原生生物 Protists: 真核かつ単細胞の側系統群
- 原生生物とは: Protist と Protozoa の違い
- Protist の特徴
- Protist の分類
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原生生物とは: Protist と Protozoa の違い
原生生物 protists は、定義や日本語・英語の言葉の使い分けがややこしい単語である。このような場合は、Oxford Dictionary of Biology (Amazon) のような広く参照されている情報源に基づくのが基本である。
最も混乱を招くのは、protist と protozoa という言葉である。これらは日本語ではいずれも
Protist Protozoa |
これをみると、
Prozotoa も古い概念であり、もちろん単系統群ではない。したがって、protists, protozoa はともに domain や kingdom などの分類名を割り振られていない。
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Protists の特徴
Protists は、全般に以下のような特徴をもっている。
- 単性生殖が基本であるが、有性生殖も存在する (2)。
- 栄養摂取の方法が多様である (2)。光合成、分解、捕食のいずれも存在し、かつてはこれによって分類されていた。
- 捕食を主とするものが protozoa であった。捕食は
仮足 pseudopod を使って行われる。細胞内に取り込まれた食物は食胞 food vacuole 内で消化される。 - 光合成を主とするものは藻類 algae と呼ばれる (2)。
- 捕食を主とするものが protozoa であった。捕食は
細かい特徴は分類群ごとに記載する。
Protists の分類
文献 2 に基づく分類である。PubMed Taxonomy では superkingdom である真核生物 Eukaryota の下に no rank の Euglenozoa や Alveolata がある。つまり、以下の表の大きいクラス分けは no rank である。
その下には、直接 genus がきている。
Excavates |
Diplomonads |
ミトコンドリア をもたず、独立栄養性または寄生性。2 つの核 nuclei をもつのが特徴。 ジアルジア Giardia など。 |
Parabasalids |
寄生性または相利共生性で、ミトコンドリアをもたない。性感染症の一つであるトリコモナスがこの群に属する。 |
|
Euglenozoans |
Euglenids |
ミドリムシ。光合成をし、眼点 eyespot をもつ。全て淡水性。 |
Kinetoplastids |
寄生性の種を含む。トリパノソーマがこれに属する。 |
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Stramenopiles |
Water molds |
ミズゴケ。 |
珪藻 |
ケイ素 の殻をもつのが特徴。 |
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褐藻 |
ワカメ、コンブなどの大型の海藻類。 単細胞という protist の定義に反するが、おそらく protist という概念ができ、珪藻などが含められた後、それと近縁なことが DNA 配列などから分かり追加されたものと思われる。 |
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Alveolates |
渦鞭毛藻 |
2 本の鞭毛をもち、そのために遊泳能力が高い。赤潮の主な原因。 Histone H1 をもたず、DNA にヒドロキシメチルウラシルをもつなど、生化学的に特殊な点が多い。 |
Alicomplexans |
片仮名でアピコンプレックスと呼ばれる。基本的に寄生性で、配偶子期以外では鞭毛や仮足をもたない。 |
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繊毛虫 |
ゾウリムシ、テトラヒメナなど。全身に繊毛があるのが特徴。写真は Ref. 3 より。 |
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Rhizarians |
有孔虫 |
炭酸カルシウムの殻をもつ。殻が堆積して石灰岩を形成することがある。 |
放散虫 |
ケイ素の殻を持つ。珪藻と違い光合成はしない。 |
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Amoebozoans |
Amoebas |
いわゆるアメーバ。大きな仮足が特徴。PubMed Taxonomy では、Amoebidae がfamily として登録されている。このサイトでは、三組葉状根足綱 class Elardia のページ にとりあえず内容をまとめている。 |
Acellular slime molds |
粘菌で、融合して多核の |
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Cellular slime molds |
上に似ているが、集合してもそれぞれの細胞は融合せず、pseudoplasmodium を形成する。 |
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紅藻 |
炭酸カルシウム殻をもつものもいる。主に多細胞。 |
|
Chlorophyte algae |
系統的に陸上植物に近い。 |
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References
Hine 2015a. A Dictionary of Biology.
信頼できる定義 (情報源) を手元に持っておくことは重要である。自分の勉強にも役に立つが、外部に向けた書類を (レポート、論文、申請書など) 書く場合の効率が一段とアップする。そして、辞書は 日本語では 岩波 生物学辞典 第5版 をお勧めしているが、英語では Oxford の辞書がよい。大学の初級あたりをターゲットにしていて、あまり難しい単語は載っていないが、英語での定義をしっかりと押さえるにはとても便利。価格帯も非常に手頃。 |
- Amazon link:
Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです - By Respectively: Picturepest, Anatoly Mikhaltsov, Bernd Laber, Deuterostome, Flupke59 - This file was derived from: Lacrymaria olor - 160x (13465052303).jpgParamecium bursaria.jpgColeps-Konjugation.jpgDileptus species.jpgStentor coeruleus extended.jpg, CC BY-SA 4.0, Link
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