アディポネクチン:
脂肪組織から分泌される代謝制御ホルモン
UBC/protein_gene/a/adiponectin
このページの最終更新日: 2024/02/14- 概要: アディポネクチンとは
- アディポネクチンの分泌細胞
- 皮下脂肪、内臓脂肪の違い
- 発現組織の種多様性
- アディポネクチンの機能
- シグナル伝達
- 進化的意義
- アディポネクチンの構造
- 一次・二次構造
- 三次・四次構造
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概要: アディポネクチンとは
アディポネクチン adiponectin は脂肪組織 adipose tissue から血液中に分泌されるホルモンで、メタボリックシンドローム を
哺乳類 のアディポネクチンには、以下のような特徴がある。メタボリックシンドロームを改善すると言われる理由である。
- アディポネクチンの血中量が、肥満度やインスリン抵抗性などと逆相関する (3I,5I)。つまり、脂肪細胞で作られる分子であるにもかかわらず、肥満の人ほど血中量が低い (9)。これは他の adipokine ではみられない特徴である。
- Adiponectin-deficient mice は、インスリン抵抗性を示す (10I)。
- アディポネクチン投与によってインスリン抵抗性が改善し、筋肉や肝臓での 脂肪酸の β 酸化 が亢進する (10I)。
血液 中には、1 – 17 µg/mL の濃度で存在する (10I)。30 µg/mL 程度としている文献もあり、いずれにせよマイクログラムオーダーの非常に高い濃度である。
アディポネクチンの分泌細胞
アディポネクチンは脂肪組織で産生されるホルモンであるが、その全てが脂肪細胞 adipocyte で作られるわけではなく、脂肪組織内のその他の細胞でも作られる。
一般に、脂肪細胞からのアディポカイン分泌量は、脂肪組織からの分泌量よりも低い (1)。これは、脂肪細胞がアディポカインの主要な起源ではないことを示唆する。Adiponectin およびレプチンは、例外的に主として脂肪細胞自身から分泌される adipokine である。割合を算出すると、leptin の94%、adiponectin の64%が脂肪細胞に由来する。
皮下脂肪・内臓脂肪の違い
アディポネクチンの発現量は、内臓脂肪 visceral adipose tissue よりも 皮下脂肪 SAT (subcutaneous adipose tissue) で高い (7D)。
肥満度などとの相関を調べた研究でも、VAT よりも SAT の adiponectin が重要であることを示唆する報告が多いようである (7D)。
発現組織の種多様性
> ニホンザルでは、adiponectin は白色/褐色脂肪組織のみで検出される (6R)。
- mRNA レベルの検出、ニホンザル Macaca fuscata を使用。
- Northern blot: 5.15, 2.5, 1.15 kb の長さの異なる 3 つの mRNA があった。
- マウスでは、選択的スプライシングで長さの異なる mRNA が生じることがわかっている。
- 魚では、筋肉が主な産生組織であることも報告されている (3I)。
> マウスの筋繊維でも、少量の発現がみられる (10R)。
- C2C12、L6 などの筋肉由来培養細胞でも発現する。
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アディポネクチンの機能
原則として
> グルコース の取り込みを促進し、肝臓での 糖新生 を抑制する。
- マウスでは、アディポネクチン投与が肝臓の糖新生を抑制する (6I)。
- 骨格筋や肝臓でグルコース glucose の取り込みを活性化する (3I)。
- GLUT4 の発現および膜移行を促進する。
> 脂質代謝を活性化する。ただし、抑制するという報告もある (3D)。
- マウスで、アディポネクチン投与が筋肉の脂肪酸代謝を促進し、食欲の減衰を伴わずに体重を減らす (6I)。
Adiponectin TG mice は糖尿病になりにくく、すごく太ることができる。World's fattest mice である (4I)。
シグナル伝達
C2C12 cell で AMPK, PI3K/Akt シグナルを活性化するが、MAPK シグナルは活性化しない (3D)。ATDC5 細胞の骨細胞への分化を促進する作用がある (4R)。
進化的意義
Adiponectin は、インスリン insulin と独立して脂質酸化およびグルコースglucose の細胞への取り込みを促進するためのホルモンで、飢餓によるインスリン抵抗性に対する適応として進化したという仮説が提唱されている (2)。
つまり、Adiponectin は 2 型糖尿病の症状を改善するホルモンとして有名だが、これは進化圧にはならない (2)。拒食症 anorexia の患者も、糖尿病患者と同様にインスリン抵抗性を示す。貧栄養状態で血糖値を維持するための適応ではないか。
アディポネクチンの構造
一次・二次構造
アディポネクチンは 244 アミノ酸から成るホルモンで、collagen VIII や 補体 C1q に似た構造をもっている (9; おそらくヒトの場合)。
N 末端のシグナルペプチド、a short species variable region, a collagenous domain, C 末端の globular domain (C1q に似る) の 4 つのドメインから成る (11)。
三次・四次構造
立体構造は TNF-α に似ている (8)。
血液中では、18-mer までの大きな複合体として存在するという特徴がある (9)。高分子なものほど活性が高い。
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References
Fain et al. 2004a. Comparison of the release of adipokines by adipose tissue, adipose tissue matrix, and adipocytes from visceral and subcutaneous abdominal adipose tissues of obese humans. Endocrinology 145, 2273-2282.Behre 2007a. Adiponectin: Saving the starved and the overfed. Med Hypotheses 69, 1290-1292.Sanchez-Gurmaches et al. 2012a. Adiponectin effects and gene expression in rainbow trout: an in vivo and in vitro approach. J Exp Biol 215, 1373-1383.Challa et al. 2010a. Effects of adiponectin on ATDC5 proliferation, differentiation and signaling pathways. Mol Cell Endocrinol 323, 282-291.Kim et al. 2010a. cAMP-response element binding protein (CREB) positively regulates mouse adiponectin gene expression in 3T3-L1 adipocytes. BBRC 391, 634-639.Kang et al. 2009a. Molecular cloning, gene expression, and tissue distribution of adiponectin and its receptors in the Japanese monkey, Macaca fuscata. J Med Primatol 38, 77-85.Frederiksen et al. 2009a. Subcutaneous rather than visceral adipose tissue is associated with adiponectin levels and insulin resistance in young men. J Clin Endocrinol Metab, 94, 4010-4015.- Shapiro et al. 1998a. The crystal structure of a complement-1q family protein suggests an evolutionary link to tumor necrosis factor. Curr Biol 8, 335–338.
Adamczak & Wiecek. 2013a (Review). The adipose tissue as an endocrine organ. Semin Nephrol 33, 2-13.Zhu et al. 2004a. Circulating adiponectin levels increase in rats on caloric restriction: the potential for insulin sensitization. Exp Gerontol 39, 1049-1059.Krause et al. 2008a. Adiponectin is expressed by skeletal muscle fibers and influences muscle phenotype and function. Am J Physiol Cell Physiol, 295, C203-C212.Wong et al. 2004a. A family of Acrp30/adiponectin structural and functional paralogs. PNAS 101, 10302–10307.
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