果物に含まれる反応性の高い単糖 フルクトース:
構造、代謝など

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このページの最終更新日: 2022/07/26

  1. 概要: フルクトースとは
    • フルクトースの糖化作用
    • フルクトースの甘み
  2. フルクトースの代謝
    • 肝臓でのフルクトースの代謝
    • 肝臓以外の組織でのフルクトースの代謝

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概要: フルクトースとは

フルクトース fructose は図のような構造 (Public domain) の単糖 monosaccharide である。他の糖と同様に直鎖状のフォームと環状のフォームがあり、図には両方が書かれている。

環状および直鎖状の構造が平衡状態で存在する。直鎖状フルクトースは、図からわかるようにアルデヒド基 -CHO ではなく、ケト基 -C-CO-C をもつ。つまりフルクトースはアルドース aldose ではなくケトース ketose に分類される (参考; 炭水化物の概要)。

フルクトースのアイソフォーム

果糖とも呼ばれる。組成式は C6H12O6 であり、グルコース の構造異性体である (4)。

図のように、フルクトースには 2 つの環状構造が存在する。糖において 5 つの炭素原子から成る環はフラノース franose、6 つの炭素原子から成る環はピラノース pyranose と呼ばれるため、フルクトースの場合はそれぞれ fructofranose および fructopyranose である (5)。

フルクトースの還元性と糖化作用

一般に、アルデヒド基 (-CHO) は還元性をもつ。詳細は 還元糖のページ および アルデヒドのページ を参照のこと。フルクトースはアルデヒド基をもたないケトースであるが、以下のような反応 (ケト-エノール互変異性、ロブリー・ドブリュイン-ファン エッケンシュタイン転位) によってアルデヒド基が生じる。

ロブリー・ドブリュイン-ファン エッケンシュタイン転位

このアルデヒド基は、以下のような反応 (文献 9) によって他の分子 (タンパク質など) を還元する。

ロブリー・ドブリュイン-ファン エッケンシュタイン転位

問題は、フルクトースの開環率は、グルコースの約 300 倍に達することである (9)。

生体分子の glycation は体内の free sugar の濃度に応じて生じ、その頻度はフルクトース > ガラクトース > グルコースの順である (5)。


フルクトースの甘み

フルクトースは緑色の 植物、フルーツ、ハチミツなどに含まれ、スクロースよりも強い甘味をもつ (4)。

なお、フルクトースの甘味は β-D-fructofranose が最大であり、その割合が低温で高くなる。このためフルクトースは低温の方が甘味が強い。果物を冷やして食べると甘く感じるのはこのためである。

糖類の甘さの比較
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フルクトースの代謝

フルクトースは原則として 解糖系 で代謝されるが、解糖系への合流の仕方が 肝臓とその他の組織で異なっている (2)。


肝臓でのフルクトース分解

肝臓では、まず酵素 フルクトキナーゼ fructokinase によってリン酸化されて F1P になり、これが glyceraldehyde および DHAP に開裂する。DHAP は解糖系の中間体であり、そのまま解糖系のステップ 5 に合流する。Glyceraldehyde は triose kinase によって 3 位でリン酸化され、GAP として解糖系に入る (2)。

フルクトキナーゼは、ケトヘキソキナーゼ ketohexokinase, KHK とも呼ばれることもある。

解糖系 反応5

フルクトースは解糖系に入った結果、グルコースと同様に ピルビン酸 になり、好気的条件下ではさらにアセチル CoA になる。

> グルコース、フルクトースからの脂肪酸合成を ラットヒト 肝臓で調べた論文 (7)。

  • フルクトースからの脂肪酸合成が多く、これは フルクトキナーゼ活性がヘキソキナーゼ・グルコキナーゼ活性よりも高い ことと関連するだろう。
  • 肝臓での脂肪酸合成は、基質であるアセチル CoA の供給が律速になっている可能性が高い。
  • したがって、フルクトースからの活発な脂肪酸合成は、フルクトキナーゼの高い活性に起因すると考えられる。

この経路は、解糖系の律速段階である PFK を飛ばしている。PFK は ATP、クエン酸などによって阻害されるので、細胞にエネルギーが十分ある状態では、グルコースはグリコーゲン glycogen 合成に回される。しかし、フルクトースはそのまま解糖系を下って行くことになる。

最終的に生じるアセチル CoA は、脂肪酸合成 によって脂肪になる。つまり、フルクトースは PFK を bypass しているために 肥満 を誘発すると考えることもできる。

一方、PFK とともにもう一つの解糖系の律速酵素である PK が阻害されており、細胞で 糖新生 が起こっているケースを考えてみる。このとき、解糖系に合流したフルクトースは糖新生経路に乗り、グリコーゲンとなるだろう。「フルクトースはグリコーゲンを replenish する」という表現があるが、これはこのような状況を想定している。

この場合、フルクトースは単にグリコーゲンとなり、脂肪酸合成には寄与しない。この点をどう考えればいいのか、現在のところよくわからない。細胞が貯められるグリコーゲン量の上限を簡単にヒットしてしまい、脂肪酸合成に向かうということなのだろうか。

ただし、フルクトースはこれ以外にも数多くのホルモンに作用し、結果として脂肪酸合成を促進するようである (8)。

> グルコース、フルクトースからの脂肪酸合成を ラットヒト 肝臓で調べた論文 (7)。

  • フルクトースからの脂肪酸合成が多く、これは フルクトキナーゼ活性がヘキソキナーゼ・グルコキナーゼ活性よりも高い ことと関連するだろう。
  • 肝臓での脂肪酸合成は、基質であるアセチル CoA の供給が律速になっている可能性が高い。
  • したがって、フルクトースからの活発な脂肪酸合成は、フルクトキナーゼの高い活性に起因すると考えられる。

F1P が、F1,6BP を経て解糖系に合流する経路もあるようである (3,6I)。バクテリアでの文献が多いようで、fructose 1 phosphate kinase (EC 2.7.1.S6) に触媒される。ラットの PFK が F1P を F1,6BP にリン酸化するという報告もあるので、哺乳類 にもこの経路が存在する。ただし酵素が PFK であることから、上述の "PFK bypass" という考えは、この反応では適用されない。


肝臓以外でのフルクトース代謝

肝臓以外の組織では、hexokinase が F6P にリン酸化する。F6P は解糖系の中間体であり、ステップ 3 から解糖系に合流する。しかし hexokinase との親和性はグルコースの方が高いため、この経路の効率は低い。

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References

  1. By Wickey-nl - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
  2. Amazon link: ハーパー生化学 30版.

ストライヤー生化学に比べるとかなり生物学的な教科書で、個人的にはこちらの方がわかりやすい。タンパク質の構造やエネルギー論などに深入りすることなく、タンパク質、糖、脂質などの代謝の概要を知りたいという人向け。化学ではなく医学、といってもいいかもしれない。

初版から 75 年という歴史をもつ教科書で、常に改訂が加えられている。新しい版になるほど臨床に関連した記述が増え、また章末の問題が充実してきている。


  1. 果糖の代謝. Link: Last access 2018/04/15.
  2. Amazon link: Hine (2015). Oxford Dictionary of Biology.
  3. Ahern et al. 2017. Biochemistry Free For All.
  4. Sridhar et al. 1999a. Elucidation of enzymes in fermentation pathways used by Clostridium thermosuccinogenes growing on inulin. Appl Environ Microbiol 66, 246-251.
  5. Zakim, 1972a. The effect of fructose on hepatic synthesis of fatty acids. Acta Medica Scandinavica 192, 205-214.
  6. Khitan and Kim, 2013a. Fructose: a key factor in the development of metabolic syndrome and hypertension. J Nutr Metab 2013, 682673.

Figures are cited from open-access articles distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are credited. Also see 学術雑誌の著作権に対する姿勢.

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