集団遺伝学の用語集: Allele, locus, ホモ接合などの意味

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2017/11/28 更新

  1. 集団遺伝学の用語集
  2. ホモ接合、ヘテロ接合

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集団遺伝学の用語集

遺伝子座 locus と
対立遺伝子 allele

One of the alternative forms of a gene or any other particular site on a chromosome (1). In a diploid cell there are usually two alleles of any one gene (one from each parent), which occupy the same locus on homologous chromosomes.

対立遺伝子とは、染色体上の同じ座位 locus を占めることのできる遺伝子のことをいう。例えば髪の色が遺伝子によって決まっているとするとき、「髪の色」という座位を「黒」「茶」「金」などの対立遺伝子のいずれかが占めていると考える。

遺伝子型
Genotype

The genetic composition of an organism, i.e. the combination of alleles it possesses (1).

生物の遺伝子の構成であり、A および a などのアリルを用いて AA、Aa などと表される。対応する概念は表現系 phenotype である。

表現型
Phenotype

The observable characteristics of an organism. These are determined by its genes, the dominance relationships between the alleles, and by the interaction of the genes with the environment (1).

生物の観察できる形質をいう。髪の色の場合「黒」「茶」「白」などが表現系にあたる。遺伝子型および優性 dominant と劣性 recessive の概念と深く関係するほか、環境の影響も受ける。

アリル頻度
Allelic frequency

The occurrence of an allele in a population in relation to all alleles of that gene at the same locus, expressed as a fraction (1).

集団の中でのアリルの頻度を比で表したものである。例えば 5 人の集団があり、それぞれの遺伝子型が AA, Aa, Aa, aa, aa とすると、A のアリル頻度は 0.4、a のアリル頻度は 0.6 である。

遺伝子型の頻度
Genotypic frequency

The percentage of individuals in a population that possess a specific genotype. The genotype frequency can be calculated using the Hardy-Weinberg equation (1).

アリルではなく遺伝子型の集団内における頻度である。上記の例ならば、AA の頻度が 0.2、Aa および aa の頻度はともに 0.4 である。

近交係数
Coefficient of inbreeding

単に F で表すこともある。

ある個体のある遺伝子座が、共通祖先に由来する対立遺伝子のホモ接合になっている確率。

Measure of inbreeding; the probability (raging from 0 to 1) that two alleles are identical by descent (2).



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ホモ接合、ヘテロ接合

ホモ接合の期待値は「各 allele の割合の 2 乗」を全ての allele について合計することで算出できる。以下に例を示す。


単純な例

対立遺伝子が 2 つで頻度が同じ場合の算出方法は以下のとおり。

  • ある遺伝子座において、A および B の 2 つの対立遺伝子 allele があるとする。このとき、可能な遺伝子型は AA, AB, BB の 3 通りである。
  • 両親のもっていた遺伝子も A と B という前提なので、AB と BA は同じ遺伝子型である。
  • AA および BB がホモ接合、AB がヘテロ接合。
  • 集団における A と B の割合が 0.5 : 0.5 の場合、AA : AB : BB = 1 : 2 : 1。
  • したがってホモ接合である期待値は0.5であると言える。
  • 一方、A の割合が 0.5 であるから、AA となる期待値は 0.5 x 0.5=0.25 である。同様に、BB となる期待値も 0.5 x 0.5=0.25 である。
  • このことからも、ホモ接合である期待値は両者の和で0.5になる。

ちょっと複雑な例

対立遺伝子が 3 つで頻度にばらつきがある場合は、以下のように計算する。基本的な考え方は同じである。

  • ある遺伝子座において、A、B および C の3つの対立遺伝子 allele があるとする。
  • このとき、可能な遺伝子型は AA, AB, AC, BB, BC, CC の 6 通りである。AA, BB, CC がホモ接合、AB, AC, BC がヘテロ接合。
  • 集団内の頻度が A : B : C = 0.7 : 0.2 : 0.1 とする。
  • ホモ接合の期待値は、0.49 + 0.04 + 0.01 = 0.54 と計算される。

ヘテロ接合度と遺伝的多様性

ホモ接合以外の個体は全てヘテロ接合なので、ヘテロ接合の期待値 = 1-(ホモ接合の期待値)となる。

ヘテロ接合の期待値を expected heterozygosity (He) という。He は遺伝的多様性の指標で、大きいほど集団の多様性が高い。

実験的に得られたヘテロ接合度は、observed heterozygosity (Ho) である。

He と Ho の値のずれを調べることで、近親交配の程度を評価できる。


Null allele

PCR で MS 領域を増幅する際、プライマー結合領域に増幅が起こらないような変異が入ることがある。

この場合、そのアリルは検出されずに null allele となる。Null allele と通常のアリルがヘテロ接合している場合、見かけ上はホモ接合として検出される。

したがって、null allele の存在は Ho と He の値が異なる原因の一つとして挙げられる。


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References

  1. Hine 2015a. A Dictionary of Biology.

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