作用する酵素は phenylalanine ammonia lyase (PAL), cinnamic acid 4-hydroxylase (C4H) および 4-coumarate: CoA ligase (4CL) である。
図を見ればわかるように、反応は比較的シンプルである。PAL はフェニルアラニンの脱アミノ化を行う酵素で、生成物はケイ皮酸 cinnamic acid である。これは primary metabolite から secondary metabolite とのゲートウェイという意味でも重要な反応である。
二番目の反応を行う C4H は P450 でケイ皮酸を酸化 (ヒドロキシ基を付加) し、クマル酸 coumaric acid を生成する。
4-coumarate CoA ligase (4CL) は、クマル酸に CoA を付加する。この反応で生じた 4-クマロイル CoA がマロニル CoA と結合し、そこから様々な経路に枝分かれしていくことになる。
例として、ナリンゲニンの生合成経路 (2) も載せておく。
4-クマロイル CoA がマロニル CoA と結合する反応は、やや複雑である。この反応は chalcone synthase (CHS) によって触媒され、chalcone が生じるが、この反応の遷移状態にある分子に chalcone reductase (CHR) が作用すると、6'-deoxy-chalcone が生じる。Chalcone および 6'-deoxy-chalcone からは、それぞれ異なるフラボノイドが合成される。
Chalcone から数段階で合成されるナリンゲニン naringenin は、アントシアニン、カテキンなどの重要な前駆体である。
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References
- Flavonoid, WANI Dictionary. Link: Last access 2024/06/14.
- ja:User:Ykgt - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=130090438による
Liu et al., 2021a. The flavonoid biosynthesis network in plants. Int J Mol Sci 22, 12824.
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