実験試薬の廃棄: どの薬品を下水に流して良いのか

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: どの薬品を下水に流して良いのか
  2. アメリカの EPA に関する内容
  3. 各大学の事例
    • Cornnel University
    • Montana State University
    • その他

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概要: どの薬品を下水に流して良いのか

バイオ系または化学系の実験では、さまざまな廃液が出る。下水に流して良いもの、しかるべき処理機関に引き取ってもらわなければならないものなど、その処理は複雑である。

大学なり研究所なりでガイドラインがあるはずだが、このページでは最大公約数的なアイディアを得るため、複数のガイドラインを参考にして情報をまとめた。

基本的には、ガイドラインは環境の保護を目的としているが、同時に下水に流して良い薬品のルールを定めることで、処理費用が無駄に高騰しないという目的も書かれているものが多い。


> 2007 年、ワシントン大学の教授が試薬の不適切な廃棄で処分された例 (1)。

  • 脳科学の研究室。エチルエーテルの廃棄料が高いので、2006 年に水道に廃棄。
  • 5 年の投獄、250,000 ドルの罰金の可能性がある罪。結局 3 年の保護観察、80 時間の community service および 5,000 ドルの罰金。

アメリカの EPA に関する内容

アメリカでは州の権限が大きいので、基本的に国と州の法律の両方がある。これらに基づき、大学や研究所が独自のルールを決めている場合が多いだろう。

関係する国の法律は The Environmental Protection Agency (EPA) である。この項目では、各大学・研究所の事例から EPA によって指定される部分のみを抜き出してまとめる。

ただし、国際的な取り決めとして「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS) というものもあり、もしかするとこちらに準拠した方がいいのかもしれない。場合によっては更新。

まず大きなくくりとして、その薬品が hazardous であるかどうか という点がある。hazardous かどうかは、以下の 4 点で決まることが多いようである。


引火性
Ignitable

EPA では、引火点が華氏 140 度以下 (flammable)、または酸化剤として燃焼を促進する薬品を引火性としている (1)。

  • Flammable の例: エタノール、氷酢酸、トルエン、キシレン、アセトン、エーテルなど
  • Oxidizing の例: 硝酸、過塩素酸、過酸化アンモニウム、二クロム酸カリウム potassium dichromate、硝酸銀、過酸化水素、ate で終わる化合物、per で始まる化合物。

腐食性
Corrosive

EPA の定義では、pH が 2 以下または 12.5 以上の薬品をいう (1)。

  • 腐食性の酸の例: 塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸など
  • 腐食性の塩基の例: 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど。hydroxide で終わるものは基本的に腐食性。

反応性
Reactive

どこに定義があるのか微妙。

毒性
Toxicity

これも微妙。濃度によると思うのだが、統一的な定義があるのかどうか。

各大学の事例

Cornell University (Ref. 1)

関係する法律は The Environmental Protection Agency (EPA) regulations がアメリカの法律、New York Department of Environmental Conservation (DEC) がコーネル大学のあるニューヨーク州の法律。

アメリカでは州の権限が大きいので、基本的に国と州の法律の両方がある。これらに基づき、大学や研究所が独自のルールを決めている場合が多いだろう。

Hazardous と regulated という 2 つのカテゴリーがあり、hazardous かどうかは EPA が定義している。

> 以下に該当する場合 regulated である (1)。

  • EPA または 40 CFR 261 Subpart D & NYCRR 371 に hazardous と指定されている場合。
  • 上記の EPA 定義で ignitable or corrosive。
  • 金属粉などの reactive な物質と書かれているが、ここには法律による定義は載っていない。
  • Toxic の定義は州法が引用されている。ppm で決まっている。

Hazardous でないものは、普通のゴミ箱や下水に捨てて良いと書かれている。また、空き瓶 empty container はこの規定の例外で、empty の定義はもとの量の 1% 未満である。捨てる前に 3 回洗えと書いてある。

手袋、紙、チップは、毒性の強いものがついていない限り普通のゴミ箱でよい。

> 下水に捨てて良いもの (1)。

  • 糖、希釈された生理食塩水および non-toxic salt
  • リン酸または炭酸ベースのバッファー
  • 使用する濃度の organic buffer
  • 非感染性の洗浄液
  • 水溶性ビタミン
  • 少量の界面活性剤
  • 重金属などの毒性の高い物質を含まない、中和された酸または塩基

Montana State University (Ref. 2)

Safe list に載っているものだけ下水に流してよく、その下水もちゃんと浄水場に行くもの。そのへんの池などにぶちまけてはいけない。

流して良い量は、一般に数百 g または数百 mL/day。Safe list にはたくさんの薬品が記載されているので、一般的と思われるもののみをまとめる。

  • 無機物はイオンで指定。Ca, Fe, H, K, Li, Mg, Na, NH4, BO3, Br, CO3, Cl, SO4, PO4 などのイオン。ただし pH 5.5 - 9.0 に中和してから。
  • 以下の有機溶媒は、100 mL までなら OK。メタノール、エタノールなど。アルコールおよびその化合物は炭素数で規定されている。
  • アミン、脂肪酸、ケトン、エステルなども炭素数で規定。

その他

> UC San Diego はやや厳しい (3)。

  • 酸は pH 2 - 5 なら中和して流しで良いが、2 以下の酸や 12.5 以上の塩基は中和してはいけない。
  • エタノールは濃度 24% 以下が nonhazardous である。しかし希釈してこの濃度以下にするのはダメ。
  • ホルムアルデヒドは濃度 2.9% 以下が nonhazardous である。しかし希釈するのはダメ。

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References

  1. Chemical disposable training, 2011. Cornell University EH & S.
  2. Montana State University: Lab waste drain disposal. Online slide.
  3. Sewer Disposal: What Can Go Down the Drain? Link: Last access 2020/02/05.

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