脂肪組織: Adipose tissue
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このページの最終更新日: 2024/02/14
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概要: 脂肪組織とは
脂肪組織 adipose tissue とは、脂肪細胞 adipocyte を多量に含む結合組織 connective tissue のことをいう (図、ref. 6)。
なお、動物 の組織は大きく以下の 4 つの組織に分けられる (4)。
- 上皮組織 epithelial tissue
- 神経組織 nervous tissue
- 筋組織 muscle tissue
- 結合組織 connective tissue
結合組織はこのうちの一つで、脂肪組織のほかに骨 bone、軟骨などが含まれる。共通の特徴をもつ組織というよりは、他の 3 つにあてはまらないものが結合組織に分類されていると言ってもよい。
脂肪組織には、adipocytes, preadipocytes, endothelial cells, fibroblasts, macrophages, leukocytes などさまざまな細胞が含まれる (1)。このほか血管 blood vessels と神経 nerves が含まれる。
脂肪組織が過剰になった状態を
脂肪細胞の種類
白色、褐色、ベージュ
ヒトや マウス などの 哺乳類 には、3 種類の脂肪細胞があることが知られている (図、ref. 5)。脂肪細胞のタイプは、油滴とそれを代謝する ミトコンドリア の量比で決まる。それぞれの脂肪細胞を多く含むのが、白色、ベージュおよび褐色脂肪組織である。
白色脂肪細胞 |
脂肪を保存するのが主な役割で、細胞質の大部分を油滴が占める。 |
ベージュ脂肪細胞 |
新しく発見されたタイプ。白色と褐色の中間。 |
褐色脂肪細胞 |
ミトコンドリア が多いため褐色を呈する。脂肪の保存ではなく、脂肪を燃焼させることで体温を維持するのが主な役割。 |
> BAT に関する論文の紹介記事 (Nature 454, 947-948, 2008)。
- 1551年にfat, fleshの中間の組織として紹介される。
- ミトコンドリア、UCP1に富み、脂肪を燃焼させて熱を産生する。
- 最近は、adult humanにも存在して重要であることが示唆されている。
- 未分化なWAT cellとBAT cellは同一のように見えるが、起源が異なるという報告が2つ。
- 例えば、myogenin KO mice は筋肉が無く筋肉がなくすぐに死亡するが、BATがあちこちにできる。筋肉へのシグナルを受けていないとBATになるのでは?
- WATのなかにも環境条件に応じてBATができるが、これはBATのものと起源が異なるらしい。 のちに beige adipose tissueとして報告している。
> Beige 脂肪細胞の機能解析を行った論文 (Cell 150, 366-376, 2012)。
- WATに UCP1を高発現し,寒冷刺激でcAMP量が増大する細胞があることは古くから知られていた。
- 一方,BAT は myf-5 を発現する muscle-like な系統の細胞から分化することが最近明らかになった。
- 上記の WAT 中の細胞は myf-5 positive の linegeではなく,BATの仲間ではない。beige として定義。
- 皮下のWATに,UCP-1 positive cellがある。UCP-1, Cidea, PGC-1a mRNA量は,ちょうどBATとWATの間ぐらい。
- マイクロアレイ結果のクラスター解析を行うと,beigeはWATよりもBATに近かった。
- beige-likeな細胞株を単離。basal状態ではWATに近く,adiponectinなどのマーカーも発現する。
- しかし,cAMP刺激でUCP-1 mRNAが増大するという特徴をもつ。BATよりも酸素消費量が高いかもしれない。
- 様々な遺伝子の発現パターンを調べる。BATとは違うパターンが得られている。
- beige-specific geneのいくつかは,CD137などの細胞表面マーカーだった。FACSでさらに細胞を精製。
- irisin (筋肉から運動で放出される。WATのbeige化を促進) で,UCP-1 mRNAが増大する。
- 網羅的解析によると,ヒトのBATは,mouse BATよりもmouse beigeに近かった。
- beigeは,脂質を自分で貯めることも使うこともできる細胞である。
内臓脂肪と皮下脂肪
Ibrahim の総説 (3) によると、哺乳類の内臓脂肪 visceral adipose tissue (VAT) は皮下脂肪 subcutaneous adipose tissue (SAT) に比べて細胞、血管、神経、炎症細胞が多く、脂肪細胞の分化能は低い。そして、大きいサイズの脂肪細胞を含んでいる。
VAT は体重の約 20% を占めるが、SAT には全脂肪の 80% が含まれる (3)。
以下、まだまとまっていないが、両者の違いを箇条書きにしておく。
> 内臓脂肪と皮下脂肪では、さまざまなホルモンへの感受性が異なる。
- 総合的に、内臓脂肪をなるべく増やさないようにする (たくさん放出し、あまり貯めない) システムが出来上がっているようである。
- 内臓脂肪の方が lipolytic hormone に対する感受性が高く、インスリンに対しては resistant である (3)。
- 内臓脂肪はカテコールアミンとグルココルチコイド glucocorticoid に感受性が高い (1)。
- 皮下脂肪はインスリンに感受性が高い (1)。
> 内臓脂肪の方が内分泌器官 endocrine organ としての役割が大きいと考えられる。
- 内臓脂肪では 30%、皮下脂肪では 20% の遺伝子が分泌タンパク質をコードしている (1)。
- 内臓脂肪では VEGF, PAI-1, IL-6 の発現が高く、皮下脂肪では leptin, adiponectin の発現が高い (1)。
KLF14 は脂肪組織の遺伝子発現を調節するマスターレギュレーターと考えられている (2)。
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脂肪組織から放出されるホルモン (アディポカイン)
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References
Adamczak & Wiecek, 2013a (Review). The adipose tissue as an endocrine organ. Semin Nephrol 33, 2-13.Small et al. 2011a. Identification of an imprinted master trans-regulator at the KLF14 locus to multiple metabolic phenotypes. Nat Genet 43, 561-564.Ibrahim 2011a. Subctaneous and visceral adipose tissue: structural and functional differences. Obesity Rev 11, 11-18.- Amazon link:
Starr et al. 2016a. Biology Today & Tomorrow. - By BruceBlaus. When using this image in external sources it can be cited as:Blausen.com staff (2014). "Medical gallery of Blausen Medical 2014". WikiJournal of Medicine 1 (2). DOI:10.15347/wjm/2014.010. ISSN 2002-4436. - Own work, CC BY 3.0, Link
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