バクテリア: 定義、分類、関連実験など

UBC/organism/taxa/bacteria

このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: バクテリアとは
  2. マイクロバイオーム解析
  3. それぞれのバクテリア

広告

概要: バクテリアとは

バクテリアとは、明瞭な 細胞核 をもたない単細胞生物で、膜脂質の疎水性部分が主に直鎖状の炭化水素で構成されているものをいう。

バクテリアは、ドメイン bacteria を構成する生物群であるとも言える。なお、全ての生物は 3 つのドメインに分類され、他の 2 つは archaea と eukaryota である (参考: 生物の分類)。

「バクテリア bacteria」と「原核生物 prokaryotes」の違いについては、原核生物のページ を参照のこと。

いずれ他のページに移すかもしれないが、生物の進化関係を示したきれいな図を見つけたので、ここに載せておく (5)。

生物の系統関係
広告

マイクロバイオーム解析

マイクロバイオーム解析とは、特定の環境に存在するバクテリアを網羅的に同定する実験手法である。

16S rRNA の配列をもとに行われることが多い。ただし、これだとバクテリアの種しかわからない。全メタゲノムを決定するショットガンメタゲノムという方法もあり、この場合はバクテリアがもつさまざまな遺伝子の機能まで議論することができる。バクテリアは 水平伝播 やプラスミドによって遺伝子を獲得しているので、遺伝子レベルの議論も重要になる。

それぞれのバクテリア

この項目では、系統関係を反映した網羅的な分類ではなく、「よく聞く」バクテリアの分類群や属をピックアップし、大まかな特徴を解説している。

一般的な分類

グラム陽性菌、グラム陰性菌

グラム染色という染色実験で、陽性になるか陰性になるかという分類。具体的には、染色後にグラム陽性菌は紫色、グラム陰性菌は赤色に見える。

下の写真 (5) では、グラム陽性の黄色ブドウ球菌 (紫色) と グラム陰性の大腸菌 (赤色) が見分けられる。写真を拡大すると、前者が球状、後者が桿状の形をしていることもわかるだろう。

グラム染色

この染色性の違いは、細胞壁の構造の違いに由来する。詳細は グラム染色のページ へ。

乳酸菌

特定のグループではなく、代謝によって大量の乳酸を作る菌の総称である。詳細は プロバイオティクス のページへ。

アクネ菌

Cutibacterium acnes はニキビから単離されたバクテリアで、ヒトの皮膚に通常もっとも多く存在する種。かつては Propionibacterium acnes と呼ばれていた。

写真は thioglycollate medium で培養したこの菌の顕微鏡写真 (Public domain)。

ニキビから単離されたアクネ菌

枯草菌

「こそうきん」と読む。土壌や植物に普遍的に存在する菌で、植物を食べる反芻動物やヒトの腸にも分布する。好気性のグラム陽性菌で、カタラーゼ 陽性である。学名は Bacillus subtilis で、納豆菌もこの一種 (Bacillus subtilis var. natto)。

門による分類

ドメイン bacteria は、30 の門に分類されている (2; ただし、この数は文献によって違うと考えられる)。

Bacteroidetes

バクテロイデス Bacteroidetes はグラム陰性の門 phylum であり、環境中やヒトの腸内に広く分布する。幅広い代謝能力をもつ。肥満 者の腸内ではバクテロイデスの割合が Firmicutes に比べて減っているという 2006 年の有名な報告があり (6)、注目を集めている門である。

Firmicutes

グラム陽性の門の一つ。いくつかの系統は擬似外膜をもち、グラム陰性になる。

多くは乾燥に耐性があり、悪環境に耐えることができる芽胞を形成する。


属による分類

アルファベット順。

Blautia

Catenibacterium

Desulfovibrio

Fenollaria

Finegoldia

Fusobacterium

Peptococcus

Peptoniphilus

Streptococcus

Turicibacter


広告

References

  1. Doridí Own work, CC BY-SA 3.0, Link
  2. 平山 2016a (Review). ヒトの腸内菌の分類に関する総論. 腸内細菌学雑誌 30, 5-15.
  3. 岩波 理化学辞典 第 4 版.

このサイトでは、私が持っている 1987 年の第 4 版を引用していることが多い。1998 年に第 5 版が発行されている。

ネット情報の問題点の一つは、信頼できる定義になかなか出会えないことである。Wikipedia には定義らしいことが書いてあり、普段の調べ物には十分なことも多いが、正式な資料を作るときにはその引用は避けたいものである。

そんなときに役に立つのが理化学辞典や生化学辞典。中古でも古い版でもよいので、とにかく 1 冊持っておくと仕事がはかどる。


  1. ページ編集に伴い削除
  2. By Y tambe - Y tambe's file, CC BY-SA 3.0, Link
  3. Ley et al. 2006a. Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity. Nature 444, 1022-1023.

コメント欄

サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。