ペルオキシソームでの脂肪酸酸化

aa_carbo_lipid/lipid/fatty_acid_oxidation_peroxisome
7-9-2017 updated

  1. 概要

広告

概要

ペルオキシソーム peroxisome [pərɑksisəum] における β 酸化経路は、化学的には ミトコンドリアβ 酸化 と同一である (2)。つまり、脂肪酸の化学構造が変化していくパターンが同じということ。

ただし、反応に関わる 酵素 はミトコンドリアのものと完全に異なっており、そのために以下のような違いがある (1,2)。


  1. オクタノイル CoA まで分解すると反応が止まる。脂肪酸を短くする機能、と解釈するほうがよいのかもしれない。

  2. β 酸化の最初のステップで脂肪酸に二重結合を導入する際、FAD でなく酸素 O2 で水素を受け取り、過酸化水素 H2O2 を作る。
    • 反応に関わるのはペルオキシソームでは acyl-CoA oxidase、ミトコンドリアでは acyl-CoA dehydrogenase である (2,4)。
    • レドックス状態のコントロールというペルオキシソームの役割 (3) を考えると、これはシグナル分子としての過酸化水素を作り出すための反応かもしれない (4)。→ ページ下「過酸化水素が作られる意義」も参照。
    • 過酸化酸素は有害でもあるので、カタラーゼ で酸素と水に分解される。


  3. ペルオキシソームでの β 酸化は、ミトコンドリアのように カルニチン に依存せず、また CN- などに阻害されない (2)。

  4. ミトコンドリアよりも基質選択性が広く、また絶食などの環境条件に応答しやすい (2)。

ラット では、β 酸化活性の 25% がペルオキシソームであるというデータがある (2)ように、量的にはミトコンドリアの方が重要である。

しかし、ペルオキシソームの β 酸化は、長鎖脂肪酸をミトコンドリアで酸化しやすい中鎖または短鎖脂肪酸に変換でき、また環境条件への応答性が高い。さらに極長鎖脂肪酸やジカルボン酸など、ペルオキシソームにおいてのみ酸化できる脂肪酸もある。

以上のように、ペルオキシソームでの脂肪酸酸化は 量で考えると補助的、しかし 調節および特殊機能で重要 であると言える。



広告

過酸化水素が作られる意義

脂肪酸 β 酸化の第一ステップは、脂肪酸への二重結合の導入である。このとき、脂肪酸から外れたプロトンおよび電子を受け取る物質が必要であるが、上でも述べたように、ミトコンドリアでは FAD、ペルオキシソームでは 酸素 という違いがある。

これは、この反応を触媒する酵素が異なるためで、酵素の構造との関係が Reference 4 で調べられている。

ペルオキシソームで酸素を使うことの生理的意義は一応「まだ不明」とされているが、結果として生じる 過酸化水素 が細胞内で重要な機能を果たすことは明らかなようだ。Reference 3 には次のような文章がある。

Peroxisomes are relevant sources of different types of ROS/RNS. Of these, H2O2 and NO· are, due to their life time and potential diffusion distance, considered the most favorable ones to act as signaling molecules. The precise cellular responses to peroxisome-derived H2O2 and NO· are not yet well understood. However, in analogy with other systems, one may anticipate that these responses are concentration dependent in that excess amounts of peroxisomal H2O2 and NO· can be expected to be cytotoxic while low concentrations may mediate various responses such as changes in gene expression and cell growth.


過酸化水素は 生体膜 を通過することができ、寿命も他のラジカルに比べて長い (反応性がそれほど高くない) ため、シグナル分子として適した特徴をもっている。

その作用は濃度によって異なると予想され、高濃度ではもちろん有害であるが、低濃度では遺伝子の発現をコントロールしたり、細胞の成長を制御したりする作用がある。

ペルオキシソームでの脂肪酸の酸化は、電子伝達系 と couple していない (つまり ATP 産生に繋がらない) ため、エネルギーの無駄遣いであるとも言える。この機構が存在していることには、上記のように、これから解明される何らかの意義があると考えていいだろう。


コメント欄

フォーラムを作ったので、各ページにあるコメント欄のうち、コメントがついていないものは順次消していきます。今後はフォーラムをご利用下さい。管理人に直接質問したい場合は、下のバナーからブログへ移動してコメントをお願いします。

このページには、以下のようなコメントを頂いていました。ありがとうございました。

2017/07/12 07:06 したので

2017/07/12 07:05 「もしかすると, 酸化的反応で生じた過酸化水素を利用するのかもしれない. 」とあり、reference3にも関係する記載がありました。このページにちょっと追加したのご覧下さい。

2017/07/12 07:04 わかりにくくてすみません、reference4の125ページ左下に

2017/07/10 11:35 なるほど、過酸化水素が重要なんですね。文献はどこに記載されているのでしょうか、下のreferencesに見つからなからなかったので、すみません。

2017/07/09 08:29 エネルギー的な利点はわかりませんでしたが、過酸化水素を作ること自体が大事なのかもしれません。4番の文献にそれっぽいことがちょっと書いてありました。

2017/07/08 16:30 二重結合を導入するのにFADではなく酸素分子を用いるということでエネルギー的に損失があるように思われるのですがなにか利点があるのでしょうか・・・?



References

  1. Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
  2. 須賀 1990a (Review). ペルオキシソームの機能 (1) 脂質代謝. 蛋白質 核酸 酵素 35, 1408-1417.
  3. Nordgren and Fransen, 2014a (Review). Peroxisomal metabolism and oxidative stress. Biochimie 98, 56-62.
  4. 三浦 2004a (Review). フラビン酵素と酸素の接点. 化学と生物 40, 120-126. Pdf file: Last access 7/8/2017.