mRNA のプロセシング:
イントロンの除去、Cap 付加、ポリ A の付加
- 概要: mRNA のプロセシング
- イントロンの除去
- 5' Cap 構造の付加
- poly A tail の付加
- RNA 編集 (RNA editing)
広告
概要: mRNA のプロセシングとは
真核生物では、転写された mRNA は以下のような修飾を受ける (1)。これらを総称して mRNA processing という (参考: 転写の概要)。
- イントロン intron の除去
- Cap 構造の付加
- Poly A tail の付加
原核生物 prokaryotes の遺伝子にイントロンが含まれる場合もあるが、真核生物の核ゲノムに存在するイントロンとは異なっている (2) ので、基本的には上記の mRNA processing は原核生物に存在しないとされる。
原核生物の mRNA では、一つの mRNA から複数のタンパク質が翻訳 translation される
イントロンの除去
イントロンは真核生物 eukaryote の遺伝子に多く存在し、原核生物の遺伝子では極めてまれである。以下の理由から、イントロンは真核生物で挿入されたのではなく、
- イントロンの位置は極めて多様な生物で保存されており、1 billion years 前に挿入されていたものもあると考えられている。
- イントロンを除去するスプライシング splicing の機構は菌類 fungi、植物 plants、動物 animals で保存されている。
イントロンをもつことの意義は、
- Exon 同士の入れ替え
exon shuffling によって新しい機能をもつ遺伝子を作れること (進化的な問題) 選択的スプライシング alternative splicing によって、多様な機能をもつタンパク質を作れること
が考えられている。「exon に変異が入る可能性が下がる」という説明を聞いたことがあったが、確かに上記のような積極的な利点の方が重要に思える。
GT-AG 則
イントロンの配列は、5' 側が GT、3' 側が AG となる場合がほとんどである。私は G タグと覚えている。ネットでは、この規則は極めて保存されていると書かれている。適切な文献が見つかったら追記する。
Exon-intron 構造の解析には、かつては Spidey というプログラムが NCBI から提供されていたが、これが Splign にアップデートされていた。これは、すでにゲノム配列と mRNA 配列がわかっている場合に構造を描画するソフトという感じ。
ゲノム配列から遺伝子構造を予測する作業には、以下のようなアルゴリズムがよく使われている。
- GENESCAN: MIT のサーバー から解析可能。
- GlimmerHMM: Link.
- Augustus: ウェブ版 も Github 版 もあり、Ubuntu なら apt-get でインストールできる。方法は Github のページに書かれている。
このサイトには、augustus の使い方に関するページがある。以下のサイト内リンクからどうぞ。
広告
5' Cap 構造の付加
5' キャップ構造とは、mRNA の 5' 側に付加される
- Cap 結合タンパク質が最初に結合し、これにリボソームが結合する。つまり翻訳のために必要である。
- ポリ A 鎖と同様に、mRNA の安定性を向上させる。
- スプライシングにも影響すると書かれているが、具体的にどう影響するのかは書かれていない。
5' Cap は、通常の核酸の 5' - 3' の結合とは異なり、5' - 5' 結合で付加される (2)。
付加は RNA polymerase に結合するタンパク質によって行われる (2)。5' Cap を付加する酵素は、mRNA を転写する RNA polymerase II には結合するが、I や III には結合しない。したがって、これらの RNA polymerase に転写される tRNA, rRNA, small RNAs に 5' Cap は付加されない。
Poly A tail の付加
Poly A tail とは、mRNA の 3' 側に付加される連続した アデニン adenine のことである (2)。
- mRNA には AAUAAA から成るコンセンサス配列がある。
- この配列から 11 から 30 塩基あとで mRNA は切断され、そこに poly A tail が付加される。
広告
コメント欄
サーバー移転のため、コメント欄は一時閉鎖中です。サイドバーから「管理人への質問」へどうぞ。
References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
- Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 使っているのは 5 版ですが、6 版を紹介しています。
- By Zephyris - English Wikipedia, CC 表示-継承 3.0, Link