葉緑体の概要
- 概要: 葉緑体とは
- 植物の光合成
- 明反応
- 暗反応
- バクテリアの光合成
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概要: 葉緑体とは
葉緑体 chloroplast は、以下のような構造 (2) をもつ細胞内小器官 organelle である。
大きさは約 5 µm であり、二重膜 (outer/inner membrane) に包まれている (1)。内膜の内側は
> Stroma 内には
- Thylakoid が折り重なったものを granum (複数形 grana) という。Granum 同士は、stromal laminae という構造で繋がっている。
- Thylakoid 内のスペースを thylakoid space という。葉緑体は合計で 3 つのスペースをもっている。
光合成における酸化還元反応 (電子の伝達) は thylakoid membrane 上で進行する 。
> 葉緑体膜は、動物細胞膜と脂質の組成が大きく異なる (1)。
- 約 40% が galactolipids, 4% sulfolipids で、リン脂質はわずか 10% である。
> クロロフィルは、緑色以外の光を吸収し光合成に利用する (4)。
- なぜ緑色以外の光を吸収するのかは、クロロフィルの構造による。
- すなわち、クロロフィルのもつポルフィリンという構造の π 電子共役系が、長波長の光を吸収できる構造になっている。
- これに金属が配位することによって分子構造が変化し、赤と青の光も吸収するようになっている。
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植物の光合成
光合成反応は、以下の点で 酸化的リン酸化 に似ている (1; リンクはミトコンドリアの電子伝達系のページへ)。
- どちらも、高エネルギーの電子が順に受け渡され、プロトンの濃度勾配を生じる。
- プロトン濃度勾配によって ATP synthaes が駆動する。
- ただし、光合成の場合、電子は直接 NADP+ を NADPH に還元する。
違っているのは、酸化的リン酸化では栄養素の酸化 (解糖や TCA 回路) によって高エネルギーの電子を得る、すなわち NADH や FADH2 を得るのに対し、光合成では
植物の光合成は、大きく明反応および暗反応の 2 段階に分けることができる (1)。
明反応
英語では light-dependent reaction という。
Photosystem I, II は thylakoid membrane に結合した複合体である。Photosystem I, II 内での電子の受け渡し、また I から II への電子の受け渡しに伴ってプロトンの濃度勾配が作られる (図は文献 3 より)。これによって ATP が作られ、また反応の過程で NADPH も生じる。
光のエネルギーを、ATP および NADPH の化学エネルギーに変える過程である。
Photosystem I |
波長 700 nm 以下の光を使い、NADPH を作り出す。 |
Photosystem II | 名前は II であるが、こっちの方が photosystem I よりも上流である。波長 680 nm 以下の光を使い、水の電子をプラストキノン plastoquinone, Q に移す。プロトンも同時に移され、副産物として酸素が発生し、Q は QH2 となる。 QH2 のエネルギー準位は水よりも高い。つまり、ここが光エネルギーを使った uphill reaction である。 電子は cytochrome bf を介して photosystem I に移される。このタンパクはミトコンドリア電子伝達系の complex III に相同で、QH2 を使って proton gradient を作り出す。 |
暗反応
英語では dark reaction または light-independent reaction という。NADPH や ATP を用いて二酸化炭素を還元し、その他の有機物を作り出す。
詳細はカルビン回路 Calvin cycle のページに。
バクテリアの光合成
Berg Biochemistry の内容を簡単に。
- 光エネルギーを受容する reaction center, P960 に光が当たり、電子が励起される。
- 電子は bacteriochlorophyll (BChl), Bacteriopheophytin (Bph), quinine (QA), quinone (QB) の順に受け渡される。Charge separation である。
- QB は膜の近傍にあるので、電子を受け取った QB は細胞質からプロトンを引き込み QH2 となる。その結果、プロトンの濃度勾配が生じる。
- QH2 は膜の中の quinone pool へと移行する。
- QH2 の電子は、complex bc1 によって cytochrome c2 に移される。このタンパク質はペリプラズム periplasmic space に局在する。
- Cytochrome c2 のプロトンは、reaction center の cytochrome subunit に移される。これで系全体が初期状態に戻る。
References
- Amazon link: ストライヤー生化学: 使っているのは英語の 6 版ですが、日本語の 7 版を紹介しています。参考書のページ にレビューがあります。
- By Kelvinsong - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26147364
- By Somepics - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38088695
- 植物の葉の色はなぜ緑色か? Link: Last access 2021/10/01.
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