核酸 DNAとRNA:
定義、構造、ヌクレオシド/ヌクレオチドの違い

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このページの最終更新日: 2020/06/11

  1. 概要: 核酸とは
  2. DNA とは
    • ライボース、デオキシライボースの構造および核酸の方向性
    • 二重らせん構造
  3. RNA とは
    • なぜ T でなく U なのか?
    • なぜ RNA は DNA より不安定なのか?

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概要: 核酸とは

このページでは、核酸 nucleic acid の概要をまとめる。細かい項目は 核酸の目次 のページに一覧がある。

核酸 nucleic acid とは、リン酸、ペントースおよび核酸塩基からなる ヌクレオチド nucleotide が重合したポリヌクレオチド のこと。構造的にも機能的にも、DNA と RNA に大別される (1)。

用語がややこしいので、最初に整理しておく。核酸の構成要素はリン酸、ペントース (糖) および核酸塩基であるが、

  • ヌクレオシド nucleoside = ペントース + 核酸塩基
  • ヌクレオチド nucleotide = ペントース + 核酸塩基 + 1 個以上のリン酸
  • 核酸 = ポリヌクレオチド

という関係になる。

私はこれを 核酸は大きくなると STOP と覚えている。小さい方から順に nucleoside の S、nucleotide の T、poly-nucleotide の P を並べている (→ 生化学の語呂合わせ集)。

核酸塩基である A, T, G, C, U は、塩基だけの場合と、糖と結合してヌクレオシドになった場合で名前が変わる。RNA を構成する糖であるライボース ribose と結合した場合、塩基は次のような名前になる。ただし、チミジンは RNA には含まれないことに注意。

なお、核酸塩基は単に「塩基 base」と呼ばれることもあるが、塩基という言葉は 酸と塩基 でも使われるため、このページでは核酸塩基と書く。実際に塩基性を示すことから、核酸塩基と呼ばれているようである (1)。

なお、ribose の英語での発音は「ライボース」[rʌibəus] およびデオキシライボースであり、「リボース」ではない。このサイトでは、混乱を避けるためカタカナ表記は「ライボース」を使うことにする。


核酸塩基
base

アデニン
Adenine

グアニン
Guanine

シトシン
Cytosine

チミン
Thymine

ウラシル
Uracil

Nucleoside

アデノシン
Adenosine

グアノシン
Guanosine

シチジン
Cytidine

チミジン
Thymidine

ウリジン
Uridine


DNA では、塩基はデオキシライボースと結合する。したがってヌクレオシドの名前も代わり、次の表のようになる。単に「デオキシ」がつくだけである。デオキシウリジン deoxyuridine は DNA には含まれないので、スペースの都合上省いてある。

デオキシアデノシン
Deoxyadenosine

デオキシグアノシン
Deoxyguanosine

デオキシシチジン
Deoxycytidine

デオキシチミジン
Deoxythymidine


これらにさらにリン酸基がつくと、ヌクレオチドになってさらに名前が変わる。リン酸基の数によって mono-、di- または tri-phosphate となる。オキシとデオキシについて、それぞれ 1 - 3 個のリン酸基が結合するのが一般的である。すなわち、次の表のようになる。

Deoxyadenosine 5' monophosphase

Deoxyadenosine 5' diphosphase

Deoxyadenosine 5' triphosphase

Deoxyguanosine 5' monophosphase

Deoxyguanosine 5' diphosphase

Deoxyguanosine 5' triphosphase

Deoxycytidine 5' monophosphase

Deoxycytidine 5' dinophosphase

Deoxycytidine 5' triphosphase

Deoxythymidine 5' monophosphase

Deoxythymidine 5' diphosphase

Deoxythymidine 5' triphosphase

Adenosine 5' monophosphase

Adenosine 5' diphosphase

Adenosine 5' triphosphase

Guanosine 5' monophosphase

Guanosine 5' diphosphase

Guanosine 5' triphosphase

Cytidine 5' monophosphase

Cytidine 5' dinophosphase

Cytidine 5' triphosphase

Thymidine 5' monophosphase

Thymidine 5' diphosphase

Thymidine 5' triphosphase


Adenosine 5' triphosphase は、以下の構造をもつエネルギー的に重要な物質で、ATP と略される。


ATP の構造 (Public domain)

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DNA とは

DNA の重要ポイントは以下の通り。

  • 多くの生物の設計図であり、真核生物では核 nucleus の中に存在する。
  • 2 重らせん構造が有名である。この構造は、遺伝情報の正確な複製を可能にしている。

ライボース・デオキシライボースの構造

DNA の構造を理解する上で重要なポイントは以下の通りである。

  • RNA との比較、デオキシライボース vs. ライボース である。
  • 5' および 3' という方向性がある。
  • 二重らせん構造をとり、A と T、C と G がそれぞれ塩基対を形成する。

以下、DNA の構造を簡単にまとめる。詳細は DNA の構造 のページを参照のこと。

ライボース ribose およびデオキシライボース deoxyribose の構造は図 (7) の通りで、X の位置に OH が来るのが ribose、H が来るのが deoxyribose である。RNA はライボースが、DNA にはデオキシライボースがペントースとして含まれる。



DNA の二重らせん構造

さらに DNA の構造 (8)。少し両者の関係がわかりにくいが、デオキシライボースの 5' と 3' の炭素がリン酸基を介して繋がっていることが見て取れるだろうか。

このことから、DNA 鎖には方向性があることがわかる。塩基配列を示す時は「5' 側から 3' 側へ」書くのがルールである。数字を含めずに CGAT のように書く場合も、5' - 3' 方向で数字が省略されていると考える。



リボ核酸 RNA では、2 位の炭素に水酸基 -OH が結合しているが、DNA は「デオキシ (酸素がないという意味)」なので、これが水素原子に置換されている。

しかし、2 位の炭素は鎖の形成には関与しないので、RNA と同様にヌクレオチドが長く連なることができるわけである。


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RNA とは

RNA には以下のような種類がある。

Ribosomal RNA (rRNA)

バクテリア、真核生物の細胞質に存在 (14)。細胞内の RNA の大部分を占める。リボソームの構成成分である。

Messenger RNA (mRNA)

DNA の情報をタンパク質へ伝える。

Transfer RNA (tRNA)

タンパク質の翻訳に重要。

Small nuclear RNA (snRNA)

真核生物の核に存在し、pre-mRNA のプロセシングに関わる。

Small nucleolar RNA (snoRNA)

真核生物の核に存在し、rRNA のプロセシングおよびアセンブリーに関わる。

MicroRNA (miRNA)

真核生物の核および細胞質で、標的とする mRNA の翻訳を阻害する (14)。

Small interfering RNA (siRNA)

標的 RNA の分解を引き起こす。

Piwi-interacting RNA (piRNA)

生殖細胞において、transposable element の転写を抑制する (14)。

RNA の構造

RNA の構造は DNA とよく似ており、下の図 (7) の X の位置に OH が入っているだけである。




なぜ RNA は T でなく U なのか?

これは、逆に「なぜ DNA では U を用いないのか?」と考えた方が良いようである (9)。

シトシン C、チミン T およびウラシル U の構造は以下の通り。

チミン (11)

ウラシル (10)

シトシン (12)


シトシンのアミノ基が O に変わるとウラシルになる ことがわかるだろう。これはアミノ基転移といって、比較的起こりやすい反応である。

生命が最初に使っていた遺伝物質は、DNA でなく RNA であったと考えられている (RNA ワールド仮説; see 生命の起源)。ところが、RNA ではアミノ基転移によって C が U になってしまい、遺伝情報の保存に都合が悪かった。そのため、情報を長期保存する DNA では、U でなく T が使われるようになったと思われる。

ただし、T には TT が変異を生じやすいという問題がある (いずれ更新)。RNA editing によって TT を避ける機構が、日差しの強い地域の植物に備わっているという報告もある。


なぜ RNA は DNA より不安定なのか?

下の図に見る H と OH の違いが、DNA と RNA の安定性に大きな差をもたらす (9)。

すなわち、2' 位のヒドロキシ基 OH は 反応性の高い孤立電子対 を 2 つ持っており、これが 3' 位にあるホスホジエステル結合を求核攻撃 するのである。これが、RNA は DNA よりも分解しやすい理由の一つである。

RNA を保存する試薬として RNAlater とその代用品 がある。



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References

  1. Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  2. By Sponk (talk) - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9831553
  3. By Boumphreyfr - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7190747
  4. By Madprime (トーク · 投稿記録) - 投稿者自身による作品iThe source code of this SVG is valid.このベクターイメージInkscapeで作成されました。., CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1848174
  1. Amazon link: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition.
  2. By Boumphreyfr - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
  3. By Madprime (talk · contribs) - Own workiThe source code of this SVG is valid.This vector image was created with Inkscape., CC BY-SA 3.0, Link
  4. Got it! Lab. RNA:DNAとは何が違うのか? Link: Last access 2019/05/13.
  5. CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=106134
  6. Uracil chemical structure". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
  7. CC BY-SA 3.0, Link
  8. By Narayanese, CC BY-SA 3.0, Link
  9. Amazon link: Pierce 2016. Genetics: A Conceptual Approach: 5, 6 版を使っています。

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