菌類とは: 定義、特徴、分類など
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菌類とは
菌類 fungi (単数形 fungus) は、現在の分類 (PubMed Taxonomy) では界 kingdom に当たる分類群である。
ほとんどの菌類は、以下の特徴を備えている (1)。
1. 体は菌糸体から成る
体は主として
以下の写真は mycelium の例 (3,4)。拡大図は 1 mm 四方である。
2.菌糸 hypha の存在
菌糸体の糸状の構造の 1 本 1 本を
3. キチンの細胞壁
細胞壁は
その他
菌類のその他の重要な性質は以下のとおり (1)。
- 一般に菌類というとキノコのイメージであるが、体の大部分は菌糸であり、キノコは菌類の体の特殊な一形態にすぎない。
- 菌類は動物と同様に外部の有機物を主な栄養源とするが、体内で消化するわけではなく、
酵素を外部に分泌 して有機物を分解し、分解産物を吸収する。 - 菌類は原則として胞子 spore を使った無性生殖で増殖する。ストレスなど特定の条件下で有性生殖を行う。有性生殖は菌糸の直接のコンタクトによる。
オスやメスはなく 、+ と - で性別が表される。 菌類の祖先は、鞭毛をもち、胞子を形成する単純な水生菌類であったと考えられている (2)。
菌類は藻類と共生することがあり、この関係は
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菌類の分類
これまでに約 125,000 種の菌類が報告されているが、これはごく一部であり、全体では 150 万種が存在すると推定されている (1)。菌類は、大きく以下の 6 グループに分類される (1)。
6 つのグループは、動物門 phylum に相当するものが多い。
ツボカビ門 |
一般名としてのツボカビ類は Chytrids である。 ほとんどは水中に生息し、胞子は 1 本の鞭毛をもつ (1)。多くは自由生活をしているが、一部は寄生性である。カエルのツボカビ病が有名になった。 |
Rumen fungi |
反芻動物の腸内に生息し、消化を助ける。 |
Phylum Blastocladiomycota |
一般名としては Blastoclades が用いられる。トウモロコシ の brown spot disease の原因。胞子の核 nuclei の近くに、リボソームから成る nuclear cap という構造をもつ。 胞子は 1 本の鞭毛をもち、自由生活性の種と寄生性の種がいる。 |
Glomeromycetes |
ほぼ全ての種が、植物の根に存在する。共生構造である mycorrhizae を作る。 文献 1 ではツボカビ門などと併記されているが、PubMed では綱 class とされている。 |
Basidiomycetes |
穀物の smuts や rusts の原因となる。食べられるキノコ類を含む。菌糸に septa がある。 一般に有性生殖をする。有性生殖の結果、菌糸が集合して作る構造がいわゆるキノコである。 |
Phylum Ascomycota |
果物に生えるカビなどを含み、一般名は Ascomycetes。酵母 Saccharomyces はここに属する。菌糸に septa がある。ペニシリンもこの分類群から単離された抗生物質である。 |
この 6 群に属さない菌類は、従来 zygomycetes というグループに含められてきた。しかしこのグループは単系統群でないことがわかっており (1)、現在でも分類の努力が続けられている。
系統的に古い chytrids, rumen fungi, blastoclades は、精子 が鞭毛で泳ぐという特徴をもつ。つまり繁殖に水が必要である。繁殖に水を必要とするのは系統的に古い群で共通してみられる特徴で、植物 ならコケ類、脊椎動物なら両生類が該当する。
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菌類と病気
菌類が原因の病気としては、次のようなものが有名である (1)。HIV/AIDS などで免疫系が弱まっている場合にのみ重篤化するケースも多い。
- ニレの立ち枯れ病 (Dutch elm disease)
- トウモロコシなどの穀物でみられる rust (茶色い斑点ができる) や smut (体の一部が黒い粉に変化)
- 水虫。正式には「足部汗ぽう状白癬」、英語では Athlete's foot。Tinea pedis とも呼ばれ、かつては昆虫が原因と考えられた。1910 年に菌類 dermatophytes が原因であることが示された。このグループはケラチンを栄養源とする。湿疹 eczema と間違いやすい。
- いんきんたむし jock itch。
- Ringworm は「輪癬」であり、寄生性菌類による皮膚病の総称。
- Blastomycosis は Blastomyces の感染症。あまり一般的ではなく、ほとんどの報告はアメリカとカナダからである。ウィスコンシン州では毎年 10–40 の症例が報告されている。森の中で呼吸によって菌類を肺に取り込むことが原因で生じ、通常 3 週間から 3 ヶ月の間に熱、筋肉痛、関節痛などの症状が現れる。免疫力が低下している場合、菌類は肺から骨、神経系など他の組織に広がる。血液 や尿で診断可能であり、治療には itraconazole が使われる。肺からの転移がみられる場合には、より強い薬である Amphotericin B が使われる。
- Candida auris は血液や耳から感染し、57% という高い致死率を示す。発熱、敗血症などを引き起こす。通常の菌類感染症に対する治療はあまり効果がない。2009 年に最初に報告された。
- Cryptococcus neoformans による感染は、免疫系が弱まっている場合に重篤化する。肺、神経系など。感染症は cryptococcosis と呼ばれ、肺に感染した場合は、結核のような症状を示す。脳への感染はとくに cryptococcal meningitis といい、発熱や行動異常をもたらす。Amphotericin B などの抗菌剤が治療に使われ、治療期間は感染の程度による。手術を要する場合もある。
クモノスカビ属 Rhizopus
人間の生活に影響が大きい菌類として、Ascomycota に属するクモノスカビ属 Rhizopus を取り上げる。内容が増えてきたら独自のページを作る。
Rhizopus は属 genus に相当する 分類群 である (1)。果物やパンに生える黒カビがここに属する。以下のような特徴をもつ。
- 無性生殖は、
sporangia と呼ばれる黒い胞子 spore の形成から始まる。 - Sporangia は、適した環境におかれると菌糸を作る。
- 異なる mating type の菌糸が接触すると、有性生殖が起こることがある。
つまり、パンに生える黒カビ (目に見える部分) は sporangia であり、菌類の本体ではない。
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References
- Amazon link:
Audesirk et al. 2013a. Biology: Life on Earth with Physiology, eBook, Global Edition (English Edition): 新しいバージョンへのリンクです James et al. 2006a. Reconstructing the early evolution of Fungi using a six-gene phylogeny. Nature 443, 818-822.- By The original uploader was Lex vB at Dutch Wikipedia. - Originally from nl.wikipedia; description page is/was here., CC BY-SA 3.0, Link
- By Bob Blaylock - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
- By Jason Hollinger - Mushroom Observer, CC BY-SA 3.0, Link
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