HE 染色: 組織の全体像を把握するための基本的な染色
UBC/experiments/tissue_staining/hematoxylin_eosin
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: H & E 染色とは
- ヘマトキシリンの構造と染色原理
- エオシンの構造と染色原理
- 染色例
- 一般的な「細胞」
- 粘液腺
広告
概要: HE 染色とは
ヘマトキシリン・エオシン染色 (HE 染色) は、基本的な組織染色法の一つで、光学顕微鏡レベルで組織の全体像を把握することを目的とする (1)。
組織切片を顕微鏡で観察すると、基本的にはほぼ無色であり、構造をよく見ることができない。そこで、HE 染色のような「基本的な」染色法が必要になるわけである。
ヘマトキシリン、エオシンという 2 種類の染色液を使う。 なお英語での発音は hematoxylin [hiːmət
ヘマトキシリンの構造と染色原理
酸化されて生じた
ヘマトキシリン |
ヘマテイン |
なお、実際に荷電しているのはヘマテイン-金属錯体の金属部分である。この錯体を生じさせるために、HE 染色液はカリウムミョウバンや硫酸アルミニウムを含んでいる (1)。
Hematein-Al3+錯体が実際の染色効果を発揮していることが示唆されているが、錯体の構造は実はまだ分かっていないようである。
核、石灰部、軟骨組織、細菌、粘液などがよく染色される。塩基性の色素であり、酸性 acidic or basophilic の標的を染色するとも言える。しばしば basiphiric staining などとも言われる。
エオシンの構造と染色原理
Eosin B |
Eosin Y |
ヘマトキシリンとは異なり、
pH が低下すると、過剰なプロトンのために組織はより強く正に荷電し、エオシンの負電荷と強く結合するようになる。このため、溶液に少量の酢酸を加えて染色性を上げることができるが、pH を下げすぎると沈殿を生じ、染色性は低下する (1)。
酸性の色素であり、塩基性の標的を染色するとも言える。したがって、染まった構造に対しては
- basic
- acidophilic
- eosinophilic
という言葉がよく使われる。しばしば acidophiric staining などとも言われる。
染色例
実際の染色例を、組織の種類ごとにまとめる。
一般的な「細胞」
- 核は、負に帯電した 核酸 やリボソームを多く含むため、ヘマトキシリンで青っぽく染まる。
- 核小体 nucleolus はさらに青くなる。
- 細胞質は正電荷をもつ物質が多いので、エオシンで赤っぽく染まる。
- 細胞膜 は、表面に負電荷をもつ糖タンパク質が多いために青っぽく染まる。高倍率でないと見にくい。
乳がん 組織の HE 染色像 (6)。紫色の丸い部分が核である。細胞が密集している部位は、核も多いために低倍率では青っぽく見える。 この論文では、核と細胞質を見分けるソフトの開発を行なっている。 |
粘液腺
- よって、粘液腺は空胞のように見える。
- 消化管では、食道下部、胃 の上部 (噴門部) および大腸に粘液細胞が多く、小腸には少ない。
広告
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。
References
- Wako HE 染色試薬マニュアル. Pdf link.
- "Hämatoxylin" by NEUROtiker (talk) - Own work. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
- "Haematein". Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
- "Eosin Y". Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
- "Eosin B". Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
- Veta et al. 2013a. Automatic nuclei segmentation in H&E stained breast cancer histopathology images. PLoS ONE 8, e70221.
- 実践観察の指針:魚類マクロ組織標本の観察. Link: Last access 2018/02/20.
Veta et al. (2013a) is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.