ゲノム編集技術の概要: CRISPR, ZFN, TALEN など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要
  2. 相同組み換え
  3. ZFN
  4. TALEN
  5. CRISPR/Cas9

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概要

変異動物の表現型から原因遺伝子を探す遺伝学をフォワードジェネティクス forward genetics という。一方、遺伝子に変異を導入し、その表現型から遺伝子の機能を調べる方法をリバースジェネティクス reverse genetics という (図, Ref. 4)。

フォワードジェネティクスとリバースジェネティクス

ゲノム編集技術は、リバースジェネティクスに不可欠な技術である。

> ゲノム編集技術は、次のような流れで成立してきた (1)。

  • 1970 年代に、トランスジェニック動物が作られるようになった。
  • 1980 年代 ES 細胞が樹立。80 年代後半には ES を用いた遺伝子改変動物が作られた。
  • 2000 年にヒトゲノム、2002 年にマウスゲノムが解読。
  • 2007 年 ES 細胞を用いた遺伝子改変技術にノーベル医学・生理学賞。

ゲノム編集の基本的な考え方は、以下のいずれかである。

  1. 相同組み換えを利用する。
  2. DNA の二本鎖を切断し、修復時に改変する。

歴史的には、相同組み換え homologous recombination がゲノム編集の主な手段であった (2,3)。この手法はマウスで広く用いられてきたが、効率が低く (1 cell/106 - 109 cells; ref 3)、またゲノム編集後の selection が必要であるなどの問題点があり、応用の範囲は狭かった。

相同組み換えの他に TALEN や ZFN といったゲノム編集技術が知られていたが、これらの方法ではタンパク質 protein が標的配列を認識するため、標的ごとに protein engineering が必要であった (4)。一方、CRISPR/Cas9 では single guide RNA (sgRNA) がワトソン・クリック塩基対の形成を通じて標的配列を認識する。RNA 合成は特定の配列を認識するタンパク質の合成よりもはるかに簡単である。そのため組み換え効率の上昇、実験の簡略化、特異性の増大などが成し遂げられ、CRISPR/Cas9 が広く用いられるようになった。

図は Ref. 5 より。

ZFN, TALEN, CRISPRの概念図 ZFN, TALEN, CRISPRの比較 広告

References

  1. 河合, 2016a. ゲノム編集技術の現状と可能性. J Anim Genet 44, 23–34.
  2. Pellagatti et al. 2015a (Review). Application of CRISPR/Cas9 genome editing to the study and treatment of disease. Arch Toxicol 89, 1023-1034.
  3. Hsu 2014a (Review). Development and applications of CRISPR-Cas9 for genome engineerging. Cell 157, 1262-1278.
  4. Khan AA, Raess M and de Angelis MH. Moving forward with forward genetics: A summary of the INFRAFRONTIER Forward Genetics Panel Discussion [version 1; peer review: 1 approved, 1 approved with reservations]. F1000Research 2021, 10:456 https://doi.org/10.12688/f1000research.25369.1
  5. Chen et al. 2014b. Advances in genome editing technology and its promising application in evolutionary and ecological studies. GigaScience 3, 24.

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