肉の保水性

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このページの最終更新日: 2024/12/15

  1. 概要: 肉の保水性とは
  2. 結合水と自由水
  3. 肉の保水性を調べる実験
  4. 肉の保存について

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概要: 肉の保水性とは

肉の保水性 water holding capacity (WHC) とは、肉にもともと含まれる水分や、調理などにより添加された水分を保持する能力のことをいう。

肉からの水の漏出は、外観や品質を損じたり、製品重量の減少をもたらす。また、一般に保水性がよい肉ほど結着性が強いため、保水性は肉の利用加工上も非常に重要な性質である (3)。

結合水と自由水

肉は通常 70-80% の水を含んでいるが、水分子の状態は一定でなく、結合水自由水 という考え方で分類することができる (1)。

結合水とは、タンパク質 分子や 炭水化物 と相互作用が強く、コロイドを形成している水分子である。温度を下げても凍らず、また脱水されにくい。その量はタンパク質 1 g あたり通常 0.2-0.5 g で、1-1.5 g を超えることはない (1)。

畜肉でも魚肉でも、全水分の 30 % はタンパク質との結合の弱い自由水である (1)。肉を破砕して出てくるのは、この自由水である。また、凍結融解の際に ドリップ drip として出てくるのも自由水である。

ただし、結合水と自由水の区別は明確ではなく、古い概念であるという批判もある。

結合水の量が多いほど、肉の保水性が高くなると考えられる。結合水の量は、タンパク質が変性すると低下する。したがって、肉の保水性はタンパク質の変性の度合いをみる目安となる (1)。

肉の保水性を調べる実験

肉の保水性は、通常は以下の遠心分離法または加圧法で測定される。

遠心分離法
  • ひき肉に 2-20 倍の水を加え、懸濁液を遠心分離する。上清の量を測定し、吸水率を保水性の目安とする (1)。
加圧法
  • ひき肉に一定の圧をかけ、浸みだした肉汁中の水分を測定する (1)。

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肉の保存について

厳密には保水性とは異なるトピックだが、ここに記載しておく。内容が増えてきたら独自のページを作る。

肉のように水分が多い (上で述べたように 70 - 80%) 食品は、保存中に バクテリア の繁殖などにより品質が低下する。これを防ぐ方法として、冷蔵保存および防腐剤 preservative がある。

塩は防腐剤として使うことができるが、そのためには 17% 以上の塩分が必要で、これは味を大きく損なう (塩味が強すぎる、文献 2)。しかし人工防腐剤は消費者の印象が悪く、また健康を損なうという報告もある。そこで、天然の防腐剤に対する需要が高まっている。

> プロポリスの防腐剤としての機能を試した論文 (2)。

  • プロポリスは蜂が集めた樹脂製の混合物で、種々のポリフェノール、フラボノイド、芳香族化合物、有機酸、ビタミン、酵素ステロイド などを含む。
  • プロポリスには抗菌活性がある。エタノール 抽出物で最も recovery rate が高く、様々な肉製品で抗菌効果が確認されているが、エタノール臭を好まない消費者もいる。
  • おそらくポリフェノール、フラボノイドなどを含むため、抗酸化活性もある。
  • プロポリスやエタノールの香りを緩和するために、この論文では honeydew を使用している。
  • pH の低下、色調の悪化、バクテリア増殖などを抑制する効果があった。
プロポリス

肉の死後変化について (藤巻 1959, 肉の軟化について (1), 農産加工技術研究会誌 6, 241-249)。

  • 屠殺前の筋肉の pH は、部位によっても異なるが 7.0 - 7.4 程度。
  • 死後、酸素が供給されなくなることで嫌気解糖が行われ、乳酸が生成して pH は低下する。基質は基本的にグリコーゲンである。
  • これも筋肉の緩衝作用によって異なるが、だいたい 1% の乳酸が生成されると、pH は 1.8 低下する。肉のグリコーゲン含量は約 1% であるため、pH 5.4 付近が肉の pH 低下の下限である。
  • 肉の死後変化はグリコーゲン量、すなわち生前の運動量などに左右される。

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References

  1. 右田 1969a (Book). 蛋白質と調理 (V) 肉の加熱による変化 (2). Science of Cookery 2, 92-97.
  2. Lopez-Patino et al. 2021a. Strategies to enhance propolis ethanolic extract’s flavor for its use as a natural preservative in beef. Curr Res Nutri Food Sci 2021, 9.
  3. 朴ら、1973a. 豚肉の保水性に関する研究. J Fac Fish Anim Husb Hiroshima Univ, 12, 121-130.

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