化学結合の一覧

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11-12-2017 updated

  1. 概要
  2. エステル結合
    • カルボン酸エステル
    • チオエステル
    • リン酸エステル
  3. エーテル結合
  4. グリコシド結合
  5. アミド結合
    • ペプチド結合


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概要

グリコシド結合のように、結合を構成する物質に着目した名前と、エーテル結合のように結合部分の構造に着目した名前がある。

結合につけられる名前は一つではないということ。グリコシド結合は、構造からするとエーテル結合であり、エステル結合でもある。

ここでは結合の特徴を簡単に表にまとめ、ページの下部で詳しく解説する。

エステル結合 酸とアルコールが脱水縮合。
エーテル結合 R-O-R という構造。
グリコシド結合 糖とその他の物質が脱水縮合。
アミド結合 オキソ酸とアミンが脱水縮合。ペプチド結合もこの一部。

エステル結合: Ester bond

エステル ester とは 酸とアルコールとから水を分離して縮合生成する化合物、および理論上これに相当する構造をもつ化合物をいう (1)。エステル結合とは、脱水縮合に関わった部分のことである。

非常に広い定義であり、酸の種類に応じてカルボン酸エステル、リン酸エステルのように分類されている。


カルボン酸エステル

-COOH 基をもつカルボン酸が酸として使われる場合に生成するのがカルボン酸エステルである。アルコールまたはフェノールと反応する。カルボン酸エステルの場合、脱水縮合に関わった部分である -(C=O)-O- がエステル結合 である。

生じる水 H2O の酸素は、もともとカルボキシル基にあった OH によるものである。アルコールの -OH からは H が外れ、O がエステル結合中に残る。



酸素のエステル結合は、(C=O)-O の部分が共鳴している (2)。以下に述べるチオエステル結合はこの共鳴構造をとれないため、酸素のエステル結合よりも不安定である (= エネルギー準位が高い)。したがって、チオエステル結合からエステル結合にアシル基を渡すという CoA を介した反応が成り立つわけである。

以下のようなカルボン酸エステルが生理的に重要である。


チオエステル結合

メルカプト基 mercapto group (-SH, thiol group とも) をもつ物質を チオール thiol という。英語での発音は [θʌiɑl]。-SH とカルボン酸が、上記のように脱水縮合したものをチオエステル結合という。酸素のかわりに S が入っているだけである。



コエンザイム A は分子末端に -SH 基をもち、アシル基とチオエステル結合を形成する。生成する物質はエネルギー準位が高くなり、代謝反応が起こりやすくなる。


リン酸エステル

酸がリン酸の場合、リン酸エステル結合 phosphate ester bond と呼ばれる。


リン酸には -OH → -O- + H+ という構造が 3 個ある (つまり 3 価の酸である) ため、3 分子までのアルコールとエステル結合を形成できる。図は 1 分子のアルコールとエステル結合を形成した リン酸モノエステル phospho monoester である。同様に、リン酸ジエステルとリン酸トリエステルがある。

DNA は、リン酸の 3 つの -OH → -O- + H+ のうち 2 つがデオキシリボースとエステル結合を形成して繋がった分子である (参考: 核酸の概要)。つまり、ホスホジエステル結合 phosphodiester bond が DNA の骨格を形成していると考えて良い。


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エーテル結合: Ether bond

英語の発音は [iːθər]。R-O-R' という構造の化合物をエーテル ether、エーテルに含まれる -O- の部分をエーテル結合という

なお、R と R' が同一ならば単一エーテル、異なっていれば混成エーテルという (1)。また R と R' が繋がって、分子構造が環状になってもエーテルである (環状エーテル、テトラヒドロフランなど)。

これも非常に幅広い定義で、以下のような物質および結合が含まれる。

  • グリコシド結合も -O- を含んでいるので、エーテル結合の一つである。

グリコシド結合: Glycosidic bond

グリコシド結合とは、 とその他の物質が 脱水縮合 して作る結合のことをいう。「その他の物質」が酸の場合にはエステル結合の一種と考えられ、また最終的に -O- という構造が生じればエーテル結合の一種とも考えられる。

ただし、グリコシド結合は、しばしば以下のように糖同士の結合に限定して定義される (2)。

The type of chemical linkage between the monosaccharide units of disaccharides, oligosaccharides, and polysaccharides, which is formed by the removal of a molecule of water (i.e. a condensation reaction).



図はグリコシド結合形成の一例 (5)。「糖」および「脱水縮合」が条件なので、多くの場合 -OH 基が反応に関わる。つまり、グリコシド結合は -OH 基をもつアルコールと糖、糖同士などの間で形成されることが多い。

糖および糖以外の物質の脱水縮合反応によってできた物質は、配糖体 glycoside と呼ばれる。以下のような物質である。

  • グリコーゲン glycogen
  • セルロース cellulose

配糖体を分解する酵素は、グリコシダーゼ glycosidase と総称される。

アミド結合: Amide bond

アミド amide とは、アンモニアまたはアミンの水素が金属原子またはアシル原子団 (RCO) によって置換された構造をもつ化合物の総称である (1)。発音は [amʌid] or [eimʌid] である。

この定義が難しく感じたら、まず アミンの概要 のページを見てみよう。アミンとは アンモニア NH3 の水素原子が他の官能基に置換された物質で、R-NH2 のように表せる。アンモニア自身もアミンに含められることが多い。

アミンの一般構造 (6)

金属原子と結合した金属アミドは、生化学分野ではあまり登場しない。有機合成において強塩基として使われるナトリウムアミド NaNH2 などが代表例である。この場合、アミド結合という言葉は使われない のが一般的なようである。

アシル原子団 (RCO) をもつ分子の代表的なものは、カルボン酸やアミノ酸である。カルボン酸は -COOH という構造をもっており、これがアミドになると R1R2N-CO-R3 という一般式で表される。

カルボン酸アミドの一般構造 (Public domain)


カルボン酸アミドの RCON の部分をアミド結合という 場合が多いようである。


ペプチド結合

ペプチド結合は、アミド結合の一種である。

ペプチド結合はアミノ酸同士が長く連なった結合であり、アミノ酸の一般構造にあるように、アミノ酸はアミンであり、かつカルボン酸でもある。

アミノ酸の一般構造

したがって、アミノ酸同士の結合はアミド結合である。これが長く連なったものをとくにペプチド結合という (図; ref 5)。タンパク質 を形成する重要な結合である。



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References

  1. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  2. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  3. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  4. By 英語版ウィキペディアAxelBoldtさん - Transferred from en.wikipedia to Commons by Common Good using CommonsHelper., パブリック・ドメイン, Link
  5. By GYassineMrabetTalkこのベクターイメージInkscapeで作成されました. - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
  6. パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1298760