CBB 染色: 原理、プロトコールなど

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. CBB 染色とは
  2. メタノールを使用した伝統的なプロトコール
  3. 新しいプロトコール
  4. その他メモ

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CBB 染色とは

Coomassie brilliant blue (CBB) は、SDS-PAGE 後のタンパク質染色によく使われる使われる青い色素である。これによる染色を CBB 染色という。

CBB 染色の 検出限界は 10 - 数十ナノグラム であり、これについてはページ下方に詳細がある。

CBB には CBB G-250 と CBB R-250 の 2 種類があり、以下のように構造がわずかに異なっている (Ref 4, 5)。右上から 2 番目の炭素環にメチル基がついているのは G-250 である。CBB 染色では、プロトコールによってどちらも使われるようである。

タンパク質濃度測定法の一つ、Bradford 法 でも G-250 が使われる。


CBB R-250の構造 CBB G-250の構造
CBB R-250
CBB G-250

以下は SDS-PAGE 後のゲルを CBB 染色したもの。バックグラウンドが十分に脱色されていないが、このような感じに染まる。

SDS-PAGE CBB 染色像

CBB 染色の検出限界

CBB 染色の検出限界は 10 - 数十ナノグラム 程度である。

検出限界は「1 つのバンドまたはスポットに含まれるタンパク質量」である。つまり、トータル数十 ng のタンパク質を泳動・染色しても、1 つのバンドあたりの量はずっと少ないので、はっきりした染色像は得られないだろう。

検出限界に関する資料をいくつか表にしておく。

APRO Science 高感度 CBB 染色キット

通常の染色では、10 - 20 ng/バンド程度。エンハンサー試薬を追加することで、3 - 5 ng/バンド程度まで感度を上げられる。写真付き。

井上, 菓子野 (2009). SDS-PAGE. 低温科学 67, 359-371.

「検出限界はタンパク質にも拠るが 8-16 ng である。ダイナミックレンジは、125 - 1000 ng である」。

メタノールを使用した伝統的なプロトコール

メタノールを使用した染色

伝統的なプロトコールでは、1 L の CBB 染色液の組成は以下の通りである (1)。

  • CBB R-250: 2.5 g (終濃度 0.25%, w/v)
  • メタノール: 500 mL (50%, v/v)
  • 酢酸: 100 mL (10%, v/v)
  • 蒸留水: 400 mL

メタノールを使用した脱色

脱色液の一般的な組成は、蒸留水に対してメタノール 5%、酢酸 7% である (いずれも終濃度)。

新しいプロトコール

メタノールは有害なので、これを使わない様々な組成が提唱されている。


エタノールとリン酸を使う方法

例えば エタノール とリン酸を使う方法である (2)。染色液の 1 L を作るときの組成は

  • CBB G-250: 0.2 g (0.02%, v/v)
  • 硫化アルミニウム 14-18 水和物: 50 g (5%, w/v)
  • エタノール: 100 mL (10%, v/v)
  • リン酸 orthophosphoric acid (85% 溶液): 23.5 mL (2%, v/v)

脱色液の組成は以下のとおり。染色液から CBB と硫化アルミニウムを除いているだけである。

  • エタノール: 100 mL (10%, v/v)
  • リン酸 orthophosphoric acid (85% 溶液): 23.5 mL (2%, v/v)

この方法はメタノールフリーだが、硫化アルミニウムがややマイナーな試薬であること、エタノールはメタノールよりも高価であることなどから、以下の塩酸 HCl を使う方法の方が使いやすい。


塩酸を使う方法

文献 3 の論文。アラフォーバイオ系研究者 @osYZtdWoeHsph6C さんのツイートでこの方法を知り、文献を読んで以下にまとめた。

  • Bidistilled water (2 回蒸留した蒸留水) 1 L に CBB-G 60 - 80 mg を溶かす。2 - 4 時間攪拌と書かれている。結果の比較はしていないが、CBB-R でも OK なようだ。
  • 塩酸 3 mL を加える。Concentrated HCl と書いてあるが、濃度は特定されていない。この染色液は室温で数ヶ月は安定である。
  • ゲルを bidistilled water に入れ、30 秒間加熱。沸騰する前に止める。3 - 5 分間振盪し、水を交換。これを計 3 回繰り返す。この目的は SDS をゲルから除くことで、このステップが効果的な染色に重要である。充分量の水を使い、しっかりとマニュアル通りゲルを洗浄すること。
  • CBB 溶液を入れて電子レンジで 10 秒加熱してシェーカーへ。1 分後にはバンドが見え、15 - 30 分後にはシグナルが十分強くなる。
  • 脱色も bidistilled water でやっている。

論文には SDS-PAGE の条件なども詳しく書かれているが、どの loading buffer でもどの SDS-PAGE gel でも OK と書いてある。感度も通常の CBB と同等。

上にも書いたが、CBB 染色前の洗浄が不十分だと感度が下がる (3)。この部分は手を抜かないこと。Residual SDS が邪魔をしているのだろうと書いてある。

その他メモ

CBB は時間がかかるので、stain-fee のゲルというのも販売されている。DNA のアガロースゲルのように、泳動後に UV で検出できる。

SDS-PAGE CBB 染色像
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References

  1. CBB 染色液の調製, ライフサイエンスプロジェクト. Link.
  2. Dyballa & Metzger 2009a. Fast and sensitive colloidal coomassie G-250 staining for proteins in polyacrylamide gels. J Vis Exp 30, e1431.
  3. Lawrence & Besir, 2009a. Staining of proteins in gels with Coomassie G-250 without organic solvent and acetic acid. J Vis Exp 30, e1350.
  4. By --Phillsox - selfmade by using Chemsketch 10.0 and Inkscape, Copyrighted free use, Link
  5. By Yikrazuul - Own work, Public Domain, Link

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