原生生物 Protists: 真核かつ単細胞の側系統群

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このページの最終更新日: 2024/03/13

  1. 原生生物とは: Protist と Protozoa の違い
  2. Protist の特徴
  3. Protist の分類

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原生生物とは: Protist と Protozoa の違い

原生生物 protists は、定義や日本語・英語の言葉の使い分けがややこしい単語である。このような場合は、Oxford Dictionary of Biology (Amazon) のような広く参照されている情報源に基づくのが基本である。

最も混乱を招くのは、protist と protozoa という言葉である。これらは日本語ではいずれも 原生生物 と訳されてしまうが、英語では以下のように定義されている (1)。

Protist
Any eukaryotic organism that is essentially unicellular or colonial in form and lacks cellular differentiation into tissues. Protists include simple algae, simple fungi, and protozoa;

Protozoa
A group of unicellular or acellular, usually microscopic, eukaryotic organisms now classified in various phyla (see apicomplexa; ciliophora; rhizopoda; zoomastigota). They were formerly regarded either as a phylum of simple animals or as members of the kingdom Protista (see protist). They are very widely distributed in marine, freshwater, and moist terrestrial habitats;


これをみると、protist は真核・単細胞の生物 全てを含む概念であり、文献 2 の教科書にはっきりと記載されているように 単系統群ではない。慣用的に使われている分類群である。単系統性についてはいずれ独自のページを作りたいが、生物学の格言 のページに概要が書かれている。Protists には単細胞の藻類 algae、単細胞の菌類 fungi、および protozoa が含まれる。

Protozoa は光合成をしない protists である (Biology: Life on Earth; Amazon)。上の定義にははっきりと書かれていないが、「真核、単細胞」であり、かつ "simple animals" とされており、aminals は植物でも菌類でもなく他の生物を主な栄養源にしている生物であるため、同じ定義であると考えて良い。

Prozotoa も古い概念であり、もちろん単系統群ではない。したがって、protists, protozoa はともに domain や kingdom などの分類名を割り振られていない。


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Protists の特徴

Protists は、全般に以下のような特徴をもっている。

  • 単性生殖が基本であるが、有性生殖も存在する (2)。
  • 栄養摂取の方法が多様である (2)。光合成、分解、捕食のいずれも存在し、かつてはこれによって分類されていた。
    • 捕食を主とするものが protozoa であった。捕食は 仮足 pseudopod を使って行われる。細胞内に取り込まれた食物は食胞 food vacuole 内で消化される。
    • 光合成を主とするものは藻類 algae と呼ばれる (2)。

細かい特徴は分類群ごとに記載する。

Protists の分類

文献 2 に基づく分類である。PubMed Taxonomy では superkingdom である真核生物 Eukaryota の下に no rank の Euglenozoa や Alveolata がある。つまり、以下の表の大きいクラス分けは no rank である。

その下には、直接 genus がきている。


Excavates

Diplomonads

ミトコンドリア をもたず、独立栄養性または寄生性。2 つの核 nuclei をもつのが特徴。

ジアルジア Giardia など。

Parabasalids

寄生性または相利共生性で、ミトコンドリアをもたない。性感染症の一つであるトリコモナスがこの群に属する。

Euglenozoans

Euglenids

ミドリムシ。光合成をし、眼点 eyespot をもつ。全て淡水性。

Kinetoplastids

寄生性の種を含む。トリパノソーマがこれに属する。

Stramenopiles
(chromists)

Water molds

ミズゴケ。

珪藻
Diatoms

ケイ素 の殻をもつのが特徴。

褐藻
Brown algae

ワカメ、コンブなどの大型の海藻類。

単細胞という protist の定義に反するが、おそらく protist という概念ができ、珪藻などが含められた後、それと近縁なことが DNA 配列などから分かり追加されたものと思われる。

Alveolates

渦鞭毛藻
Dinoflagellates

2 本の鞭毛をもち、そのために遊泳能力が高い。赤潮の主な原因。

Histone H1 をもたず、DNA にヒドロキシメチルウラシルをもつなど、生化学的に特殊な点が多い。

Alicomplexans

片仮名でアピコンプレックスと呼ばれる。基本的に寄生性で、配偶子期以外では鞭毛や仮足をもたない。

繊毛虫
Ciliates

ゾウリムシ、テトラヒメナなど。全身に繊毛があるのが特徴。写真は Ref. 3 より。

繊毛虫

Rhizarians

有孔虫
Foraminiferans

炭酸カルシウムの殻をもつ。殻が堆積して石灰岩を形成することがある。

放散虫
Radiolarians

ケイ素の殻を持つ。珪藻と違い光合成はしない。

Amoebozoans

Amoebas

いわゆるアメーバ。大きな仮足が特徴。PubMed Taxonomy では、Amoebidae がfamily として登録されている。このサイトでは、三組葉状根足綱 class Elardia のページ にとりあえず内容をまとめている。

Acellular slime molds

粘菌で、融合して多核の 変形体 plasmodium を形成する。plasmodium という単語はマラリア原虫を指すこともあるので注意。

Cellular slime molds

上に似ているが、集合してもそれぞれの細胞は融合せず、pseudoplasmodium を形成する。

紅藻
Red algae

炭酸カルシウム殻をもつものもいる。主に多細胞。

Chlorophyte algae

系統的に陸上植物に近い。


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References

  1. Hine 2015a. A Dictionary of Biology.

信頼できる定義 (情報源) を手元に持っておくことは重要である。自分の勉強にも役に立つが、外部に向けた書類を (レポート、論文、申請書など) 書く場合の効率が一段とアップする。そして、辞書は なるべく権威のあるもの の方が何かと便利である。

日本語では 岩波 生物学辞典 第5版 をお勧めしているが、英語では Oxford の辞書がよい。大学の初級あたりをターゲットにしていて、あまり難しい単語は載っていないが、英語での定義をしっかりと押さえるにはとても便利。価格帯も非常に手頃。



  1. Amazon link: Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです
  2. By Respectively: Picturepest, Anatoly Mikhaltsov, Bernd Laber, Deuterostome, Flupke59 - This file was derived from: Lacrymaria olor - 160x (13465052303).jpgParamecium bursaria.jpgColeps-Konjugation.jpgDileptus species.jpgStentor coeruleus extended.jpg, CC BY-SA 4.0, Link

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