リゾチーム (Lysozyme): 細菌を溶解する酵素
UBCprotein_gene/l/lysozyme
このページの最終更新日: 2024/10/22広告
概要: リゾチームとは
この分子が長い間苦手だったのだが、その理由は英語のライソザイム lysozyme [l
1922 年にフレミングによって鼻汁中の溶菌性酵素として発見され、1937 年に卵白から結晶化された (4)。Lysozyme はタンパク質であるため、体の中を移動するのは難しい。のちに発見されたペニシリンなどの小分子が抗生物質として使われるようになったが、歴史的には lysozome が最初に発見された抗生物質のようだ。
Lysozyme は EC 3.2.1.17 の酵素 enzyme であり、正式名は N-アセチノレムラミドグリカノヒドロラーゼという (1)。ムラミダーゼと呼ばれることもある。
ムコ多糖、ムコベプチドまたは キチン 中の N-アセチルムラミン酸と 2-アセチルアミノ-2-デオキシ-D-グルコース間の β-1→4 結合を加水分解する。この結合は、細菌の表面に存在して、壊れやすい細胞膜が細胞の高い浸透圧に抵抗するための補強を行っている。Lysozyme によってこの結合が破壊されると、細菌は浸透圧によって破裂する。
ヒトの母乳に 40000 µg/100 mL ほどの量で含まれる (4)。ウシ、ヤギ、ヒツジなどの乳には 10 µg/100 mL のオーダーでしか含まれないので、これは驚くべき量といえる。Lysozyme には、酵素活性から説明される溶菌効果以外にも、抗ウイルス、抗炎症、組織再生などさまざまな作用があり、これらが総合して感染に対する防御力を高めていると考えられる。卵白 lysozyme を添加した食品も開発されている。
卵白由来リゾチーム
鶏卵白 lysozyme は、等電点約 11、分子量 14,307 のアミノ酸 129 個から成るタンパク質である。4 つのジスルフィド結合があり、そのうち少なくとも 2 個が活性に必要である (4)。
大腸菌溶解のプロトコール
Lysozyme は防御物質としてさまざまな組織に大量に存在するほか、分子生物学分野ではバクテリアからのタンパク質の抽出によく用いられる。
大腸菌 を遠心分離で回収後に、以下の手順でタンパク質を抽出することができる (2)。
- 培養液の 1/20 量の Lysis バッファーで速やかに懸濁する。
- 1/50 量の lysozyme 溶液を添加し、氷上で 30 分穏やかに撹拌する。
- 1/50 ~ 1/10 容量の 10% Triton X-100 を加え、4°C でさらに 20 分撹拌する。
- 12,000 × g, 30 min の遠心で得られた上清を回収する。
それぞれの緩衝液 buffer の組成は、Lysis バッファー [50 mM Tris-HCl or Phosphate, 150 mM NaCl, 1 mM PMSF, pH8.0]、リゾチーム溶液 [10 mg/ml リゾチーム in 20 mM Tris-HCl, pH8.0] である。
このプロトコールでは、3 番で界面活性剤 Triton X-100 を加えている。これは細胞膜の構造を壊すので、膜タンパク質まで抽出するプロトコールである。3 番をスキップして直接遠心分離すれば、水溶性のタンパク質のみが得られる。
さらに抽出効率を高めるため、Lysozyme 添加後に凍結融解を 2 回ほど繰り返すオプションもある。
文献 4 には「リゾチームは溶菌性の酵素であるが、すべての細菌を溶解するわけではない。典型的なリゾチーム感受性菌は Micrococcus therium ... 中略 ... など一部のグラム陽性菌である。しかし、EDTA で 前処理すると Escherichia coli などのグラム陰性菌もリゾチームで溶解されるようになる」という記述がある。上記の大腸菌用プロトコールには EDTA が含まれていないのだが、問題ないようである。他の条件との組み合わせや、lysozyme 濃度によって溶解可能となっているのかもしれない。
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References
- Amazon link: 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
- GE ヘルスケア. タンパク質の抽出・細胞破砕法. Link.
- PDBj 入門 リゾチーム. Link: Last access 2024/07/31.
松岡, 1971a. 卵白リゾチームの化学とその利用. 栄養と食糧 6, 311-316.
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