脂肪酸に二重結合を導入する不飽和化酵素 desaturase:
構造、分類、機能など

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このページの最終更新日: 2024/02/14

  1. 概要: desaturase とは
  2. 二重結合の導入位置による分類: Δ および ω デサチュラーゼ
  3. 細胞内局在による分類

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概要: desaturase とは

不飽和化酵素 desaturase は有機化合物から 2 個の水素原子を除去する酵素で、この反応の結果として C-C の一重結合から C=C の二重結合が作られる。

二重結合の導入位置、細胞内局在、水溶性などによって分類されているが、この分類は分子系統を反映したものではない。

二重結合の導入位置による分類: Δ および ω デサチュラーゼ

Desaturase は、二重結合の導入位置によって大きくデルタ Δ とオメガ ω に分類される。Δ desaturase は、脂肪酸のカルボニル基 (-COOH) から一定の位置に二重結合を導入する。例えば Δ6 desaturase なら -COOH から 6 番目の位置に二重結合を入れる。

一方、ω desaturase はメチル基 (-CH3) から一定の位置に二重結合を入れる。



図は DHA の構造である。Δ と ω の違いを理解しておきたい。脂肪酸 fatty acid のページに、構造や命名法の詳しい解説がある。


哺乳類 desaturase と必須脂肪酸

哺乳類 mammalsは Δ4, Δ5, Δ6 および Δ9 desaturase をもっている (1)。ω desaturase をもたないことは脂肪酸合成において極めて重要である。

すなわち、脂肪酸は アセチル CoAACC や FAS という酵素 enzyme を用いて繋げていくことによって合成される。炭素数 16 の飽和脂肪酸 palmitoic acid が脂肪酸合成酵素の主な生成物である (参考: 脂肪酸合成)。

次に、palmitoic acid に二重結合を導入するステップに入るが、desaturase の種類が限られているため、哺乳類は Δ9 よりも -COOH 基側にしか二重結合を入れられない。つまり、ω 側から数えて 3 番目および 6 番目の位置は 遠すぎる のである。ゆえに、これらの位置に二重結合をもつ脂肪酸が必須脂肪酸になる。

具体的には、オメガ 3 およびオメガ 6 脂肪酸と呼ばれる リノール酸 18:2n-6 およびリノレン酸 18:3n-3 である。

一方、elongase という酵素は脂肪酸を伸長することができ、これは -COOH 側に 2 個ずつ炭素を付け足していく。つまり、ω3 位に二重結合をもつ炭素数 18 の脂肪酸があれば、これを ω3 のまま炭素数 20 にすることができるわけである。


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細胞内局在による分類

膜結合型の desaturase は真核生物およびバクテリアに多く存在し、histidine box motif をもつことが知られている (2)。

一方、水溶性の desaturase の多くは、植物の plastid に存在する (3)。主な標的はステアリン酸 18:0 で、これをオレイン酸 18:1n-9 に変換する Δ9 desaturase である。


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References

  1. 訳: 清水 2015a. イラストレイテッド ハーパー生化学.

ストライヤー生化学に比べるとかなり生物学的な教科書で、個人的にはこちらの方がわかりやすい。タンパク質の構造やエネルギー論などに深入りすることなく、タンパク質、糖、脂質などの代謝の概要を知りたいという人向け。化学ではなく医学、といってもいいかもしれない。

初版から 75 年という歴史をもつ教科書で、常に改訂が加えられている。新しい版になるほど臨床に関連した記述が増え、また章末の問題が充実してきている。


  1. Sperling et al. 2003a. The evolution of desaturases. Prostagl Leukot Essent Fat Acids 68, 73–95.
  2. Shanklin and Cahoon, 1998a. Desaturation and related modifications of fatty acids. Ann Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 49, 611–641.

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