パラホルムアルデヒド – 染色実験前の組織固定:
構造、原理など

reagents/p/pfa
2018/03/22 更新

  1. 概要: パラホルムアルデヒドとは
    • 固定の原理

  2. PFA による組織固定のプロトコール
    • 濃度・調製方法
    • 作り置きの問題
    • 固定時間

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概要: パラホルムアルデヒドとは

ホルムアルデヒド は図のような構造 (4) をもつ物質で、これが長く繋がったものがパラホルムアルデヒド PFA である。C=O の2重結合のひとつが外れ、酸素原子同士で -O(CH2)-O(CH2)-O(CH2)-O- のように繋がっている。

水に溶かすと重合が外れ、ホルムアルデヒドの水溶液となると思うのだが、これが書かれた文献はまだ探し中。もしかすると、一部は重合状態のまま溶けているのかもしれない。



いわゆる ortho-, meta-, para-, ipso- のパラとは違うので注意すること。ホルムアルデヒドは刺激臭をもつ無色の有毒気体であるが、PFA は固体である。

以下のような実験で、通常 PFA による組織固定を用いる。


固定の原理

4% パラホルムアルデヒド溶液が染色実験で組織を固定するためによく使われる。ホルマリン formalin は約 35% のパラホルムアルデヒド水溶液のことをいうので、「10% ホルマリンで固定」という表現も頻繁に使われる。

PFA は 外れやすい水素原子 が近くにあると脱水縮合を起こす性質をもっている (図, R1 と R2 は官能基)。1 分子の PFA が図のように 2 つの分子を繋げてしまうわけである。


タンパク質では、アミノ末端と塩基性タンパク質の側鎖に存在するアミノ基 が架橋される (2)。アミノ基をもたない核酸 nucleic acid、脂質 lipid および糖鎖には影響しない。



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パラホルムアルデヒドによる固定のプロトコール

考慮すべき点は、濃度と固定時間である。


濃度・調製方法

基本は 4% PFA で、溶媒には PBS などの 緩衝液 が使われる。組織が柔らかい場合は、0.5% ぐらいから始めて、次第に濃度を上げていく方が形が綺麗に保たれる場合がある。

調製の際の注意点は以下の通り。

  • PFA を溶かすと pH は酸性に傾く。NaOH を加えて中性付近に戻し、かつ 60°C 程度に温めないと溶けない。
  • 沸騰させると、formaldehyde が気化して有害であるとともに、溶液中の濃度も変わってしまう。以前、早く作ろうとして電子レンジで加熱し、喉を痛めたことがある。
  • NaOH は少量でよく、また濃度を厳密に合わせる必要もない。例えば 8% PFA ストック溶液を作る際には、5 から 10 N の NaOH を 50 µL 入れる (5) ぐらいの適当さでよい。


作り置きの問題

基本的に用事調製とされているが、溶けるまでに時間がかかる試薬なので、作り置きをしたくなる。掲示板からの関連情報 (6)。

  • 作り置き、小分けして -20°C 保存などで問題なし、という声が多い。
  • 分解産物としてギ酸が生じるので、pH を目安にするというのはいいアイディア。

固定時間

一般的には、PFA での固定は必要最小限にしておくのが望ましいとされる。とくに免疫染色の場合、固定時間が長すぎると、抗体によって認識される部位が架橋されてしまいシグナルが低下する恐れがある。

最適な時間はケースバイケースだが、組織の場合は O/N、細胞では 30 分未満が一般的であろう。

  • 骨組織に特徴的な TRAP 活性に関する議論もある (3)。

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References

  1. 有機化学美術館, ホルムアルデヒドの話: Link.
  2. 蓮井 2012a. 免疫組織化学の基礎と応用. V. 組織・細胞の固定. 鹿児島大学レポジトリ. Link.
  3. BioTechnical フォーラム. PFA での長時間の組織の固定、TRAP 失活. Link.
  4. By Wereon - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
  5. 名古屋大学 医学部学生研究会 プロトコール. Link: Last access 2018/03/22.
  6. BioTechnical フォーラム. Link: Last access 2018/03/22.