免疫沈降: 原理、プロトコールなど
UBC/experiments/protein/immunoprecipitation
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要
- IgG のバンド
- 関連手法
- 医療への応用
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概要
免疫沈降法 immunoprecipitation とは、
タンパク質同士の結合を評価したり、DNA、RNA などを標的にしたりすることが可能であり、非常に応用の範囲が広い手法である。下の図には、タンパク質同士の結合を評価するための
- 溶液中に、赤、青、黄の 3 種類のタンパク質が含まれている。青と黄のタンパク質は互いに結合している。
- ここに、青のタンパク質に特異的に結合する抗体 (オレンジの Y) を加えると、抗体 - 青 - 黄の複合体ができる。
- 抗体に特異的に結合するビーズを加える。ビーズと抗体は、Protein A というタンパク質を介して結合する。
- この溶液を遠心すると、ビーズに結合した抗体と、青および黄のタンパク質が沈殿する。
免疫沈降実験からわかること
単に免疫沈降と言った場合には、
- 「青および黄色のタンパク質が複合体を形成する」ことを証明したい。
- 上記のように、青のタンパク質に対する抗体で免疫沈降し、得られた沈殿 (免疫沈降物 immunoprecipitant) を電気泳動 (SDS-PAGE など) する。
- これに対して、
黄色のタンパク質の抗体 で ウエスタンブロット。 - 両者が結合していればバンドが現れる。
- 青のタンパク質の抗体を使わずに同じ作業をした結果、細胞抽出液を使わずに同じ作業をした結果などがコントロール実験になる。
IgG のバンドとは
上記の共免疫沈降実験では、目的の黄色のタンパク質のほかに、免疫沈降に使った抗体が検出されてしまう (図)。これが、いわゆる
IgG には重鎖 (50 kDa) と軽鎖 (25 kDa) があるので、通常のこの位置に強いバンドが現れ、標的タンパク質のバンドと重なるときには問題になる。
オレンジ色は免疫沈降に使った抗体。緑と黒は、ウエスタンブロットの一次抗体と二次抗体。免沈に使った抗体もメンブレン上に残っているので、それがウエスタンの二次抗体で検出されてしまう。
典型的な IgG のバンド (1)。現在では、このバンドの影響を減らすために様々なキットが販売されている。 |
関連手法
このほか、以下のような関連手法がある。
- 標的とするタンパク質が酵素である場合、免疫沈降物を使って酵素活性を測定することができる。
- 「免疫沈降実験からわかること」の 1, 2 のあとに、リン酸化、アセチル化などの
タンパク質修飾を検出する抗体 でウエスタンブロットをする。青のタンパク質がどのような修飾を受けているか調べることができる。 - RNA 結合タンパク質の抗体を使って、ChIP と同様の実験を行うことができる。RNA immunoprecipitation (RIP) という。
- ビーズや遠心を使わずに、抗体を担体に結合させた
アフィニティカラム を作り、そこにタンパク質溶液を流しこめば、同じ原理でより大量の目的タンパク質を得ることができる。
画像は 研究.netより。
クロマチン免疫沈降
核 DNA に結合する転写因子の抗体を使うと、抗体 - 転写因子 - その転写因子と結合する DNA 断片 の複合体が沈降される。転写因子が標的とする配列を調べるために使われる手法で、
ChIP の抗体についてちょっと調べ物をする機会があったのでメモしておく。Millipore Sigma の Q & A ページ に知りたいことが書いてあった。
- ChIP は、転写因子の抗体を使うのが基本らしい。モノクロのがポリクロよりも特異的だが、この実験では架橋するので、架橋の強さによっては抗原が隠れてしまう。
- もちろん、特異性・交差反応性において「良い」抗体を使うのが基本。ウエスタンとかでの予備実験は推奨される。ChIP 用検証済み抗体というのも売られている。使用量は 2 - 10 µg 程度。
- タグ抗体の利用もあり。タグが転写因子の機能に干渉するかどうか注意しなければならないが、これは ChIP の問題というよりは発現系の問題。
- 抗体によってプロテイン A とプロテイン G への親和性の違いがあるので、ミックスが一番良い。
医療への応用
最近、免疫沈降という言葉を使った病院のサイトを見ることが多くなった気がする (例えば ここ や ここ)。どれも、免疫沈降をどう利用するのか全く書いておらず、怪しい感じ。実際に何をしているのかわかったら更新したい。
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References
Huang and Jacobson, 2010a. Detection of protein-protein interactions using nonimmune IgG and BirA-mediated biotinylation. BioTechniques 49, 881-886.
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