二次元電気泳動: 原理、プロトコールなど

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このページの最終更新日: 2024/10/12

  1. 概要: 二次元電気泳動とは
  2. プロトコール
  3. データ解析
  4. トラブルシューティング

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概要: 二次元電気泳動とは

二次元電気泳動は、等電点電気泳動と SDS-PAGE を組合わせたタンパク質解析法である。

1975 年に別個に出された パトリック・オファレルとヨアヒム・クローゼの論文が最初の例とされていることが多いが、アイディア自体は 1950 年代にまで遡るようだ (5)。50 年代の最初の論文は、一次元目がろ紙、二次元目がでんぷんゲルによる電気泳動で、ヒトの血清タンパクを 20 ほどのスポットに分離したものだったらしい。

それからしばらくは、職人芸が必要な難しい実験だったようだが、1980 年台に immobilized pH gradient (IPG) ゲル、つまり一次元目のゲルに pH 勾配を固定化したものが実用化されてから、広く使われるようになった。

プロトコール

二次元電気泳動は、大まかに以下の手順で行う。

  1. サンプル調製
  2. 等電点電気泳動
  3. SDS-PAGE
  4. ゲルの染色

サンプル調製

まずは通常のタンパク質抽出である。

等電点電気泳動

専用の装置を使って行う。IPG strip などの乾燥ゲルをサンプルで膨潤させて行う方法がメジャーだが、アガロースゲルを使う方法もある。後者については、アトーの説明書が詳しい (2)。

以下は、アガロースゲルの場合。IPG strip よりもやや煩雑だが、CBB 染色できるレベルの 100 µg 程度のタンパク質を乗せられるのがメリットである。

一般に、等電点電気泳動の上部電極液は 200 mM 水酸化ナトリウム溶液 (1, 2)。下部電極液は 40 mM DL-アスパラギン酸溶液または 10 mM リン酸。

IEF 終了後に、TCA でゲル中にタンパク質を固定する。TCA は酢酸よりも強力な酸で、アガロースゲルは網目がアクリルアミドよりも荒いので、これで強力に変性させるプロトコールになっていると思われる。一次元目のアガロースゲル内でタンパク質が変性し、白い筋のように見える。

TCA は、10% 濃度の水溶液を用いる。 アトーのマニュアルには濃度が書いておらず、文献 1 の書き方も 10% に見えつつ不明瞭であるが、10% TCA, 5% sulfosalicylic acid と書いてある文献があった (4)。

一度、TCA がなかったときに 40% MtOH + 10% 酢酸で固定してみたことがあるが、この実験はいろいろ失敗していたので、結果がどうなるかは分からない。文献 1 では、固定液に浸した状態で一晩冷蔵保存が可能、さらに泳動後直ちに二次元目の泳動に入る場合は固定不要と書かれている。

固定後は、精製水で十分に洗浄する。1 - 2 h ほど振とうするのが一般的なようである。

二次元目の SDS-PAGE 前に、アガロースゲルを SDS 平衡化するステップ。マニュアルでは 50 mM Tris-HCl pH 6.8, 2% SDS, 0.01% BPB を平衡化液として用いる。これは、2 x Laemmli buffer の組成 2% SDS, 10% グリセロ-ル, 5% 2-メルカプトエタノ-ル, 0.002% ブロモフェノールブルー, 62.5 mM Tris-HCl (pH 約6.8) とかなり近い。実際に、広島大学のプロトコール (1) では Laemmli buffer を使用しており、代替可能と思われる。

SDS-PAGE

基本的には普通の SDS-PAGE なので、詳細は ページ上の「概要」 にあるリンクから SDS-PAGE のページを参照のこと。

通常の SDS-PAGE と異なっているのは、ゲルにサンプルをアプライするウェルはなく、ゲルの上が平らになっている点である。ここに一次元目のゲルを乗せることになる。乗せた後は、1% 程度のアガロースを SDS-PAGE 泳動バッファーに溶かしたものでゲルを固定する。

ここでのポイントは、一次元目のゲルを、二次元目のゲルの上端によく密着させること。これができていないと、スポットが線状になるなど、きれいな展開パターンが得られなくなる。

ゲルによっては、分子量マーカーを入れるレーンがついているものもある。無い場合は、ろ紙にマーカーを染み込ませてゲルの上に乗せればよい。

ゲルの染色

普通の SDS-PAGE ゲル染色と同じなので、以下のページを参照のこと。

データ解析

Gel2DE などフリーのものはいくつか見つかったが、どれも 2010 年代からメンテナンスされておらず、使い勝手もいまいちだった。

CellProfiler と ImageJ の bUnwarpJ というパッケージを利用した 論文 があり、これがどちらもオープンソースである。これを試してみる。

bUnwarpJ は 2D 専用のパッケージではなく、非線形に 2 つのイメージをマッチさせるものらしい 参考。この作業は registration と呼ばれ、CT や MRI などの画像解析でも重要である。

上記のリンクには、以下の文章がある。つまり、.jar をダウンロードしてプラグインのフォルダに入れれば良い。In Fiji, bUnwarpJ comes installed by default. In ImageJ, you must simply download the latest bUnwarpJ_.jar to the Plugins folder of ImageJ, restart ImageJ and there will be a new Registration > bUnwarpJ command in the Plugins menu.

2 つの画像を開いて走らせることはできるが、ゲルを歪めてマッチさせようとしている感があり、結果はいまいちである。

これに加えて、論文では CellProfiler というソフトを使っている。フリーで多機能、2024 年時点でもよくメンテナンスされているように思えるのだが、これはもともと細胞の写った画像を解析するためのプログラムなので、2D の結果を解析するのにどこまで使っていいか微妙である。

ImageJ のプラグインを使う 論文。ImageJ のバージョンが違うのか、うまくインストールできない。

トラブルシューティング

スポットが線状になるときは、一次元目のゲルが二次元目のゲルと密着していない可能性がある。アガロースゲルで固めるか、上から圧力を加えて両者をよく密着させる。アプライするタンパク質を減らすと改善する場合もある (参考)。


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References

  1. 等電点電気泳動法 (Isoelectric foucusing) - 広島大学. Link to pdf: Last access 2024/07/21.
  2. アトー agar GEL 取扱説明書.
  3. プロテオーム解析のための二次元電気泳動標準操作法およびインゲル消化操作法 - 老人研. Link: Last access 2024/07/27.
  4. Sawada et al., 2008a. Protein carbonyl detection by two-dimensional fluorescence difference gel electrophoresis. J Electrophoresis, 52, 11.
  5. 生化夜話 第29回:大きな飛躍ではないつもりが - 二次元電気泳動の開発. Link: Last access 2024/09/26.

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このページの目次

1. 概要
2. プロトコール
  ・サンプル調製
  ・一次元目
  ・SDS-PAGE
  ・ゲルの染色
3. データ解析
4. トラブル