羊肉: ラムとマトンの違いなど

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: 羊肉の特徴
  2. 羊肉の脂肪

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概要: 羊肉の特徴

羊肉は一般に ラム lambマトン mutton に分類される。英語での発音は [læm] と [mʌtn] であり、「ア」の音が違うので注意する。

ラムは生後 1 年未満の子羊の肉で、永久歯が生えていない羊の肉である。羊肉独特の匂いがしないため、一般に受け入れられやすい。

マトンは生後 2 年以上から 7 年くらいまでの成長した羊肉で、特有の匂いがある (1)。この間の生後 1 - 2 年の羊の肉は、ホゲットと呼ばれる。

ラム肉
ラム肉 (2)

アメリカでは、ラムの消費量が最も多いのはコロラド州である (9)。また、ケンタッキー州ではラムを揚げたものを食べるらしい。

羊肉の脂肪

羊肉の脂肪の特徴は、飽和脂肪酸量が多く、不飽和脂肪酸量が少ないこと である (8)。したがって、羊肉は食品的にあまり健康的ではないと言える。そのため、不飽和脂肪酸 (PUFA) 量を増やす試みがなされている。一般に、生物の脂肪酸組成は餌のそれに大きく左右されるので、単純に PUFA を多く含む餌で飼育するだけでも効果がある。


> 亜麻油の搾りかす or 藻類を添加した餌で羊を飼育、肉への影響を調べた論文 (3)。

  • ラムの脂質含量は、餌の種類によらず 2.5 % 程度。
  • Algae を食べさせることで、EPA や DHA などの含有量が上がる。
  • ビタミン E の量はあまり変わらず、酸化しやすい PUFA が増えたことで脂質過酸化物も増える。
  • 肉の色には影響なし。

> ハンディのラマン分光測定器で、ラム肉の脂肪の性状を調べた論文 (5)。

  • 脂質含量は、2 - 7.5% 程度まで分布。
  • PUFA, MUFA, SFA の比をラマン分光を利用して測定している。

> 飼育方法と凍結保存の時間が脂肪酸組成に与える影響を調べた論文 (7)。

  • 牧草で飼育すると、indoor 飼育に比べて C18:3 や共役リノール酸量が上がる。
  • 凍結貯蔵中には、飽和脂肪酸が低下し、PUFA が増えると書いてあるが本当か?

脂肪の融点と吸収

ラム肉の脂肪は融点 melting point が約 44°C と高いため溶けにくく、人体に吸収されにくいという言説がある (1)。牛肉、豚肉、鶏肉の脂肪の融点はそれぞれ約 40, 30, 28℃のようだ。

これに対して、リパーゼによる脂質の消化・吸収機構を根拠に「融点と吸収は関係ない」とする意見もある (4)。融点が高く脂が溶けていない場合、リパーゼの脂肪へのアクセスも表面のみとなり、結果として吸収効率は低くなると思うので、時間があったらもう少し調べてみる。


> タンパク質および脂肪成分の熱吸収ピークを羊肉、牛肉、豚肉で比較した論文 (6)。

  • DSC を利用。Myofibrillar protein samples では、豚肉で 65 ℃付近に吸熱ピークがある。
  • Stromal protein samples では、いずれも 60 ℃に比較的大きな吸熱ピークがある。
  • Sarcoplasmic protein samples では、はっきりとした吸熱ピークはみられない。
  • Fat samples では、豚肉 28-35 ℃、牛肉 25-55℃、羊肉 25-50 ℃にピークがある。
  • つまり、豚肉の脂は低温で溶けやすいことがわかる。

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References

  1. 「ラム肉」と「マトン肉」の違い. Link.
  2. "Lamb meat (1)" by Pavel Ševela. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Commons.
  3. Ponnampalam et al. 2016a. Muscle antioxidant (vitamin E) and major fatty acid groups, lipid oxidation and retail colour of meat fromlambs fed a roughage based diet with flaxseed or algae. Meat Sci 111, 154-160.
  4. happy さんの食と健康を考える! Link.
  5. Fowler et al. 2015a. Prediction of intramuscular fat content and major fatty acid groups of lamb M. longissimus lumborum using Raman spectroscopy. Meat Sci 110, 70-75.
  6. Kemp et al. 2009a. Component heat capacities for lamb, beef and pork at elevated temperatures. J Food Eng 92, 280-284.
  7. Popova 2014a. Fatty acid composition of Lpngissimus dorsi and Semimembranosus muscles during storage in lambs reared indoors and on pasture. Emir J Food Agric 26, 302-308.
  8. Sinclair 2007 (Review). Nutritional manipulation of the fatty acid composition of sheep meat: a review. J Agric Sci 145, 419-434.
  9. The United Steaks of America: Facebook page.

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