バクテリアの分類に使われるグラム染色: 原理、プロトコールなど

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このページの最終更新日: 2024/12/15

  1. 概要: グラム染色とは
  2. グラム染色の原理
  3. グラム陽性菌・陰性菌の特徴
  4. グラム染色のプロトコール

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概要: グラム染色とは

グラム染色 Gram staining は、主に バクテリア を分類するために行われる染色実験である。デンマークの科学者 Gram によって発明されたので、この名で呼ばれる。Gram による開発は 1884 年とされている。

染色により、グラム陽性菌は紫、陰性菌は赤 になる。

下の写真 (1) では、グラム陽性の黄色ブドウ球菌 (紫色) と グラム陰性の大腸菌 (赤色) が見分けられる。写真を拡大すると、前者が球状、後者が桿状の形をしていることもわかるだろう。

グラム染色

グラム染色の原理

グラム染色は 1884 年に報告された古い実験法であるが、2015 年に原理に関する報告が出るなど (2)、実はその原理はあまり深くわかっていないようである。

最後に counter stain が入る

グラム染色における染色性は、少なくとも細胞壁の構造の違いに由来する。原理はちょっとわかりにくい。プロトコールとともに示した図 (3) を載せておく。

グラム染色の原理

左側がグラム陽性菌である。これは最初からずっと紫に染まっている。

一方、右側のグラム陰性菌は、最初の段階では紫に染まるが、途中のステップで 完全に脱色 され、最後の counter staining で赤く染まる。

グラム陰性菌は、最初の紫色の染色が強く、さらに最後に赤に「染まる」のに、「陰性」である。実験結果の写真だけを見れば、陰性・陽性は直感的に理解しやすいが、原理を考えると混乱してくるケースが多いので、少し詳しく載せておく。

グラム陰性菌の外膜

では、なぜグラム陰性菌はこのような染色、脱色のパターンを示すのだろうか。これは、グラム陰性菌のペプチドグリカン層の薄さによる (図、ref. 4)。

グラム染色の原理

ペプチドグリカンの層は脂質二重膜層よりもかなり強く、グラム陽性菌の方がペプチドグリカンの層が厚い。これが紫色の色素をトラップするため、陽性菌は紫色に染まる。

これに対して、グラム陰性菌はペプチドグリカン層が薄い。その外側に脂質二重膜を持ってはいるが、グラム染色ではアルコールを使うため、これは実験の途中で壊れてしまう。そのため、紫色の色素は失われてしまう。無色になったところに赤色の染色をするので、はっきりと赤色が見えるわけである。

この赤色の染色は、単なる counter stain であり、これをしないと菌はほぼ無色で非常に見にくくなってしまう。紫色の染色がメインであることを覚えておけば、陽性・陰性も少しは覚えやすくなるだろう。

グラム陽性菌・陰性菌の特徴

ごく一般的に言うと、グラム陰性菌は細胞壁が薄いので、湿った場所を好む。細菌の起源は海洋であるため、これが祖先型と思われる。

厚い細胞壁を獲得し、乾燥した陸上生活に適応したのがグラム陽性菌である。

グラム染色のプロトコール

英語だが、以下のビデオがわかりやすい。

  1. バクテリアをスライドガラスの上に広げて塗りつける。密度は高くなりすぎないように。水がほんのり濁って見えるぐらいがよい。
  2. 炎で簡単に熱して固定する。70°C ぐらいのホットプレートの上に乗せておいてもよい。水が見えなくなれば OK。
  3. Crystal violet 溶液を、バクテリア部分が覆われる程度スライドガラスに乗せ、1 分保持。
  4. 洗浄。ビデオではビーカーに入れた水を使っているが、水道水をチョロチョロと流しながら洗っても大丈夫。バクテリアは結構しっかりと固定されている。
  5. Iodine 溶液で 1 分、同様に水で洗浄。
  6. アルコールで洗浄。エタノール をアセトンの混合液などを使っているプロトコールもあるが、簡易的にやるには消毒用の 70% アルコールで十分。
  7. Safranin で染色、水で洗浄。
  8. 観察は普通の倒立顕微鏡で良いが、対物レンズ 100x までいかないと個々の細胞はよく見えない。

あまり綺麗な結果ではないが、スライドガラスはこんな感じになる。

ほぼ陰性菌だけの場合。

グラム染色 陰性菌主体

陽性菌が入っているのか、洗浄が不十分だったのか・・

グラム染色

菌数が多すぎるとこうなる。

グラム染色 菌が多すぎ
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References

  1. By Y tambe - Y tambe's file, CC BY-SA 3.0, Link
  2. Wilhelm et al. 2015a. Gram’s stain does not cross the bacterial cytoplasmic membrane. ACS Chem Biol 10, 1711–1717.
  3. By <a href="//commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Paitynd1&amp;action=edit&amp;redlink=1" class="new" title="User:Paitynd1 (page does not exist)">Paityn Donaldson</a> - <span class="int-own-work" lang="en">Own work</span>, CC BY-SA 4.0, Link
  4. CC 表示-継承 3.0, リンク
  5. グラム染色の手法. Pdf: Last access 2023/04/16.

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